2017年 11月 14日 ( 1 )

 

Eternal Mirage(210)

 季節は巡り、ハロウィンの後片付けに励む者も多いプロンテラの一角。「鍛冶屋街」と呼ばれるブラックスミス系が多い住宅街に男所帯はあった。
 この辺に住んでる鍛冶屋たちは、街の武器屋に卸す武器を製造する傍ら、こぞって製造する属性付き武器の仕上げに追われている。その分鍛冶屋街は連日のように鎚打つ響きに覆われている。無論、メカニック「セラフィー」も初心者向けの属性武器をたまに製造している。
 セラフィーが作る属性武器の多くは初心者でも扱える属性武器に星の欠片も含まれているので、威力の方は過剰精錬している分攻撃力には定評はある。ただ、本人は製造で飯食ってるわけではないのだが、家にルーンナイトの「白鳥」がいるおかげで、騎士団への武器調達なども兼務している。
 そこに住むアークビショップ「渚 レイ」も、大聖堂からの受注も少なくなく、初心者アコライトが修行の一環で鈍器を使っての鍛錬に励んでいるので、時々作っているのが星の欠片が二つ入った火属性の過剰チェインである。今はイズルードの近く、バイラン島でも使える風属性のチェインも並行して作っている。
 まぁそういったわけであり、男所帯はロイヤルガード「リューディー」が集めるエルニウムやレイドリックカードなどでも生計を立てているので、生活に困りはしなかった。
 今日はその中でも渚 レイにまつわる話でもしようか。

 渚 レイの朝は早い。
 セラフィーと交代で作る朝食や、朝の礼拝などもこなしている渚 レイ。料理も得意でその器用な手先で食事を作るのも上達している。時折大聖堂に転がり込む孤児たちの世話もしているので支援の仕事以外にも意外と多忙な毎日を送っている。
「刹那、今日はプリーストの支援でニブルヘイムですか?」
「ああ、退魔プリーストを目指す子たちが増えたからな。サンクチュアリやマグヌスエクソシズムの貼り方や、そのための資質を上げるための修行の仕方を1から教えなきゃいけない。手間だけが増えるさ」
「そうですか。頑張ってください」
 気の合う同期のアークビショップ「時津 刹那(ときつ せつな)」との会話をしながら渚 レイは一つ尋ねるのであった。
「刹那、私はもしかしたら大事な人ができるかもしれません。そうなると孤児たちの面倒も、支援プリーストの修練にも差し支えそうで悩んでいます。どうしたものでしょう?」
 それを聞いた時津 刹那は、「うーん」と悩みつつ一声かけた。
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「恋愛か? 私には縁がないがお前次第だろ?」
「そうですよね。愚問でした・・・」
「まぁそうなったら応援してやる。長い付き合いだからな」
 笑いながら刹那はそう答えた。
 午後からは交代のアークビショップが来たので渚 レイは男所帯に帰ることにした。
 とはいってもセラフィーに大聖堂からの受注品の目録を携えているので、また大聖堂に行くかもしれないと思っていた。
「セラフィーさん、いますか?」
「おお、おかえり。レイ、昼はできているから温めなおして食ってくれや。ってなんだ?」
「大聖堂からの目録です。多分製造依頼だと思いますが・・・」
 そう言って目録を手渡す渚 レイ。
「うーん・・・、風属性チェイン10本か・・・。数作るには鋼鉄が足らんな。ちょいとクリシュナさんのとこ行って石炭分けてもらうわ」
「そうですか。行ってらっしゃい」
 渚 レイはセラフィーを見送ると、厨房に置かれたチキンソテーを温めなおして遅い昼食をとるのであった。

 夕方、渚 レイはセラフィーの製造に協力していた。・・・と言っても少しでも製造の成功率を上げるためにグロリアなどで支援するだけであったが・・・。
「よし、とりあえず20本出来たか。あとは過剰だな」
「お手数かけます。ところでセラフィーさん、ルアさんのことどう思いますか?」
「突飛だな。ルアに惚れたのか?」
「わかりません。気にならないと言えば嘘になりますが、どう接したらいいかわからないもので・・・」
「へー・・・お前とルアか。いい組み合わせだと思うがな」
 真面目な顔でチェインを精錬するセラフィー。
「いいんじゃない。告白して付き合っちゃえよ?」
「そんな・・・、簡単に言ってくれますね」
「だっていい子じゃん、お前さんだってまんざらでもないんだろ? 誰かに取られちゃう前に自分からアピールすれよ」
「・・・」
「安心しろ。邪魔はしねーよ。自分が「好き」だと思うなら行動すれよ。じゃないと後で後悔してもしらないぞ?」
 チェインを精錬していたが、セラフィーは不意に渚 レイを見た。
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「ルアだけじゃない、女所帯の若い衆に身内感覚で付き合ってるからな。ルアにしたって、俺からしてみれば妹みたいなもんだ。特別な感情何てないわ」
 セラフィーはそう言うが、渚 レイにしてみれば深刻な問題ではないかと思っている。付き合いも長いし二人で狩りに行くのも一度きりってわけでもない。
 渚 レイは複雑な思いで自室へと戻るのであった。

「告白すれば? かぁ・・・」
 渚 レイはまだ薄明るい陽の光で目が覚めた。
(これが「恋」ってやつですか・・・)
 自分には縁のない話だろうと思っていた渚 レイであったが、日増しに大きくなるル・アージュへの想い。しかしながら渚 レイにも司祭としての立場もある。つらいところだ。
 その日は天気も良いので渚 レイは孤児たちを連れてプロンテラの南へ遠足に出かけることになった。もちろん一人では持て余すだろうと、他にも二人ほどシスターがついてきている。
 そして行きついた場所、それはよくル・アージュとともに語らったことのあるイズルード南の海岸線だ。
 孤児たちはそれぞれの水着を着て波打ち際で遊んでいる。そういう静かな光景を見るのが渚 レイの楽しみの一つでもある。
「ポリン叩いちゃダメよ。あぁー、クリーミーはもっとダメ!」
 シスター二人も、遊び盛りな子供たちの面倒で四苦八苦している。
「君たち、生き物はもっと大事にしなきゃ。むやみに傷つけるのはよくないですよ」
「はい! 司祭様」
 子供たちがまた波打ち際で遊ぶようになってから、渚 レイは少し離れた海岸線に腰を下ろした。
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(どうしたものかな・・・)
 海を見つめながら、渚 レイはふと笑うル・アージュの顔を思い出した。
「司祭様、そろそろ孤児院に戻りますわよ」
「はい、今行きます」
 すっと立ち上がり、渚 レイはワープポータルを開いた。
 子供たちとシスターが入っていく中、渚 レイは一人のシスターに「ちょっと一人になりたいので・・・」と告げ、一人プロンテラへと歩いて帰るのであった。

(ルアさんから見て、私はどう思われてるんだろう?)
 いろいろな思いが交錯する渚 レイの胸中。これが恋だという事には気づいていた。しかしル・アージュとの距離を考えると踏ん切りが中々つかなかった。
 そんなことを思っているうちに、いつのまにか渚 レイはプロンテラに戻ってきていた。
(子供たちにお菓子でも買って帰りましょうか・・・)
 気持ちを切り替えた渚 レイは、お菓子の売ってる店に行こうとして突如視界を奪われた。
「だーれだ?」
「カスミでしょ。声でわかりますよ」
「へへへ・・・」
 急に背後に立っていたのは、渚 レイの妹「渚 カスミ」であった。
「どうしたんですか? アマツでの契約はとっくに切れてるはずですが?」
「うん、それでね、お母さんの許可が取れたからプロンテラに住もうかな? って様子を見に来たの」
「そうですか。では一緒に家でも借りて住みますか?」
「冗談はやめてよ。私だって独り立ちしてるのよ」
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「お互い彼氏彼女できたら出てかなきゃいけないじゃない。だからお兄ちゃんとは暮らさないよ」
「そうですか、いや、そうですね」
 もう立派な女性になったのかと、渚 レイは少しうれしかった。
 子供の頃、あれだけ暴れまわっていた妹も成長したのだと、目の前の妹を見て時の流れを感じる渚 レイであった。

-その頃-

「あら? ルアちゃん、どうしたの?」
「パルティナ叔母さん、あのあとおやじどうなったのかなー? なんて思って・・・」
 プロンテラ大聖堂に来たル・アージュは、たまたま居合わせた叔母「パルティナ」にあの日の出来事がどうなったのか聞きに来ていた。
「兄様なら、お見合いは諦めて孫に期待するって言ってたわよ」
「ま、孫?!」
 突拍子もない言葉にル・アージュは固まった。
「孫も何も、どうしてそうなっちゃうわけ?!」
「兄様からしてみれば、男の子が欲しかったのでしょう。だからルアちゃんは諦めて、その子供に家を継がせるって言ってたわ」
「ははは」とあきれた笑い方をするル・アージュに、パルティナは優しく微笑んだ。
「ルアちゃん、なんか私はついでのように思うけど・・・」
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「大聖堂まで来たって事は、好きな子でもできたのかなって・・・?」
「そ!そそそそ、そんなわけじゃな、ないけど・・・」
「いいのよ。そんな照れなくても。若いんだから」
 顔が真っ赤になったル・アージュに優しく微笑むと、パルティナは奥へとひっそり消えてくのであった。
「もう! 叔母さんったら・・・」
「どうかしましたか?」
「ひっ?!」
 背後から不意に話しかけられたル・アージュは、背筋が凍る思いをしながら飛びのいた。
「れ、・・・レイさん?! 脅かさないでよ・・・」
「それはすいません」
 謝る渚 レイの顔を見ていたら、ル・アージュの脳裏にパルティナの「孫」という言葉が脳裏をよぎった。
「顔が真っ赤ですよ? 熱でもあるんじゃ・・・?」
「だだだだだだ、大丈夫です! な、なんでも・・・、なんでもないです!」
「そうですか・・・。私はてっきり私に会いに来たのかと・・・?」
「へ?」
「もちろん狩りにでも誘われるのかと・・・?」
 その台詞にル・アージュは思わず深呼吸した。
(よかった。気付かれてない。もー! 叔母さんったら、あんなこと言うから意識しちゃうじゃない!)
 ル・アージュはうつむいたまま深呼吸をする。
 そして意を決して渚 レイの顔を見るル・アージュ。
「レイさん、狩り行こ!」
「いいですよ。久しぶりですね」
 こうして二人は、新天地にむけて狩りに行くのであった。

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  by lywdee | 2017-11-14 11:10 | Eternal Mirage | Comments(0)

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