<   2014年 07月 ( 1 )   > この月の画像一覧

 

Eternal Mirage(175)

「今日は暑くなりそうですわ」
 女所帯の厨房でフレアは一人ごちた。
 育ち盛りの若い3人を抱えた女所帯の朝食のレパートリーを考えながら、彼女はてきぱきと朝食の準備にとりかかる。
「フレア・・・、おはよー」
 そんなおり、階段を降りてくる一人の女性、ルーンナイトのル・アージュがパジャマ姿のままあくび交じりに食卓につく。
「ル・アージュ様おはようございます。今朝はずいぶん早いようで・・・」
「んー、なんとなく目が覚めちゃってね。なんか冷たいもの、ある?」
 椅子に腰掛けながら一伸びした彼女の前に、ガラス製のコップに氷を入れた水が差し出される。
「ありがと。・・・って、これフレアの分じゃないの?」
「私のはいつでもできますので、どうぞ遠慮なく・・・」
「なんか悪いわね」
 そう言いながらも水を飲むル・アージュ。
 厨房ではトントンっと小気味のいい包丁の音が聴こえてくる。
「着替えてくるわ」
 コップを厨房に持っていったル・アージュは、階段を上がっていこうとする。それと同時にクリシュナの部屋から声が聴こえてきた。
「ちょっと! しっかり引っ張ってよ!」
「姉さん、非力な私にそれを言う?」
(伯母さんたち起きたか・・・)
 二人の伯母の声が聴こえたのでそそくさと二階の自分の部屋に戻るル・アージュ。
(今日もラヘルに行こうかな・・・)
 パジャマを脱ぎ去り鎧下の衣服に着替えながら、ル・アージュは今日の予定を考えていた。最近彼女は事あるごとにラヘルの氷のダンジョンに出かけていた。理由は暑いから涼しいところというのが名目なのだが、ネリスに一攫千金の狩りを頼まれているからだ。
 もちろん自身のレベルアップを兼ねているのだが、彼女は物集めにはむいていない性格であることと、スキルと武器の都合上大型のモンスターのいるところが理想なので、あまり数の多くない狩場が性に合っているというのが現実だ。
 ネリスいわく、「生活費は困ってないから、今のうちに一攫千金のスノウアーカードを出してほしい」と言うことだ。
 当然のことながらクリシュナも一攫千金の狩りをしている。無論行き先はミョルニール廃坑でのスケルワーカー狩りである。ここのドロップは基本男所帯のメカニック、セラフィーに流れる訳だが、スケルワーカーカードが出れば資金も潤うので、毎日のようにクリシュナは出かけているのだ。
 そして朝食が出来上がるころ、女所帯の面々は食卓に集う。
「どうしたのルア、浮かない顔して・・・」
 クリシュナがため息混じりにご飯を食べているのでスプーンを止めてル・アージュの顔を見た。
「うーん、行きたい狩場があるんだけど、この間武器のことでセラフィーさんとこ行ったんだ・・・」
「何? 新しい武器でも頼んだの?」
「いいや、火属性クレイモアの過剰精錬頼んだの」
「・・・で?」
「風属性クレイモアは成功したんだけど、火属性クレイモア壊れちゃってさぁ。いつできるんだろうって・・・」
 ル・アージュはスプーンでスープをかき混ぜながら、片肘ついてため息をこぼした。
「火属性ねぇ・・・。ポートマラヤにでも行きたいの?」
 さすが年長者にして女所帯の主、ずばり的を得た答えだ。
 最近ポートマラヤでは、冒険者としてのレベルアップを図るものたちがこぞって集まる狩場として有名になりつつある。装備上クリシュナには向かない狩場ではあるが、情報はルシアを通していくばくか知ってるつもりだ。
 そこに目をつけたル・アージュは、武器のレベルアップを図りたくてセラフィーに武器の過剰精錬を頼んで失敗したのだ。それで過剰精錬に成功した風属性クレイモアで仕方なくスノウアーを狩っているのが本音なのである。
 ロイヤルガードのヴァーシュは、一攫千金よりも堅実に材料集めに走っている。理由はこの間ネリスの様子を見にきた彼女の姉、ネイから頼まれた毒薬の瓶の材料だからだ。
「ヴァーシュって最近軍の行動についていってないよね」
「そうねぇ・・・、りゅーさんがもう単独行動の許可はとってくれましたし、ほかならぬネイ姉さんの頼みだから」
 そんなたわいもない会話がはずむ中、ルシアとネリスは揃って朝食を食べきった。
「ネリス、今日は暇でしょ、あとでジュノーまで付き合って」
「いいよー」
「何? また本を借りに行くの? ほんとすきだねぇあんたは・・・」
 妹の行動に呆れながらも、クリシュナは出かける準備を始める。人の少ない午前中がクリシュナにとっても行動しやすいし、気が楽だからである。

 所変わって鍛冶屋街の男所帯では・・・

「リューディー、今日は軍の仕事ないのか?」
「ん? なんか用事でもあるのか?」
「いや、たいした用事ってわけでもない。ピラミッドダンジョンに行ってイシスから損傷したダイヤモンドをいくつか集めてほしいだけだ」
 セラフィーは工房の製造用材料入れをあさりながらリューディーにそう告げた。
「この間折ったクレイモアの材料だろ?」
「ああ、完膚なきまでに叩き折っちゃったからな。ルアの頼みだから今度こそ過剰精錬成功してやりたいのさ」
 セラフィーはそう言いつつ材料入れの中身を物色する。
「鋼鉄とオリデオコンは女所帯が用意してくれてはいるが、損傷ダイヤはグランドクロスが使えるお前さんが行ってくれると助かる」
「了解した。明日はわが身だからな・・・」
 リューディーは呆れながらもRGの鎧を身にまとい始める。当然のことながら金策を頼まれるよりよっぽど気が楽だからだ。
 最近まではヴァーシュ他少人数の小隊長の任務ばかりで、まったくと言っていいほど自由はなかったが、珍しく長い休暇をもらったので体が鈍ると、手持ち無沙汰な毎日を送っていたのだ。
「いっそうちの属性武器も過剰したらどうだ?」
「そのうちな」
 リューディーの皮肉にも似た台詞を聞き流しながら、セラフィーは背中を見せたまま軽く掌を振って見せるのであった。
[PR]

  by lywdee | 2014-07-17 07:37 | Eternal Mirage | Comments(0)

SEM SKIN - DESIGN by SEM EXE