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Eternal Mirage(178)

 その日ル・アージュは、食堂のテーブルに魔導剣を置いて真剣な眼差し眺めていた。
「うーん」
「何真剣な顔で悩んでいるのよ?」
 女所帯の主、クリシュナがル・アージュの隣に腰かけ、彼女の顔を見ていた。
「うーん・・・、あのね伯母さん、今なら何売ったら2千万Z稼げるかな? ・・・て」
「2千万Zねぇ・・・。スケワカカード2枚分かぁ・・・」
「伯母さん基準だとそうなるのか・・・」
 ハハハと力ない笑い声がル・アージュの口から洩れる。
「それと魔導剣がどう関係するわけ?」
「いやね、今使ってるのが火と念でしょ。もう一本風と土で作りたいなぁって・・・」
 ふぅんと片肘ついて話を聞いていたクリシュナは、姪の顔と魔導剣を交互に見つめていた。
「なんでまたそんな悩みを抱えたワケ?」
「うん・・・実はこの間私のギルドでエンドレスタワー登ったんだけど、私が戦力になれたのは地属性と念属性相手だけで、他の属性相手には半分眺めていたもので・・・」
「なるほどねぇ・・・、でもソレって元々ポートマラヤ限定で作ったものじゃなくて?」
「うん・・・」
 うなだれた感じで魔導剣を眺めるル・アージュ。
 クリシュナは「ふぅ」とため息ついて二階に向け叫んだ。
「ネリスー!いないのー!」
 クリシュナが叫ぶと、二階からネリスの「はーい!」という元気な声が響いた。
「伯母さん、何か用?」
 きょとんとした表情で階段をおりるネリス。
「うちじゃぁアンタしか相場に詳しくないもんでね。参考までに聞きたいことがあるのよ」
「ふぅん、何の相場?」
 クリシュナの対面の席に腰を下ろすネリス。
「手っ取り早く2千万Z稼ぐならなにがある?」
「んー・・・、だいたい見かけるのはハンターフライカードで2千万zいじょうかなぁ? あとは記憶があってればチェネレカードかな?」
 視線を天井に向けてネリスは記憶を辿った。
「カードじゃなく物だったら?」
「物だと白羽スーツを7段階過剰できれば3千万z以上で売れるかな。それ以外だと上位の時空ブーツとかかな? でもなんで2千万zなの?」
「なに、ルアの装備の関係でね。別に今すぐってわけじゃない」
「ふーん、ルア姉の装備ねぇ・・・」
 クリシュナの言葉を聞いて、ル・アージュの顔を不満そうに見つめるネリス。
「ヴァーシュ姉は今の装備で我慢してくれてるのに・・・」
「だぁかぁら、何とか自分で用意しようと考えてるでしょ!」
 バンっと両手でテーブルを叩いて立ち上がるル・アージュ。
「セラフィーさんからもらった過剰ブリューナクのおかげで、回復剤だって経済してるでしょ!」
「まぁ落ち着いて座りなさい」
 クリシュナはル・アージュの背中をポンポンっと叩いてなだめる。
 場の空気が悪くなりかけたとき、厨房からフレアが紅茶と茶菓子をもって食堂にきた。
「とりあえずアレね。いい加減倉庫のメテオプレートを処分してもらおうかしら、資金があるうちに・・・」
「そうだね。とりあえずエルニウムは買っておいたよ。あとはルア姉かヴァーシュ姉に過剰してもらうだけだよ」
「ルアとヴァーシュ・・・、どっちが過剰運あるかしらねぇ・・・」
 真剣に悩むクリシュナが紅茶を口にする。
「ルアは武器よりも今は魔力アップが先決でしょ」
 クリシュナの部屋からルシアが色々な書物をもって居間のソファに腰かけた。
「ルア、今日の課題よ。フレア、私にも紅茶よろしく」
「かしこまりました」
「おーし! 今日も頑張って勉強だぁ・・・!」
 気合いが入ってるのか否か、ル・アージュは魔導剣片手に居間に移動する。
 実際ル・アージュの魔力は、ルシアの手ほどきと知識によってメキメキと上がっている。ソーサラーであるルシアの指導は、着実にル・アージュの身になっている。
 ルシアも顔にこそださないが、教える楽しみに目覚めたのか毎日のようにル・アージュの指導を欠かさなくなってきている。
 まぁルシアにしてみれば、ル・アージュの魔力アップに協力していれば、自分の魔力アップにもつながるし、誰にも文句を言われることなく知識の向上に励めるからだろう。
「ルア、そこはこうするともっと早く解けるわよ」
「あ、本当だ。さすがルシア叔母さん、わかりやすいわぁ」
 その二人のやり取りを見てクリシュナは少し微笑む。
「ルアもだいぶ専門用語覚えたものだねぇ」
 クリシュナもル・アージュの成長を日に日に感じ取っていた。
 事実魔導剣を手に入れてからのル・アージュの成長は目覚ましい。防御を捨ててるとはいえ、力に頼っていた今までの戦闘スタイルに比べたら、その変化は目を見張るものがある。
 ルーンナイトになって覚えたエンチャントブレードが、魔力に応じて攻撃力を上げるスキルで、なおかつ魔導剣のオートスペル効果で威力も比例して上がっているため、単独での戦闘力も格段に上がっている。あとは装備さえ揃えば、単独でのバリオマヒガオでの狩りも可能なんじゃないかとクリシュナは思っていた。
 現にクリシュナが時々ル・アージュを連れていくプロンテラ南の広場でも、ル・アージュを誘う冒険者もいるくらいだ。その実力というものを否定できない成長ぶりだ。
「ルアの装備が整ったら、今度はヴァーシュの装備かぁ・・・」
 クリシュナの苦労は潰えないモノだった。
「紅茶のお代りを用意しました」
 フレアはそう言うと食堂のクリシュナとネリス、居間のルシアとル・アージュと紅茶を注いでいく。
「叔母さん、これでどう?」
「どれどれ・・・」
 ルシアはル・アージュが差し出した紙をまじまじと見つめる。
「ふむ、解き方に問題はあるけれど、概ね間違いはないわね。いいわ、今日の課題は合格よ」
「やったー!」
 ル・アージュはバンザイとばかりに両腕を上げ立ち上がる。そして魔導剣片手に二階の自室へと戻っていった。
「・・・で、ルアの成長はどうなのさね?」
「そうねぇ、魔力だけなら上がっているわよ。あとは自力をつけて経験を増やしていかないとダメね」
「へぇ~・・・。で、あんたは何を調べているのさ?」
「精霊についてちょっとね。まぁ姉さんに言ってもわからないでしょ?」
 姉の顔を見ることもなく、紅茶を口にしながらルシアは答えた。
「精霊についてはさすがにね・・・」
 紅茶を片手に居間のソファーに移動するクリシュナ。
「まぁ現状魔力だけなら姉さんやヴァーシュの上はいってるわね」
「ほぉ・・・」
「まぁルアには魔力底上げの装備でも整えてあげれば?」
「ふむ、そうなるか・・・。で、あんたはどうなのさ?」
「私?」
 視線をクリシュナに向けるルシア。
「私としては魔力よりもまず詠唱速度を上げたいからスプリントセットをそろえたいところね。それがそろえば魔力あげるのに集中できると思う」
「だとしたらちょっとセラフィーのところ行って相談しなきゃなぁ」
 紅茶を飲みほし立ち上がるクリシュナ。「フレア!ちょっとセラフィーのところに行ってくるわ」
 そう言ってクリシュナは女所帯を出ていくのであった。
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  by lywdee | 2015-05-07 15:30 | Eternal Mirage | Comments(0)

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