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Eternal Mirage(61)

 トントントンっと小気味よい包丁の音が朝から鳴る厨房に、女所帯の家事全般をみているハンター「フレア」が立っている。
 元々はクリシュナの付き人として一緒にプロンテラまで来たのだったが、ヴァーシュ、ル・アージュ、ネリス等がここに来始めてからというもの、今ではすっかり女所帯のメイドさん状態に落ち着いてしまったが、本人はあまり気にしていない様子だ。
 手早く朝食の支度が出来上がった頃、まずはクリシュナが起きてくる。
「クリシュナ様おはようございます」
「あぁ、おはよう。今日の朝食は何だい?」
「サンドウィッチと野菜のスープでございます」
 食卓まで来たクリシュナの問に答えると、フレアは手際よくサンドウィッチの切り分けに入る。
 すると今度は寝巻き姿のネリスとセージの服装のルシアが食卓につく。
「叔母さん、フレア姉おはよー」
 起きたばかりなのか、ネリスは目をこすってあくび一つする。ルシアにいたっては長い髪を梳かしながら片手に本を携えている。読書に集中しているのか挨拶はない。
 それに遅れること数分、普段着のヴァーシュとル・アージュが食卓につく。
「おはようございます」「おはよう」と二人とも食卓に置かれたミルクを飲みながら朝の挨拶をする。
 みんなが揃うとフレアはてきぱきとサンドウィッチやスープを食卓に並べる。そして自分の分は厨房の片隅に用意して皆と同様に朝食を摂りはじめる。いつもの光景である。

 そして日差しの暖かい日中に入ると、女所帯全員分のベッドのシーツやら洗濯物を庭で干し始める。それが終わると全員の部屋のシーツなどを新しいものへと交換し、ネリスと共に食材の買出しに出かける。
 狩り以外でフレアが外に出るのは大体そんなところである。
「フレア姉は狩り行かないの?」
 ネリスが素朴な疑問をフレアに問いかけるが、フレア自身は狩りに執着していないのでいつも「気にしていませんね」と素っ気ない返事が返ってくる。
 実際ルシアが女所帯に来てからというもの、フレアは狩りに行っていない。別に家事に追われているわけでもないが、大体が家の掃除やら洗濯、食事の準備などで日中を過ごしている。ネリスもクリシュナと同様、狩りに行くと埃まみれで帰ってくるのでたいそうな事は言えない。
 フレア自身、装備は過剰されていないもの一通り揃ってはいるので狩りに行けないというわけではない。むしろネリスが間違って買ってしまった大量の火矢の矢筒があるので、狩りに行っても矢がなくなるということはほぼない。それでも彼女が狩りに行く事はほとんどないのが実情である。

 夕方になると今度はお風呂の支度やら着替えの用意やらでまたそれなりに忙しくなる。ただ、薪割りはル・アージュが担当しているので、料理や風呂焚きで薪が絶える事はないのが救いである。
 まぁ風呂焚きさえ終わってしまえば一日の家事はほぼ終わったと言ってもいい。ただ、ごく稀にル・アージュやヴァーシュ、ルシアの夜食を作る事があるくらいだ。
 そんなこんなで皆が寝静まった頃、ようやくフレアの仕事は終わりを告げる。お風呂に入り1日の疲れを洗い流すのが彼女の日課でもある。皆より早く起き、皆より最後に寝る。はたから見ればメイドと間違われるのがよくわかる。それでもフレアにとって、こんな日常がいつまでも長く続く事を願わずにはいられないのだった。

  by lywdee | 2010-02-23 10:17 | Eternal Mirage

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