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Eternal Mirage(127)

 夏の到来を感じさせる春の長雨に、男所帯では今日もブラックスミス「セラフィー」の鎚打つ音が響き渡っていた。
 ただ今日は、珍しい人物が男所帯に帰ってきていた。
「シル・クス、修行はいいのかい?」
 そう、今日は龍の城で修行していたシル・クスが帰ってきていたのである。
「セラフィー、今日は相談があるんだがいいか?」
「あぁ、お前さんの頼みは聞いてやれなくもないが、いったいなんなんだ?」
「武器を一つ注文したい」
「武器?」と聞き返すセラフィーにシル・クスは無言で頷く。そこで鎚打つ手を休め、セラフィーは居間の方へとやってきた。
「属性武器でも必要なのか?」
「いや、調達してほしいのは属性武器じゃない。過剰グラディウスを一つ頼みたいんだが、厄介な物が必要でな・・・」
「厄介なもの?」
 聞き返すセラフィーにシル・クスは言葉を続ける。
「マミーcが2枚刺さってるグラディウスが欲しくてな、3枚目はアンドレでもデザウルでもどちらでもかまわないんだが、頼めるか?」
「マミーc2枚刺しねぇ・・・。露店で探してはみるが、何でまたマミーcなんだ?」
「いい加減土精狩りにも限界が見えてきたし、資金調達ならスリーパー狩りに移行したいんだがデモパンが厄介でな。武器の持ちかえで対処したいんだが、あいにくとマミーcを探すのにいい狩場が無い」
 居間のソファーに腰掛けたセラフィーは、壁にもたれかかったシル・クスの顔を見てタバコを吸いだした。
「お前さんの頼みなら聞かん訳にもいかんだろう。幸いマミーcなら相場も安くなってるしな、過剰グラディウスも露店で出てるだろうし、何とか調達してみるわ」
「それはありがたいな。かわせますがあたらないんじゃ話しにならないんでな・・・」
 そっとため息をこぼすシル・クス。
 確かに今現在資金繰りには困っているセラフィー。ここでシル・クスがネイチャ集めに入ってくれれば元手は充分取れる。採算が取れることはシル・クスの転生前で証明されている。
「まぁとりあえず今は龍の城で頑張ってくれないか? 調達したくてもこればかりはお財布と相談しなくちゃならん。でも可能な限りは手を尽くす。それまで待ってはくれないか?」
「調達してもらう以上俺からは何も言えない。セラフィーに任すさ」
「そう言ってくれると助かる。まぁなんとか資金繰りしてでも用意するわ」
 タバコの火を消しまた工房の溶鉱炉と向き合うセラフィー。シル・クスもそれ以上は言わず、男所帯を後にまた龍の城へと出向いていく。
(さすがのシル・クスもデモパン相手じゃ辛くなってきたか・・・)
 スリーパーはともかく、すばしっこいデモパンの相手じゃ分が悪いと踏んで、新しい武器が必要になるとはセラフィーも思ってもみなかったが、資金繰りに走ってくれる以上、リューディー共々武器の新調を頼まれるとは思ってもみないことだった。
 だが、シル・クスが資金繰りに走ってくれる以上、2世帯の懐事情をわかってるセラフィーにしてみれば、願っても無いことなので、この辺はシル・クスの稼ぎに期待しない訳にもいかないのが本音だといえる。
 問題は今の懐事情で調達できるかどうかで、最悪リューディーにマミーcを期待するかと悩むセラフィー。必然と考えるたびにタバコを吸わずにはいられない。
(もったいないが、最悪鋼鉄でも売りに出そうか・・・)
 男所帯の装備は防具で資金がかかって武器にまで手は回っていないので、セラフィーの悩みは尽きない。しかし肝心の資金調達者が今現在リューディーとシル・クスだけなので、この2人の装備だけでも何とかしてやりたいのが彼の本心なのだ。
 だからというわけでもないが、まず男所帯の資金でも増やさないことには何も始まらないのも実情。この辺はセラフィーも胃が痛いことである。

 はたして、彼の悩みが消えるのはいつのことになるのやら・・・。

  by lywdee | 2011-05-31 05:37 | Eternal Mirage

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