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Eternal Mirage(126)

 夏も近づくプロンテラ。桜も散り、気温も上がり、過ごしやすい季節になってきた。
 そんな中、女所帯では静かな昼下がりを向かえていた。
「平和だねぇ・・・」
 珍しく狩りに出かけていないクリシュナが、読書に夢中なルシアを目の前に居間で紅茶を飲みくつろいでいた。
 ヴァーシュとル・アージュは場所は違えどジオ狩りに、ネリスは龍の城にと狩りに出かけているのにクリシュナが家にいること自体珍しいことではあるが、クリシュナも狩りに出たかったがあいにくとミョルニール廃坑に人が大勢来ているので狩りしにくいと帰ってきていたからだ。
「クリシュナ様、ショートケーキですがお茶請けにいかがですか?」
 フレアは紅茶のおかわりを注ぎにきてクリシュナに尋ねる。
「たまにはいいか・・・、もらうわ」
 そう告げるとフレアは厨房からショートケーキを二つ用意し、クリシュナとルシアの前にそっと置いていった。
「ルシア、あんたはいつになったら発光するための狩りに行くのよさ?」
「あたしはまだのんびり狩りしたいからまだまだ先の話よ」
「あんたは相変わらずだねぇ・・・」
 姉妹揃って紅茶を口にする。
 ルシアは本を読み終えるとケーキを少しずつ口にするが、次に読む本を手元に引き寄せる。
「姉さんこそ、修羅にならないの?」
「私はチャンプとして行き詰るまで修羅になんてならないわよ」
「あ、っそ・・・」
 ケーキを食べ終え、また紅茶を口にするルシアが先ほど引き寄せた本を読み始める。そんな妹を見てため息をつくクリシュナ。
「たまには風呂支度ぐらいするか・・・」
「クリシュナ様! 風呂焚きは私がやりますから、おくつろぎしてくださいませ!」
 クリシュナが外に出ようとするのを止めるフレア。この辺は世話役としてクリシュナについている立場上、譲れないものがあるようだ。
 ヴァーシュら3人はクリシュナに手伝うよう言われてやり始めているが、フレアにしてみれば家事は全部自分の担当だと思っているので、ヴァーシュら3人が風呂焚きするのも本当ならば自分がやる仕事だと思っているので心苦しいものがあるくらいだ。
「じゃあ湯加減見るから風呂焚きは任せたわよ」
「それでしたら、よろしくお願いいたします」
 フレアを説得して風呂場に向かうクリシュナ。フレアはそれを見て外に出て風呂釜に向かって行った。
 2人が風呂支度を始めて数十分後、まずはル・アージュが狩りから戻ってきた。
「ただいまー」
「おかえり」
 ル・アージュが帰ってきたのを見ると、ルシアは本を閉じ、2人分のケーキの皿を厨房へと持っていく。
 その直後、クリシュナが風呂場から戻ってきた。
「あら、ル・アージュ。おかえり」
「ただいま叔母さん。風呂に入ってたの?」
「いんや、湯加減みてただけ」
 3人が食卓に揃った直後、「ただいまー」とネリスとフレアが家の中に入ってくる。
 それを見たクリシュナは、ネリスがスパノビの服を脱ぐと同時に風呂場にと連れて行く。
「砂まみれだねぇ」
 ネリスの脱いだ服を見て呟くル・アージュ。それを持ってまた裏庭へと出て行くフレア。どうやらクリシュナの服共々洗濯に行くものだと思われる。
「ただいま」
 そのフレアと入れ違いで帰ってきたヴァーシュ。
 ル・アージュとルシアしかいない家の中でル・アージュが「クリシュナ叔母さんとネリスならお風呂よ」とヴァーシュに耳打ちした。
 納得したヴァーシュとル・アージュは鎧を脱いで自室に戻り、下着を抱え普段着で下りてきた。
 そして洗濯の終えたフレアが厨房に戻り、ヴァーシュとル・アージュに紅茶を差し出し、ルシアのティーカップにも紅茶を注ぐ。
 フレアはそのまますぐにネリスとクリシュナの下着を用意し脱衣場へと持っていく。ちょうどよくクリシュナとネリスがお風呂から上がってきて下着を交換して自室へと戻っていく。それと入れ違いでヴァーシュとル・アージュが脱いだ下着をフレアの持つ洗濯籠にいれてお風呂に入っていった。
 その2人がお風呂に入っている間にフレアが4人分の下着の洗濯を始め、それを干し終えた頃にヴァーシュとル・アージュがお風呂から上がってきた。
 こうして女所帯全員が家の中に揃ったのだが、晩御飯にはまだ早く、フレアが皆にケーキと紅茶を振舞っていた。
「ルシア、あんたは風呂に入らないのかい?」
「昨日入ったから入らない」
 クリシュナの問いに本を読みながら答えるルシア。食卓では髪を拭いているヴァーシュとル・アージュの談話にネリスが混じってる。
「私のRGの転職より、ル・アージュの発光の方が早いんじゃない?」
「どうだろうねぇ・・・。まぁ地道に頑張りますわ」
「ルア姉の追い込みの時にはレモンも用意しないとね」
 若い衆は狩りの話で持ちきりのようだ。それを居間で聞いているクリシュナも、読書に夢中な妹にわざと聞こえるように「あんたも姪に負けないようしないと・・・」と、紅茶を片手に呟いた。
 当の本人は聞いているのかいないのか、まったく反応しなかった。
「フレア姉、今日の晩御飯なに?」
「今日ですか、今日はビビン冷麺にしようと思ってます」
 厨房で麺を茹でながら野菜を切り刻んでいるフレアの声に、ネリスは興味があるのか厨房に顔を出してきた。
 そうして晩御飯の時間を迎えると、全員が食卓に集まり用意された冷麺を食べ始める。
 晩御飯まで時間があったためか、静かな夕食とあいなり、食後も静かな時間が流れていった。
 フレアが食器を片付けている最中に若い衆はみな寝巻きに着替え、食卓でデザートとしてフレアに剥いてもらったリンゴを口にしていた。
「ごちそうさまー」
 ネリスがフレアに聞こえるように声を出すと、リンゴの皿を厨房まで持っていくネリス。
 そしてクリシュナが若い衆に「たまには早く寝なさい」と告げ、自身もルシアを伴い自室へと戻っていった。
 フレアの負担を減らそうと考えたクリシュナの一言に、フレア自身は優しい主人に仕えられてよかったと、声にこそ出さないがそう思わずにはいられず、彼女は今日、いつもより早く休むことができたのであった。

  by lywdee | 2011-05-24 14:08 | Eternal Mirage

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