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Eternal Mirage(159)

 正月を向かえ活気付くプロンテラの露店街。ネリスとフレアの2人はそんな露店街を横切り、買出しのため出かけていた。
「お肉とミルクも買いましたし、後は野菜だけですね」
 カートに食材を積みながらフレアが野菜商人の方へと歩いていく。ネリスはそんなフレアの後をついていき、行く先々でお金を払っていく。
 買出しが終わればネリスは1人露店街の散策に向かっていく。ル・アージュがミノタウロス狩りを始めてからというもの、相場のチェックは毎日の日課になっていた。
 しかし、ル・アージュの追い込みが始まってからと言うもの、消耗品と回復剤の買いだめをしているネリスにとってはお財布事情が気になるところ。せめてヴァーシュのようにスキルで回復できるようであれば出費は少なくて済むのだが、いかんせんナイトにはヒールがないのと、ヒルクリあってもすずめの涙程度の回復しか見込めない。しかもバーサークポーション代も少なからず出費がかさむので、そろそろル・アージュの戦利品だけでは転生代も貯めなければいけないところとなっていた。
 お日様が天高く昇ったところでネリスはお昼御飯のため女所帯に帰っていく。
 厩舎にはヴァーシュとル・アージュのペコペコが繋がれている。どうやら2人は今日の狩りを終え家に帰ってきているようだ。
「ただいまー」
「おかえりネリス。ちょっとこっちきて」
 食卓でリンゴをついばんでいたル・アージュがネリスを手招く。
「なぁに、ルア姉」
「これなぁんだ?」
 ネリスがそばに来たところでル・アージュが懐から1枚のカードを取り出す。
「ルア姉、まさかミノc?!」
「あったりー。今日狩りしてたらでてきたのよ。これで消耗品代と転生費用はまかなえるはずでしょ?」
「ぐぅ・・・」
 一番出費のかかる相手から高額のカードを出されたことにより、ネリスはたじろいだ。でも狩場の事を考えれば、いつかは出てくるであろうと思われた戦利品だけに、彼女はただ黙ってカードを受け取るのであった。
「相場じゃ6~8mで売れるはずでしょ? これで文句は言わせないわよ」
 上機嫌のル・アージュ。確かに売れれば軍資金が一気に潤うので、ネリスにしてみれば嬉しいはずなのに言葉が出ない。
「私の狩場じゃカード出ないものね・・・」
 モスコビアで狩りをしているヴァーシュにしてみれば、クルセ時代の追い込みの時同様、戦利品で消耗品代をまかなっていたので、カードの出ない狩場では出費は抑えなくてはならない。ネリスも龍の城で狩りをしてるとはいえ、戦利品だけではコンバーター代の元は取れていない。
 だからだろうか、自分だけ狩りの出費がかさむのを気にしているのだろう。
「とりあえず私の狩場は変わらないから、またカード出たら売っちゃってね」
 普段消耗品代で白い目で見られているル・アージュにとって、高額のカードが出たのが嬉しいのかネリスに対して上から目線で物を言う。
「ま、龍の城じゃキャラメルc出なければ元手は取れないだろうけどさ」
「ルア、言いすぎよ。ネリスだって頑張ってるんだから・・・」
「ごめん、言い過ぎた」
 涙目になっているネリスに謝るル・アージュ。
 ネリス自身もキャラメルも狩るようになって、少しでも軍資金を稼ごうとしているので、先を越された感もあり、悔しさからか瞳が潤む。
 ヴァーシュも追い込みの際何枚かカードは出してきた、が、それでもオーク系のカードじゃ高値もつかず、結果プティットc狙いで狩りをしていた廃鉱のあるフィールドでの戦利品で、自らの消耗品代や転生費用を稼いだと言ってもよい。東谷での戦利品だけでは転生費用もまかなえなかったと言う現実が残っている。
「ほら、いつまでも泣いてないで、クリシュナ理論を実践するだけよ」
 ル・アージュは今にも泣き出しそうなネリスを見かねてなだめようとするが、それでもネリスは負い目を感じずにはいられなかった。
「ネリスも頑張ってたらいつか出るわよ。キャラメルc・・・」
「うん・・・」
「お昼御飯ができました」
 ヴァーシュがネリスをなだめていると、フレアが食卓の3人に昼食を差し出す。今日のお昼御飯はオムライスである。
「クリシュナ叔母さんとルシア叔母さん遅いね?」
「クリシュナ叔母様なら今日はスフィンクスダンジョンって言ってたから、多分帰りは遅くなると思うけど、ルシア叔母様はジュノーに行ってるはずだからもっと遅くなるんじゃないかしら?」
 オムライスを食べながらル・アージュの問いにヴァーシュが答える。ネリスにいたっては黙々とオムライスを食べている。
 昼食を食べ終わると3人はお風呂の準備を始める。もちろん担当はジャンケンで決めるのだが、今回はヴァーシュが湯加減担当、ル・アージュが薪割り、ネリスが風呂焚きとなった。
「珍しいわね、ネリスがジャンケンで負けるなんて・・・」
 ル・アージュがネリスを見てそう呟く。
「心ここにあらずって感じね」
 ヴァーシュも心配そうにネリスを見つめるが、とうのネリスは何事もなかったかのように風呂焚きを始めた。
 そうして風呂焚きが終わると3人揃ってお風呂に入る。話題はいつものように狩りの話になる。
「私が発光するまでに何枚ミノcが出ることだろう?」
「私は種類こそ違えど6枚出したわよ」
「ヴァーシュはクリシュナ叔母さんに次いでカード運あるからねぇ・・・」
 髪を洗うヴァーシュとネリスに、浴槽の中から手桶でお湯をかけるル・アージュ。
 カードの話ともなると口数が少なくなるネリスとル・アージュ。ネリスもそうだがル・アージュも別段カード運がある方とは言えない。今回のミノcとてソロでピラミッド行くようになって始めて出たカードでもある。
 カードが出ないとわかっているヴァーシュでさえ、狩場を変えればきっとカードを出してくることだろうとル・アージュは思っている。
 ネリスもそう頻繁に狩りに行く方ではないが、メインが土精だけに龍の城ではそのカード運も無駄遣いになるものと思われる。この辺は狩ってるものが物だけに何とも言えない。
「売れないカードが出るのも考え物だなぁ」
 その後も3人揃って背中を流し合い、浴槽に浸かる。お風呂から上がってきた時には食卓にクリシュナがついていた。
「叔母様お帰りなさい」
「あぁ、ただいま。お風呂空いたのかい?」
「えぇ、私達は終わりました」
 ヴァーシュの返答にしばし考え込むクリシュナ。
「叔母さんお風呂入るの?」
「んー・・・もう少し待ってから入るわ」
 紅茶を口にしながらクリシュナが答える。どうやらルシアの帰りを待ってるかのように見える。
「ただいまー」
 噂をすればなんとやら・・・、暗くなり始めた外からルシアが帰ってきた。その手には数冊の本を抱えている。
「あんたまた本借りてきたのかい。飽きないねぇ」
「いいでしょ別に・・・」
「さっさと風呂入るからしたくしなさいな」
「はーい」
 姉に急かされ、居間のテーブルに本を置いたルシアが下着を取りにクリシュナの部屋に入ると、クリシュナも着替えを取りに後を追う。
 叔母2人がお風呂に入っている間、ネリスは浮かない顔で食卓に座りフレアから紅茶をもらう。
 結局叔母2人がお風呂から上がってくるまでネリスは意気消沈していた。
「なぁに、そんな暗い顔して・・・」
「ルア姉ミノc出したの・・・」
「あら珍しい。それが何か関係あるの?」
 バスタオルで髪を丁寧に拭きながらクリシュナはネリスの隣に腰を下ろす。
 そしてフレアから紅茶をもらうとクリシュナはネリスの頭をなでた。
「どうせあんたのことだから嫉妬してるんでしょうよ? ルアがカード出したのに自分は出ないって顔してるわよ」
 図星である。もっとも、最年長で何年も一緒にいる姪だからこそ、考えてることぐらいは容易に想像ができるのであろう。
「ルアだって発光のために数狩ってるんだから、カード出ても不思議じゃないわよ。もっとも、あんたの場合はメインの土精狩りじゃキャラメルcも出るかどうか不安だろうさね」
「うん・・・」
「まぁ数狩りゃそのうち出るわよ」
 楽観的に考えるクリシュナにとっても、カードのこととなると少々自信はなさげである。事実スフィンクスダンジョンに行くようになってからと言うもの、お目当てのドレインリアーcが中々出ないので疲れてはいる。
「とりあえず狩りに出るなら頑張りなさいな。とにかく数よ数! 諦めなければ必ず出るから」
 クリシュナ理論を実践しているだけあって、クリシュナの説得には迫力がある。ネリスはそんな叔母の姿を見て少しは頑張ろうという気がしてきた。
 そして女所帯はちょっと早めの夕御飯の時間を迎えるのであった。

  by lywdee | 2012-01-10 12:01 | Eternal Mirage

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