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Eternal Mirage(37)

「なんだか嬉しそうね」
 女所帯の食堂でリンゴをついばみながら、ヴァーシュは一振りの鞘に頬擦りをするル・アージュに声をかけた。
「わかっちゃう? ついに出来たのよ。私だけの中型特化クレイモア」
 つい先日ミョルニール廃鉱でクリシュナがだしたスケルワーカーカードを刺したクレイモアを、かなり大事そうに抱きしめるル・アージュ。
「ヴァーシュだって特化トライデントできたときかなり嬉しそうだったじゃない」
「あはは・・・、確かにそうだったわね」
 控えめに笑うヴァーシュ。自分も中型特化トライデントできたときはクリシュナに抱きついたほど嬉しかった事を思い出す。
 これで女所帯はルシアを除いてみな中型特化を所持している事になる。
「そういえばネリスは? 朝から見てないんだけど・・・」
 クレイモアを抱きしめたままル・アージュが周りを見渡す。こういうとき必ずと言っていいほど羨ましがるネリスがいないことに気付いた。
「そういえば昨日ルシア叔母様にコンバーター作ってもらっていたわね」
「・・・ということは龍の城行ったわね。いいなぁヒール持ちは・・・」
 回復手段がポーションだけのル・アージュにとって、低Lvでもスキルで回復できる身内に嫉妬感を抱いてしょうがないのか、クレイモアをテーブルの上に置いて背伸びをする。
 回復手段がポーションだけなのはルシアもそうなのだが、ルシアにはまだヒルクリという回復手段が残されているので、最終的にル・アージュだけがポーション頼りになる。もっとも、肝心のヒルクリはまだ手に入れていなければ買う予算もないのが現状なので、ルシアは狩りに行っても比較的危険度の低いジオ狩りが主である。
「まぁなんにせよクリシュナ叔母さんには感謝感謝だわ」
「そうね。結局叔母様一人で私たちの中型特化作り上げたものね」
「あの執念には頭が下がるわ。私たちも見習うべきなんだけどね」
 ル・アージュが席を立つとそこにちょうどルシアが奥からやってきた。
「あんた達暇なの? 暇なら頼みがあるんだけどね」
「なんですか、叔母様」
「なに、簡単な物集めよ。コンバーターの材料なんだけどね」
 そう言ってルシアは二人に一枚ずつメモ紙を渡す。
「資金難だーってネリスが言ってたからコンバーターでも作って資金稼ごうと思ってね。あんた達ならすぐ集められるでしょうよ」
 当たり前のように二人に言うルシア。
 昔プロンテラにきた時もコンバーターで資金稼ぎをしていた経験があるだけ、手っ取り早い資金稼ぎにコンバーターを作る予定だそうだ。
「とにかく数よ数! 頑張って集めてきてね」
「叔母さんはどうすんのよさ?」
 ル・アージュがルシアに問う。
「私? 私はダンジョン調査よ。あんた達の・・・、特にル・アージュが行ける狩場探しよ」
「叔母さんは材料集めしないんだね」
 ル・アージュが軽くぼやく。
「私なんて非力なんだから、材料集めなんてろくにできたもんじゃないわ。その点あんた達なら多少重たくても平気でしょうが」
 開き直りにも似た台詞を吐くと、ルシアはさっさと出かけて行った。
 ため息をこぼす二人。仕方がないので狩りの支度を始めるのであった。

  by lywdee | 2009-09-08 12:21 | Eternal Mirage

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