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Eternal Mirage(193)

 初夏を超え夏の日差しに変わりつつあるプロンテラ。女所帯の面々も暑さにやられている者、そうでない者、めいめい好きな事をやったり狩りの準備に追われたりしていた。
「クリシュナ伯母さーん・・・、スタッフオブピアーシング集めてどうすんの?」
 カプラ倉庫から帰ってきたネリスが、狩りの準備をしているクリシュナに問いただす。
「別に好きでSOP集めてるわけじゃないわよ」
 ぶっきらぼうに答えるクリシュナ。心なしか元気がない。
「伊豆神殿で狩りしてたら、目的のモノよりSOPの方ばっかり出ちゃうのよ」
「セドラ多いもんね、あそこ・・・」
 居間のソファーで文献をあさっているルシアが、視線も変えずつぶやく。
「ルシアの言う通り、ルアフじゃ狩りきついけど、セラフィーのとこからサイトクリップ借りてるから、ボス級さえ相手にしなければドフレに集中できるんだけど、セドラ多いからすぐ囲まれちゃうわ」
 クリシュナのため息がでるのはそこである。
 現在金策の狩りをしているのは二人、クリシュナとル・アージュである。もっとも、ル・アージュは堅実(?)にラヘルの氷Dでウアcを狙っている。クリシュナはと言うと伊豆海底神殿での閃光の爪集めと言うギャンブルチックな狩りなのである。
 ドフレが落とす閃光の爪が狙いなのだが、ハイディングして近づいてくるセドラの処理が大変で、しかもドフレは盗蟲と同じでアイテムかっさらっていくわ叩けばわらわらと群がってくるわで、狩りとしては難航中。むしろセドラの方が多く倒してるようなありさまだ。クリシュナの苦労は尽きない。
「ネリス、暇なら倉庫の不良在庫と一緒にSOP売っといて。値段は任せるから」
「はーい」
「じゃあ行ってくる」
 そうしてクリシュナは今日もイズルードに向かうのだった。
「ねぇ、ルシア伯母さん」
「なぁに?」
「なんでクリシュナ伯母さんルアフあるのにサイトクリップ使ってるの?」
 素朴な疑問をぶつけられたルシアは、ネリスを手招きし、ソファーに座らせる。
「あそこね、ルアフだと余計なものまで倒さなきゃならないのよ」
「余計なもの?」
「そ、スロフォっていう電気ウナギがね、ルアフだとダメ与えていぶりだしちゃうのよ」
「サイトだと?」
「いぶりだすけどダメは与えない。だから倒さなくても済むのよ」
「ふーん」
「いくら姉さんが強くても、5匹も6匹も抱えてなんていられないわ」
 紅茶を口にしながらルシアは話をつづけた。
「せっかくのアンフロ風服でも、スロフォにはユピテルサンダーあるし、喰らってたら効率なんて悪すぎるわ。だからサイトクリップなのよ」
「いぶりだしても大丈夫なの? 襲われない?」
「その点は大丈夫。スロフォはね、一定以上の強さを持ってる相手には攻撃してこないから」
「へー」
 ルシアの講義(?)が終わるとネリスは出かけて行った。もちろん、不良在庫とSOPの処分に露店を開くためだ。
 ネリスとしても、倉庫の不良在庫の他に日に日に溜まっていく墨汁も何とかしたかった。
 クリシュナはドロップ運を維持するのにだいたいのドロップ品は拾ってくる。ましてやセドラもドフレも墨汁を落とすので、自然と倉庫に墨汁が溜まっていく。こちらはある程度溜まったら売却しているので問題はない。むしろSOPの方が、高値で売れない、過剰しても元を取れないので困りものではある。
 ネリスが出かけた後、女所帯では「寝過ごしたー!」とル・アージュの悲鳴にも似た叫び声が響いた。
「今頃起きたか・・・」
 ルシアはため息一つついて紅茶を飲み干した。
「ルシア叔母さん! ラヘル行ってくるー!」
「はいはい。気を付けてね」
 ルーンナイトの鎧をまといながらル・アージュは、ラヘルでもらった指輪でラヘルへと飛んで行った。
「あわただしい事ねぇ」
 ルシアはようやく静かになったかと胸をなでおろした。

 その頃イズルード海底神殿では・・・。

「相変わらずセドラが多い・・・」
 クリシュナがサイトをたきながらセドラと交戦していた。
「私はドフレを倒したいの!」
 文句を言いながらセドラの処理をするクリシュナ。ルアフからサイトクリップに変えたことでよけいなMOBには襲われることはないが、それでも狩りが進んでるわけではなかった。
 神殿ではアンフロ風服のおかげか、フロストダイバーを喰らっても凍結することもないし、スロフォにも襲われない。むしろ数的にはセドラの方が多いし、サイトをたいてからじゃないとドフレと戦ってる最中にセドラが姿を消して近づいてくることの方が多い。
 結果としてセドラ狩りしてるんじゃないかと言うほど倒してる。
 クリシュナが狙う閃光の爪、需要があるうちに金策対象として狙ってるのだが今のところ出たのは1個だけ。セラフィーも過剰するなら5個は欲しいと言うし、SE成功率でも10個はほしいなとクリシュナは考えてるのだった。
 とりわけ難易度の高い狩場だけあって、クリシュナの狩りは1時間もてばいい方と割り切ってる。むしろ軍資金があるうちに出したいのが本音。
 そのクリシュナのテンションを下げるのが1日一本はでるSOP、+10過剰ならいい値が付くもののセラフィーには頭の痛い代物だと煙たがられている。
「ルシア連れてきて付与かけてほしいぐらいだわ」
 セドラを倒すたびに漏れる愚痴。ドフレも注意しなければならない。何故なら、周囲を注意しなければ文字通りタコ殴りにあうからだ。無詠唱ハイディングには困ってるぐらいだ。
「サイトじゃないと私でも無理だわ」
 実質この狩場で狩ってるのはセドラとドフレだけ。ルシアが言うには閃光の爪のドロップ率はカード並みぐらいだと言われてる。
 苦しい狩りだからこそ得られる軍資金は高い。スロットエンチャントした閃光の爪でも高値で売れるくらいだ。過剰すればそれこそ当分の生活費は保証される。クリシュナの腕の見せどころでもある。
「はぁ、1時間ぐらい経ったかな? 今日の収穫もSOP1本かぁ・・・。帰ろう」
 荷物袋を抱えてクリシュナはプロンテラへと帰っていった。

 テンションが上がらないまま、クリシュナはカプラ倉庫に寄って戦利品を預けると女所帯へと帰っていった。
「ただいまー」
「姉さんおかえり。調子は・・・聞くほどでもないか、お疲れ」
「ちょっと寝かせて・・・」
 クリシュナはそう言って自室へと向かっていった。
「たーだーいーまー・・・」
 次に帰ってきたのはル・アージュだった。こちらも戦果は上がってないようだ。何も言わず自室へと帰っていく。
「フレアー、早めに風呂準備してあげたら? 私の紅茶はしばらく心配いらないから」
「かしこまりました、ルシア様」
 そう言ってフレアはエプロンを外し、家の裏の風呂釜に向かっていった。
(30分経ったら起こしてやるか・・・)
 居間の鳩時計をみてルシアはそう思うのだった。

  by lywdee | 2016-07-12 10:24 | Eternal Mirage

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