Eternal Mirage(184)

 蝉時雨も静かになって、初秋を迎えようとしてるプロンテラ。女所帯は朝から衣替えの準備に追われていた。
「涼しくなってきたものねぇ・・・」
 女所帯の主クリシュナが、もう見慣れてしまった衣替えの様子を静かに見守っていた。
 とは言っても、姪っ子達の衣装箱は少なくなってきているので、衣替え自体は午前中で終わりを迎えていた。
「ヴァーシュ姉、今日非番なの?」
 衣替えを終わらせると全員食堂のテーブルを囲みちょっと遅い昼食をとり始めていた。そんななかネリスがヴァーシュに声をかける。
「りゅーさんが衣替えなら暇にしてやるって休みの手配してくれたのよ。だから今日1日は普段できないことをしようってね。ネリスこそ今日は露店出さないの?」
「私? マラン島のスタンプラリーでもらったものはあらかた処分できたからなぁ。売るモノないや」
 昼食に出されたオムライスをほおばりながらネリスは答える。
 そんな和気藹藹の雰囲気とは別に、ル・アージュは静かにご飯を食べ終えた。
「ごちそうさま。騎士団行ってくる」
 衣替えを終わらせた時点で鎧をまとってたル・アージュは、魔導剣を携え静かに女所帯を出ていった。
「ルア姉機嫌悪くない?」
「ルアなら騎士団の定例会とか言ってたからねぇ、そのせいじゃない?」
 ルシアも食事を終わらせて頭にクラシカルリボンを巻いて出かける準備を始めだした。
 無論行先はラヘルだが、カード狙いの狩りなので気は重いようだ。もっとも、狩りに行かなきゃクリシュナがうるさいからでもあるが、文系のルシアにとっては体を動かすことが億劫で、狩りとなると苦手意識が優先してしまうようだ。
「ネリス、ラヘルまで飛ばしてくれない? あなたもコンバーターの材料集めなきゃいけないんでしょ?」
「いいよー、ちょっと待ってね」
 返事とともにオムライスをいっきに食べるネリス。クリシュナの友人に火コンバーター作成の依頼を受けたことでちょくちょくラヘルに行くようになったからだ。
「二人とも行ってらっしゃい」
「夕方には帰ってくるねー」
 ヴァーシュの声に送られ、ルシアとネリスは外に出ていった。

 -騎士団定例会場-

「あ、白鳥叔父さん。お久しぶりです」
「ル・アージュか、久しぶりだな。元気にしてたか?」
「はい。ヴァーシュも元気ですよ。たまにはお会いになった方がいいんじゃないですか? ヴァーシュも喜びますよ」
「成人した娘に会いに行けるほど暇ではないよ。・・・でもクリシュナさんには挨拶に行かないとな。娘が世話になっているのに何もしないのも悪い」
「うちのおやじはそんな事気にしてないからなぁ。ヴァーシュが羨ましいよ・・・」
 たわいもない会話を続けながら騎士団までドラゴンを走らせる二人。
 騎士団についたときにはもう多くの騎士、ロードナイト、ルーンナイトが大挙していた。
「こほん! プロンテラ騎士団の諸君、よく集まってくれた!」
 ひな壇の騎士団長が大声を発して集まった騎士団員の注目を浴びる。
「今回集まってくれたくれた諸君に、プロンテラ城の知らせが来ている。今度、我がプロンテラ騎士団にも育成指導やルーンナイトだけの部隊に遠征に出てもらう通達がきた! これによって、騎士たちのロードナイトへの昇格や脅威となっているバリオフォレストの探索に出てもらうことになる!」
 騎士団長による演説は続く。
「ロードナイト部隊はグラストヘイム古城に若き騎士たちを導き、さらなる部隊強化をしてもらうが、ルーンナイト舞台にはここ最近狩場として注目されてるポートマラヤに遠征に出て、森の警戒任務にあたってもらう。なお、今回の遠征には教会側から数名のアークビショップが同伴してくれるとのことだ。教会側も、ポートマラヤでのアークビショップの調査している病院の調査に騎士団からも動いてほしいとのことだ。よって、この後ルーンナイトによる調査部隊の編成を行う。ロードナイト諸君にも教会側のハイ・プリーストがついてくれるとのことだ。もっとも、教会側もプリーストの修行に協力してほしいとのことで、大臣が手を回してくれたようだ。よって我が騎士団も教会側の配慮を受けて合同作戦に参加することとなった!」
 話が長いなーと思うル・アージュを白鳥がたしなめる。参列した騎士たちの後ろにいるとはいえ、後方に誰もいないというわけでもない。
 そして2時間にもわたる騎士団長の報告事項などを聞いた後、ルーンナイトだけの編成振り分けの集団の中に二人は向かった。
「病院探索部隊と森林探索部隊に振り分けます! ルーンナイトの皆さまはこのお触書と編成書を受け取ってください!」
 女性のルーンナイトにより編成書を受け取るル・アージュと白鳥。内容をじっくりと見つめて自分の配属部隊を調べる。
「あら、叔父さんと一緒の部隊だわ。それに・・・」
「あら、ルアと同じ部隊だわ」
 同時に聞こえた同じ声。
「お姉ちゃん?!」
 ル・アージュが素っ頓狂な声をあげたと思えば、そこにアークビショップとなったファ・リーナがいた。
「久しぶりね、ルア」
「お姉ちゃんこそ・・・、遠征部隊に名乗り出たの?」
「ううん、新人アコライトの転職が落ち着いたからこっちに回されたの。ほら、あそこに渚先輩もいるわよ」
「あ、ほんとだ・・・」
 二人は別に配属された渚 レイの姿を見た。どうやら別部隊に配属されているようだ。
 ル・アージュは再度配属手配書を確認したが、どうやらルーンナイト4にたいしてアークビショップ1の編成らしい。
「どうやら我々は森林担当のようだな。どちらにせよルーンナイト単独で行くには不安が残るようだな」
 白鳥は冷静に編成表を見ていた。そこへ残り二人のルーンナイトも現れ顔合わせとなった。

「刹那、君は私と病院担当だね」
「そうだな。まぁ妥当と言えば妥当か」
 渚 レイが編成表を同じアークビショップの「時津 刹那(ときつ せつな)」と話していた。
「アークビショップ2のルーンナイト3の編成か援護は任せるぞ。レイ」
「そうですね。足止めはルーンナイトさんに任せましょう」
 あくまで冷静な二人のアークビショップ。

 1時間後

「お互いの顔合わせは終わったようだな。出立は明朝0700、集合は時間に遅れるなよ。では諸君らの健闘を祈る!」
 騎士団長の言葉が終わると、ル・アージュらは配属されたルーンナイト二人と別れ女所帯に向かった。(白鳥はル・アージュに強引に誘われたのである)
 女所帯の道中、ファ・リーナはル・アージュのドラゴンに便乗していた。
「意外と揺れるのね」
 楽しそうな姉をしり目にル・アージュと白鳥は女所帯へとたどり着いた。
「ただいまー。ヴァーシュいるー!」
 ドアを開けるなりル・アージュは叫んだ。
「あらおかえり。珍しいお客さんもいるわね」
 最初に現れたのはクリシュナだった。それに遅れてヴァーシュが二階から下りてきた。
「父上・・・、ご無沙汰してます」
「元気そうだな。安心したよ」
「リーナも来てたのね。久しぶりね」
 こうして女所帯に入った3人。ル・アージュとファ・リーナはヴァーシュとともに食堂のテーブルに、白鳥はクリシュナと居間にむかった。
「へぇー・・・、父上と同じ部隊でポートマラヤにねぇ」
「そうなの、明日から1週間遠征任務になったわ」
「ルアが一緒の部隊になるなんて、きっと神様の思し召しだわ」
 従姉妹揃っての談話に花が咲く中、クリシュナと白鳥は別の話をしていた。もちろんヴァーシュを預かってくれているクリシュナに、白鳥はあいさつに来たということでそんなに楽しい話でもないようではあるが・・・。
「それにしても・・・」
 ファ・リーナが話の途中でル・アージュの胸を凝視していた。
「双子なのに、何故私はこのサイズなのだろう・・・?」
「天は二物を与えず・・・でしょ? お姉ちゃんが天才な分、私は胸だけでもお姉ちゃんに勝てなかったら泣くわよ」
「ヴァーシュはさらに上いってるし・・・」
「あんまり胸だけじろじろ見つめないで・・・」
 ヴァーシュはファ・リーナの視線から逃れるように体をひねった。
「お姉ちゃん、遺伝なんだから諦めて」
 紅茶を飲みながらル・アージュは言った。
「うちらは一卵性の双子じゃないんだから、文句はおやじに言ってよ」
「うう・・・」
 そんな話をしているうちに外は暗くなり始めていく。
「ではクリシュナさん、娘をよろしくお願いします」
「わかってるわ。安心しなさいって」
 どうやら居間の二人の会話は終わったらしい。白鳥は立ち上がるとヴァーシュの前まで近づいた。
「ヴァーシュ、何もしてやれなくてごめんな・・・」
「父上こそ、お元気でいてくれれば私は満足です・・・」
 立ち上がった娘の頭にぽんっと手を置くと、白鳥は微笑んで女所帯を後にしていくのであった。
「私も帰るね。ルア、明日の朝また会いましょ!」
「バイバイお姉ちゃん。低血圧なんだから遅れないでよ」
 こうしてファ・リーナが立ち上がると「ただいまー」とネリスとルシアが帰ってきた。
「あら珍しい、リーナが来ている」
「リーナ姉お久しぶり!」
「伯母様、ネリス、お久しぶり」
 するとルシアは、おもむろに右手をファ・リーナの胸に、左手をネリスの胸にあてる。その数秒後、ルシアはネリスの左手をとり高々と上げた。
 何を言いたかったのがわかると、ファ・リーナは涙目でル・アージュの顔を見て一言「ルアー、叔母様がいじめる・・・」と言った。
「お姉ちゃん、そんなことで泣かないでよ」
「姪っ子泣かすな!」

 ゴン!

「・・・!」
 うずくまり両手で頭を押さえるルシアの背後に、こぶしを握りしめたクリシュナが立つ。
「冗談はさておき、リーナ、お父さんに白鳥を見習え! って伝えといて」
「はい(しくしく・・・)」
 クリシュナに頭をなでられたあと、ファ・リーナはワープポータルで自宅へと帰るのであった。
「はぁ、明日から遠征かぁ・・・」
「頑張ってね、ルア」
 ニコニコ笑うヴァーシュ。父親と会えたことがうれしかったようだ。
 こうして、ル・アージュの初遠征の前日は終わるのであった。
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  by lywdee | 2015-09-08 13:03 | Eternal Mirage | Comments(0)

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