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Eternal Mirage(187)

「けーっきょく、あんたは半日ともたなかったわけね」
 あきれ顔でル・アージュを見るクリシュナ。ル・アージュはル・アージュで仏頂面で聞き流している。
「お姉ちゃんと母さん、おばあちゃんの顔だけ見れば用なんてないもの。それに、家でヴァーシュが暇してたらかわいそうだもの。話し相手ぐらいしかできないけど、私はここ(女所帯)が一番いいの」
「私も、ル・アージュがいてくれたから、話し相手に困らなくてすみましたわ」
 そっぽを向いているル・アージュをかばってか、ヴァーシュは笑顔でクリシュナを見た。
「水と油みたいなもんだからねぇ、弟とあんたは・・・」
「だって! 頭ごなしにやれ結婚して跡継ぎを作れだの、お姉ちゃんみたいに家を守れだの言われても、私の意思なんて尊重されないもの。おやじが説教以外で私に話しかけることなんてないもの。あのまま実家にいても、見ず知らずの男性とお見合いさせられそうで嫌だから」
「アイツなら言いかねんな」
 クリシュナも想像がつくのか、それ以上ル・アージュに何も言わなかった。
 ヴァーシュもおおよその見当がつくのか、苦笑いしていた。
「私もお屋敷にいたらお見合いさせられてたかもね」
 母の死後、父、白鳥を追って屋敷を出てからは、ヴァーシュも色々あってクリシュナの家に厄介になっている以上、ル・アージュと境遇は似ていたようである。
 そのせいか、ヴァーシュとル・アージュは、他の従姉妹よりも親密な関係を維持している。
 ル・アージュもその点ではヴァーシュといることの方が安心している。物理攻撃に秀でた父のあとを追わず、自らオートスペル型のルーンナイトを目指し始めたぐらいだ。
「ネリスは実家に帰ったの?」
「そうよ。あの子は母さんに挨拶した後、弟の家で1泊するって言ってたからねぇ」
「ただいまー」
 ル・アージュとクリシュナの会話の途中で、女所帯のドアを開けて入ってきたのはルシアだ。
「あらあんた、夕方まで帰ってくる予定じゃなかったんじゃないの?」
「読む本もないし、母さんの顔見ただけで用事は済んだわ。フレア、紅茶の用意して」
「かしこまりました」
 フレアはさっそく厨房に立ち、ポットを温め始める。
「ルア、ネリスに注文しといたものは預かってるわよ」
「え、ほんと?! よかった、これから狩りの準備でもしようかと思ってたところなのよ」
「はい。悪霊の糸の手袋。スカラバcは刺してあるって」
 ルシアからアクセサリーを受け取ると、ル・アージュは飛び跳ねて喜んだ。
「これでアンタの装備は靴だけになったわね」
 クリシュナは壁にもたれかかって喜ぶ姪の顔を見た。
「誰かさんも自分の装備ぐらい準備してくれたらねぇ・・・」
「愚痴なら聞かないよ」
 クリシュナの視線を感じてか、ルシアはさっさと居間に向かい、朝から置いてあった文献に目を向けるのであった。
「まぁ、二本目の魔導剣を買ってから、ルアも高額カード出してくるようになったからねぇ、私の負担も少なくなったわ」
 クリシュナが言うように、最近ル・アージュはラヘルの氷ダンジョンでスノウアーを狩っている。つい先日もカードを出したくらいだ。その収入を活かして高額なアクセサリー、悪霊の糸の手袋を作ってもらったのである。
 これでル・アージュは、スキルのサポートがあれば全属性に対応できるRKになったわけだ。
 火と念の魔導剣、風と土の二本目の魔導剣、それに水属性と無属性の悪霊糸。これにスキルで聖属性のアスペルシオ、闇属性付与の闇の水、アサシン系のエンチャントポイズン。単独でも5種類の属性を扱えるわけだ。
「あとは魔力を高めて、なおかつ手数を増やすだけね」
「魔導剣の過剰精錬は断られたからね」
 さすがのセラフィーも、モノがモノだけに過剰精錬は怖くてできないとクリシュナに伝えてあった。それでもいい感じでASが出ると言うル・アージュ。不満はないようだ。
「次は速さに関する時空ブーツだけね。さすがにこれは共用装備として考えないとね」
 クリシュナは二人の姪を見てそう言った。
「皆さま、紅茶の用意ができました」
 今のクリシュナ、ルシアに、食堂のル・アージュとヴァーシュに紅茶が注がれていく。
 器用さではルシアもどっこいなのだが、やはり飲食に関してはフレアが一番信用が置かれてる。
「まぁ、ルアも金策に参加してくれることだし、私の負担は少しは軽くなるかもね」
 紅茶を口にしつつ、クリシュナは安堵のため息をついた。
 確かに、女所帯の主だった収入の方法は、クリシュナが出すスケルワーカーcの売却によるところが大きい。そこにル・アージュがスノウアーcを出してくれるのなら、クリシュナの負担はかなり軽くなる。
「春に期待しないとなぁ」
「? 春になんかあるの?」
 クリシュナの言葉にル・アージュが反応した。
「あぁ、精錬祭がきたらトレジャーハントあるかなぁ? ってね」
「去年あったね」
「そ。それがあったら春には装備そろうかなぁ? ってね」
 金策については珍しいクリシュナの反応。ここまで弱気な発言はル・アージュもヴァーシュも見たことはない。まぁ金額が金額だけに自信がないのだろう。
「まぁ当面は私とルアでなんとかするかぁ・・・」
「そうだね・・・」
「紅茶のおかわりをお持ちいたしました」
 場の空気をみて、フレアが紅茶のポットを運んできた。

「お姉ちゃん、セカンドコスにしたんだ?」
「ん? ギロチンクロスの衣装の事? 前のはごっつかったからねぇ、こっちの方が軽くて動きやすいのよ」
 ネリスは実家でネイの制服を見ていた。
「それよりアンタ、少しは胸大きくなったのかい?」
「え?! お姉ちゃんもそれ言う?」
「だって、ルシア伯母さんと一緒に住んでるんでしょ? だったら伯母さんに胸揉まれてるんだろうと思ってね」
 フフフと笑うネイの視線に、危機を感じてか身をそらすネリス。
「揉まれたら大きくなるものなの?」
「しーらない。私は母さんの遺伝かなぁと思ってるけどね」
 ネリスは姉ネイの部屋で雑談をしていた。
 ベッドの上で妹を見るネイは、恥ずかしがる妹の姿を見て笑っていた。
「おばあちゃんの遺伝が強いか、母さんの遺伝子が強いのか見ものなんだけどなぁ」
 悪びれず妹をからかうネイに、ネリスはちょっぴり膨れ顔になりそっぽを向いた。
「お姉ちゃんもルシア伯母さんに胸揉まれたの?」
「私だけじゃないわよ。母さんもヴァーシュんとこの叔母さんもやられてるわよ」
「え?!」
「ルシア伯母さんにやられてないのって、たぶんおばあちゃんだけよ」
「おばあちゃんもってことは・・・、クリシュナ伯母さんもってこと?」
「揉んだ後げんこつが待ってたけどね」
 二人して笑いあうと、二人の父、リンク・F・シャナがコンコンとドアを叩いた。
「二人とも、ご飯だぞ」
『はーい』
 二人は父の後を追い、食卓へと向かうのであった。
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  by lywdee | 2016-01-05 13:36 | Eternal Mirage | Comments(0)

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