Eternal Mirage(158)

『あけましておめでとうございます』
 女所帯の主、クリシュナを前に若い衆3人が年始の挨拶をする。
「あぁ、おめでと」
 クリシュナは軽く挨拶をすると、ル・アージュの前に立ち両手でルアの両肩をポンっと叩く。
「今年こそ発光だね。頑張るんだよ」
「はい、お姉ちゃんに負けないよう頑張る」
 昨年は姉がプリーストになったことから、追われる身となったル・アージュは毎日ピラミッドダンジョンの地下で、ミノタウロスを追いかける狩りをしていた。
 ヴァーシュは昨年パラディンとなり、モスコビアに通うようになって半年、まだロイヤルガードへの道は開けていないが毎日未開の地で狩りをしている。
 クリシュナにしてみれば、長いことまともな狩りをしていなかったル・アージュが発光に向けて本格的にソロで狩りを始めたことに安心感を抱いていた。無論自身も修羅への誘いがないわけではないが、自分のことは棚に上げといて姪っ子が手のかからなくなることのほうが嬉しい。
 数年間姪っ子を預かるようになって、彼女らの親が心配しなくて済むようになるまでは手助けしたい気持ちがあるものの、ここは厳しくも突き放すぐらいの気持ちで接している。
「さぁ、ルシア、ル・アージュ、ネリス、母さんのとこ行くわよ」
「はーい」
「ヴァーシュはどうする?」
「私は今年は留守番しています」
「そうかい。じゃ、行ってくる」
 女所帯にヴァーシュとフレアを残し、クリシュナは3人を伴い実家へと年始の挨拶に出かけていった。
「ふぅ、フレアさん、私父上のところに顔を出しに行ってきます」
「わかりました。お昼ごはんは軽いものでよろしいでしょうか?」
「お願いします」
 パラディンの鎧を身にまとうと、ヴァーシュはペコペコにまたがり男所帯へと走らせる。
 男所帯にたどり着くと、リューディーがグリフォンの世話をしていた。
「リューさん、あけましておめでとうございます」
「あぁ、ヴァーシュか・・・、おめでとう。白鳥さんなら中にいるぞ」
「はい」
 自身のペコペコを厩舎に繋がせてもらうと、ヴァーシュは1人男所帯のドアを開けた。
 中にはセラフィーと渚 レイが、居間で揃って紅茶を飲んでいた。
「セラフィーさん、レイさん、あけましておめでとうございます」
「おぉ、ヴァーシュか、おめでとう」
「おめでとうございます」
「旦那ぁ! 娘さんがきたぞ!」
 ヴァーシュの姿を見て、セラフィーが自室にいると思われる白鳥を呼び出す。
 白鳥はナイトの格好のまま居間に現れ、ヴァーシュを見て壁に背を預けた。
「父上、あけましておめでとうございます」
「あぁ、おめでとう。そろそろ来る頃じゃないかと思ってたところだ」
 白鳥は年始の挨拶に来た娘を見るなりそう言った。
「父上も今年はお屋敷に顔を出さないのですね」
「私には縁のない世界だ。顔を出しても気まずい雰囲気にしかならないからな」
「紅茶をどうぞ・・・」
 2人の会話に渚 レイが割ってはいる。
「レイ、リューディー誘ってアマツに行かないか?」
「? ・・・いいですよ。リューディーさんの緑茶きれかかっていますしね」
「・・・と言うわけだ。少しの間だけだが親子水入らずで留守番しててくれ」
 気を利かせて家を出るセラフィーに渚 レイ。グリフォンの泣き声がしたことを見ると、リューディーも中のことを察してセラフィーらに付き合うようだ。
「・・・で、どうなんだ? お前のことだから女所帯で辛いことはないと思うが・・・」
「クリシュナ叔母様にはよくしてもらっています」
「私からもクリシュナさんには挨拶しておかなくてはな」
 居間のソファーに対面して腰を下ろし、華のない話で時間だけが無常に進む。
 父親としては何もしてやれない白鳥だったが、クリシュナのもとに娘を預けたことに対して、まだ申し訳なさそうな気分が胸に残る。
「今はモスコビアで討伐隊に参加して経験を積んでいます。クリシュナ叔母様には早くロイヤルガードになれと言われていますが、私なんかじゃまだまだパラディンのままのような気がします」
「そうか・・・。済まんな、何もしてやれなくて・・・」
「いえ、父上が元気でいてくれれば私はそれだけで充分です」
 紅茶を飲み干した2人はたわいのない話で2人の時間を過ごした。
 それから数十分後、アマツに出かけていた3人が帰ってきた。
「ただいまー。悪いね留守番させちゃって・・・」
「今紅茶を淹れなおしますね」
 セラフィーと渚 レイがせわしなく工房と厨房にと移動していく。
「ヴァーシュ、この格好じゃなんだが、母さんの墓参りに行くか?」
「はい」
 2人は席を立ち揃って外へと出る。
「何だ、出かけるのか?」
 外に出るなりリューディーの声がかかる。
「ちょっと墓参りにな・・・」
「そうか、いってらっしゃい」
 白鳥親子が揃ってペコペコにまたがると、それ以上何も言わずプロンテラ大聖堂の方へとペコペコを走らせていく。

 それから数刻後、ヴァーシュは1人女所帯へと帰ってきた。
 厩舎にペコペコをつなぎ、ドアを開け静かに「ただいま」と入っていく。
「おかえり」
 中にはル・アージュが食卓でヴァーシュの帰りを待っていた。
「どうしたのルア、また叔父様と喧嘩でもしたの?」
「何かにつけてお姉ちゃんと比べるからね、腹が立つから帰ってきた」
 ツンとした表情で顔を背けるル・アージュ。そしてヴァーシュの帰りを待っていたフレアが食卓の2人にパンケーキと紅茶を用意した。
「まぁお婆ちゃんに母さん、お姉ちゃんに会ったことだし、まぁいいか程度に帰ってきたのよ。家にゃヴァーシュがいるだろうと思ったしね」
 ははは・・・と苦笑いで答えるヴァーシュ。ル・アージュはパンケーキを食べながら機嫌のよさそうなヴァーシュを見つめる。
「白鳥叔父さんの所行ってたんでしょ? いいよなぁ、ヴァーシュの叔父さん優しいし、うちの親父も叔父さんぐらい理解あればなぁ・・・」
「そうかしら? ルアの叔父様も立派な方でしょ? きっとルアのこと思って言ってるんじゃないかしら?」
「やめてよ気持ち悪い。母さんもよくあんな親父と結婚したなぁ・・・」
 不思議でならないル・アージュをよそに、ヴァーシュもパンケーキを食べ始める。
「ヴァーシュはこの後どうすんのさ?」
「私? 今日はゆっくり休んでいようと思ってるわ」
「じゃあ私も狩り行かない」
 昼食を摂り終え紅茶も飲み干すと、2人は居間のソファーで談笑しあった。話題はもっぱら最近の狩りの話だ。
 ル・アージュはピラミッドダンジョンでのミノ狩りの話である。どうやら最近のピラミッドは混んでいないようで、狩りはしやすいとの事。ヴァーシュはヴァーシュでモスコビアでの狩りの話だが、こちらは討伐隊が組織されているためか、そこそこ冒険者が闊歩しているようだ。
 しかし、お財布係のネリスがいない分、戦利品での元手が取れているかは二人ともわからないのであった。
 ヴァーシュもフレアがいるとはいえ、ほぼ1人で留守番しているものと変わらないだろうと踏んでいたが、ル・アージュが早々に帰ってきたがために、おしゃべりできる相手がいることに心配はなくなった。
「明日はアマツか・・・」
「そうね、毎年の事だしね」
 初詣は家族揃ってっとの事なので、2人はクリシュナらが帰ってくるのを居間で待つことにした。話し相手がいる分待つのは苦にならないが、さすがに日が落ちるのは早く、そとはうっすらと暗くなり始めていた。
「ただいまー」
 ネリスの声が外から響いてくる。どうやらクリシュナらが帰ってきたようである。

 こうして、女所帯の新年が始まるのであった。
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  by lywdee | 2012-01-03 13:20 | Eternal Mirage | Comments(0)

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