2017年 04月 18日 ( 1 )

 

Eternal Mirage(201)

 春の嵐がきて気候も温かく落ち着いたここプロンテラ。今日も女所帯は朝から元気だった。
「ネリス! リンクのとこ行ってネイとパルティナ連れてきて!」
「はーい」
 クリシュナの言葉に元気よく家を出るネリス。
 クリシュナはクリシュナで、家の中から紙コップやら皿などをネリスが置いてったカートに積んでいく。
「伯母さん、氷持ってきたよ」
 早朝からラヘルに行っていたル・アージュが、大量の氷とともに帰ってきた。
「それはフレアに任せて、あんたはさっさと朝食摂りなさい。フレアが片づけに困ってるからね」
 クリシュナに言われるがまま、ル・アージュは食卓に着いた。
 ヴァーシュはその頃、自室で銀色の長い髪を梳いていた。もちろん鎧は着ている。
 窓から射す光が風になびく銀色の髪をきらきらと輝かせている。
「ごめんくださーい」
「あらお姉ちゃん。いらっしゃい」
 食卓で朝食をとっていたル・アージュが、不意の来客にいち早く反応する。女所帯にやってきたのはファ・リーナだった。
「クリシュナ伯母様、母からこれ預かってきました」
「お、精霊殺し(お酒)を3本も・・・、気が利くねぇ」
「母はお父様が行かないってことで来ていません」
「きたら酒が不味くなる。気にしないよ」
 クリシュナはお酒を受け取ると、大きなバケツに氷水をいれてそのバケツにお酒を入れる。そしてそのままネリスのカートに積み込んだ。
「ごちそう様」
 ル・アージュは朝食を撮り終えると、姉ファ・リーナとともに居間のソファーに腰を下ろす。
 女所帯で忙しい思いをしているのは、クリシュナとフレアの二人だけである。毎年恒例のアマツ花見宴会ツアーの準備をしているのだった。
 フレアはフレアでお酒の肴や料理をお重に詰め込んでいる。毎年の事だけあって手際は良い。
「伯母さんただいまー」
「伯母さんおはよー」
「姉様お邪魔します・・・」
 リンク宅から帰ってきたネリス、ネイ、パルティナがゆっくりと女所帯の中に入る。
「あ、ネイ。あんたから預かってた品物、完成したから持っていきな」
「え、もうできたの?! 伯母さんよくやるなぁ」
「もう! お姉ちゃん、お礼が先でしょ!」
「そうだった・・・。ありがと、伯母さん」
 クリシュナから渡される一振りのカタール。当面の狩りで使うトリプルマリシャスブラッディティアーをネイは受け取るのだった。
「言ってみるもんだ・・・」
 ネイは早速そのTM血涙を装着すると、まじまじとそのカタールを見つめるのであった。
「よし! 準備はできた。みんな、アマツに行くわよ!」
 鶴の一声、クリシュナの言葉に全員が外に出る。もちろんネリスはカートを引っ張り出した。
 そこでパルティナがワープポータルを出して全員がその光の柱に身を投じる。出先は年中桜舞うアマツの花見通りだ。
「やっと来たか・・・」
 大輪の桜咲く木の根元で、ルシアが場所取りをしていた。
 ルシアはクリシュナに言われ、一人アマツで場所取りをしながら茣蓙を引いて待っていたのである。
「やっとってあんた、1時間ぐらいなんてことないでしょ?」
「姉さんの時間間隔狂ってるわよ」
 文句もそこそこに女所帯の面々はお酒を出したりお重を広げたりと準備に入る。
「それにしてもクリシュナ伯母さん。花見だったらプロンテラでもできるじゃん?」
「プロは知り合い多いからゆっくり飲めない。だから家族で誰も知らないアマツにきてるのよ」
 ネイのつぶやきに素っ気なく答えるクリシュナ。
「さ、お花見開始! みんなお酒は持ってるわよね?」
 周りを確認しながらクリシュナは立ち上がる。
「かんぱーい!」
『かんぱーい』
 クリシュナの音頭に全員がお酒を口にする。
 花見の席は4人の年長者と、5人の若い衆に分かれた。クリシュナの考えでもある。
「パルティナと飲むのも久しぶりだねぇ」
「そうですね。私はあまり飲めませんでしたからね」
 そう言いながらパルティナはクリシュナのコップにお酒を注ぐ。ちなみに、パルティナが飲んでるのはアルコール度が低いモロク果実酒である。
 病気がちだったパルティナも、年始の実家帰りの時はそれとなく飲んではいたが、どちらかというと付き合い程度の摂取しかダメだと医者に言われてたからだ。だが今年は完治したところで医者の許可が下りたのでクリシュナの花見に賛同してついてきたのである。
 もちろんそれほど飲む方ではないので、とくに酔ったから変わるということもない。むしろ変わるのはルシアの方だ。
 ルシアは酔うと誰彼かまわず説教をするという迷惑な酔い方だが、酔うのも早いがつぶれるのも早い。だからクリシュナは先にルシアを酔い潰してからゆっくり飲むというのが恒例ともいえる。
「姉様、ルシア姉様寝ちゃいましたね」
「そうだねぇ、これでゆっくり飲める」
 90分ほどでつぶれたルシアの寝先はパルティナの膝の上だ。パルティナはこうなるのをわかっていたのであまり飲んではいなかった。そう、ルシアは酔っていても妹には甘いのを知っているクリシュナの年の功で彼女を連れてきたのだ。
「パルティナ、その後どうなのさ?」
「私ですか、そうですねぇ・・・。もう血を吐くことも急に倒れることもないので完治だとは言われました」
「それはよかった。でもあんたは下戸だからねぇ」
 クリシュナもグイグイ飲む方ではないが、こんな時ぐらいしか飲まないのでつぶれることも眠くなることもない。お酒の席では頬を軽く朱に染める程度の酔い方しかしない。むしろ対等にお酒が飲める家族はいないのが残念なところではある。

「へー、ルアは魔導剣2本ももってるのかぁ」
「狩場に応じて使い分けられるようにしてるんです」
「私は当面の武器があるから、お金稼ぎしてから二刀流の装備揃えよう」
 若い衆は若い衆で飲んでいるのだが、会話の内容は最近の狩りやら装備に関してだ。一向に浮いた話は出てこない。
「ヴァーシュは師団長にならないの?」
 ファ・リーナの質問がヴァーシュに飛ぶ。
「当分ならないわ。だって、私には実力不足だし・・・。リーナこそ、最近支援のお仕事ないんでしょ」
「そうねぇ、最近は大聖堂でのお仕事しかないわ」
 若い衆はゆっくりとしたペースで飲み、会話の方が主流であるようだ。
 もっとも、家族が揃うのは年始ぐらいなので会話の方が弾むようである。
「お姉ちゃん、眠い・・・」
「はいはい、こっちおいで」
 お酒に強くないネリスがネイの膝枕で寝に入った。
「それにしても・・・、姉妹でこんなにも差がでるのか・・・」
 そう言いながらネイは、ネリスの胸をさすったのちファ・リーナ、ル・アージュ姉妹を見る。
「ネイ姉さん何が言いたいの?」
「胸の発達度」
「さらっと言わないでよ、ルシア叔母さんじゃないんだから・・・」
「ははは、揉まないだけいいでしょ」
 照れ笑いするネイをため息で返すル・アージュ。
 するとファ・リーナは服の中を覗き、涙目でル・アージュを見た。
「お姉ちゃん、そこで私を見ない」
「こればっかりは遺伝かもねー」
 けらけらと笑うネイ。別に悪気がないだけに質が悪い。

 そうこうして3時間ほどの時間が流れた。

「よし、帰るわよー」
 クリシュナの声にネイはネリスを起し、ルシアはクリシュナがカートに乗せた。
 フレアはお重やら空の空き瓶やらを回収し、茣蓙とかも片づけた。
「ポタ出すわよー」とクリシュナ。光の柱が現れる。
 若い衆と年長者と全員がワープポータルに乗るとそこは女所帯の入り口であった。
「次に家族が揃うのは年始かぁ」
 しみじみつぶやくクリシュナ。
「姉様、今日は誘っていただきありがとうございました。ネイちゃん、帰るわよ」
「はーい。クリシュナ伯母さん武器ありがと」
 パルティナとネイは、パルティナが出したポタで帰っていく。
「ルア、伯母様私も帰りますね」
 ファ・リーナも自分のポタで帰って行った。

 こうして、女所帯の花見は終わるのであった。
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  by lywdee | 2017-04-18 13:03 | Eternal Mirage | Comments(0)

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