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Eternal Mirage(137)

 ドレインリアーが羽ばたくスフィンクスダンジョン。今日もカード狙いの狩りをしているクリシュナがそこにいた。
 だが、そんなクリシュナでも最近になってからというもの、カード運が無くなったかのように収穫はまったくなかった。
「もうちょい数いればなぁ。今のままじゃ効率悪くって仕方ない・・・」
 愚痴をこぼしながらも狩りは続けるクリシュナではあるが、ここでの狩りはミョルニール廃鉱のようにはいかないらしい。しかし姪と付き人のためにもここでのカードが必要なため、クリシュナはただ頑張るしかなかった。
 とにかく、目に映るドレインリアーとゼロムを片っ端から撲殺し続けること数十分、クリシュナとしては不満ではあるが、持ってきていたハイスピードポーションが切れたため、収穫はないが帰ることにし、ポケットからブルージェムストーンを取り出しワープポータルを出した。

 クリシュナがプロンテラの女所帯の前に出たとき、空はすでに夕闇がかっていた。
 まずは自身に速度をかけ、東門のカプラ職員の下へとやってきた。戦利品の整理と、消耗品の受け取りのためである。
 荷物の整理が終わるとようやく帰宅になる。
「クリシュナ叔母さんおかえりー」
 まずはネリスが出迎えて、続いてフレアがクリシュナに「お帰りなさいませ」と出迎え、彼女が所持している水筒を受け取り厨房へと戻っていく。
「見たところヴァーシュとル・アージュはお風呂かい?」
「うん。もうじき上がってくると思うよ」
「ネリス、あんた風呂は? 一緒じゃなかったの?」
「私もついさっき帰ってきたばっかだから入りそびれた」
 半ば残念そうに話すネリス。そんなおり、風呂場からヴァーシュとル・アージュの2人が髪を拭きながら居間にやってきた。
「あら叔母さんおかえり」
 ル・アージュはそう言って食卓につく。
「叔母様お帰りなさいませ」
 ヴァーシュは丁寧に伝えてル・アージュの隣に腰を下ろす。
「フレアー、風呂と夕食どっち優先?」
 クリシュナが厨房に向って叫ぶと、フレアが食卓へと出向いてきた。
「夕食はもう少々かかりますが、先に入浴されるのでしたら時間の調整はつきます」
 フレアの丁寧な口調での説明を受けて、クリシュナは入浴することにし、ネリスを連れてお風呂場へと向うのであった。
 ネリスもコンバーターの材料集めに出かけていたらしく、下着まで汗に濡れていたのでお風呂には入りたかったようだ。
「ネリス、あんたは土精狩りだけでいいのかい?」
「うん、今のとこはね。後々は変えたいけど、都合のいい狩場なんてないもの」
「狩場探索はルアと一緒か・・・」
 クリシュナはネリスの背中を流してやると、桶で汲んだお湯をネリスの頭からザバーっと一気にかける。

 数分後。クリシュナとネリスが風呂から上がるとちょうどよく夕食が出来上がっていた。

 食卓についた5人の前に次々と夕食が並べられていく。今日は鶏肉のシチューにサラダとパンである。
 一堂に会したところでクリシュナが「いただきます」と言うと、残りの4人も「いただきます」と頭を下げる。いつもの女所帯のしきたりである。
 女所帯で食事時に全員揃うのは朝と夕飯の2回で、昼は揃ったり揃わなかったりなので、必然的に朝、夕飯は賑やかな食事となる。無論、フレアだけは食事時は必ず厨房の片隅で摂るので、会話に混ざることはきわめて稀なのである。
「ルア、あんたに頼まれた狩場調査なんだけど、ピラミッド地下2階あたりはどうよ?」
 ルシアが食事を摂り終えル・アージュに伝える。
「ピラミッドの地下2階って何いたっけ?」
「ミノとマミとベリット」
「ミノ狩りかぁ」
「廃屋狩るよりかはマシなはずよ」
 スプーンをクルクルと回しながらル・アージュは考え始めた。
「ヴァーシュはどうなのよさ?」
「私ですか? 私はモスコビアダンジョンでしばらく頑張ってみようかと・・・」
「そうかい。まぁ頑張りなさい」
 クリシュナはそう言ってフレアにシチューのおかわりを要請する。
 もちろんフレアは黙ってシチューをよそい、クリシュナの前まで運んでいる。
 ヴァーシュにしてみれば、まだ自力を蓄える期間だと認識し、少なくともクルセ時代のスキルを取り終えるまでは今の狩場で満足はしている。むしろこれでカードが出る狩場ならなお結構と言うところだが、そんな都合のいい狩場なんぞルシアでも知らない。だから今はおとなしくモスコビアに留まっているというのが正しい表現なのかもしれない。
 ルシアはルシアで現在精力的に狩りに出向いている。ただし、調査名目なので効率の方は考えていない。それでも転生する意識だけは持ち始めたようだ
 皆が精力的に狩りに出ようとするそんな中、懐具合を気にするのがネリスだ。
 狩りに出かけるのは別にいいのだが、採算が合わない狩りをされるとお財布係としては少々手厳しい。むしろ一攫千金を狙ってほしいところでもある。

 夕食が終わると皆の自由時間となるが、夜も遅いので紅茶は出ず、かわりにブドウジュースが用意される。
 ルシアの読書はと言うと、そろそろ借りてくる本のネタもなくなってきたのか、それほど大量に借りてくるという事はなくなってきた。
 クリシュナはというと、先月の異世界でのギルド狩りの成果もあって修羅に一歩近づいた模様。もういつでも修羅になれるというのに、本人はいたって平然とチャンピオンのままでいいと、頑なに要請を拒否している。まぁ本人がチャンピオンとして行き詰るまで転職しないと言い切っているので、この辺は誰も強制できないままでいた。
 そして夜も更けめいめい自室へと帰っていく。それを確認するとフレアは1人静かにお風呂場へと入っていく。女所帯の1日の終わりはフレアの入浴で終わるのであった。

  by lywdee | 2011-08-09 11:39 | Eternal Mirage

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