Eternal Mirage(207)

 季節は夏から秋へと変わり、過ごしやすい気温になってきたプロンテラ。
 その城下町を飛ぶ二匹のグリフォン。ロイヤルガードのリューディーとヴァーシュである。
「よし、噴水の前で小休止だ」
 リューディーの一言に頷くヴァーシュ。二人はグリフォンを操り、プロンテラ中央の噴水までおりてきた。
 二人がグリフォンから降りると、二匹のグリフォンは噴水の水を飲み始める。その光景を見ていたヴァーシュは流れるような銀髪をなびかせ、黙ってグリフォンを見ているリューディーの横顔を見つめていた。
 二人は何を話すわけでもなくベンチに腰を下ろすとそこへ、小さな男の子を連れた女性が、男の子に引っ張られるまま噴水の前に来た。
「わー、ぐりふぉんだー」
「これ! 聖騎士様の邪魔になるでしょ!」
「いいですよ別に、うちのグリフォンはおとなしいですから。ロット、いつまでも水飲んでないで撫でさせてやれ」
 リューディーがそう言うと、彼のグリフォンは振り向き、男の子の前で伏せるのだった。
「わー、ふっさふさー」
「すいません、この子のために・・・」
(りゅーさん優しいなぁ・・・)
 男の子はグリフォンに抱き着いたり頭をなでたりして満足したのか、母親と一緒に手を振り噴水から離れていく。
 リューディーは手を振り応えるとやおら立ち上がりグリフォンにまたがる。
「そろそろ衣替えの時期だろ? お前のとこの衣替えが近づいたら言ってくれ。暇にしてやる」
「そんな・・・、無理に合わせなくてもいいですよ」
「そうか? 私は別にかまわんが・・・。それより、12月かららしいぞ。女性だけの部隊作るって話題が本気になるのは」
「え?」
「なんだ、聞いてないのか? 前々から話題にはなってるだろ? お偉いさんたちは男女混合の遊撃部隊から何人かの女性騎士をまとめて再編成するらしい。セクハラを訴える女性騎士も多いらしいからな」
「そうですか・・・」
 ヴァーシュは何故か胸の前でこぶしを握る。何故かはわからないが、胸のあたりが苦しく感じられた。
「お前さんもいつまでも私にくっつけられるのもなんだろ? お互い冒険者として扱いを受けてるとはいえ、女性としての悩みもあるだろ」
「私は・・・別に・・・ゴニョゴニョ・・・」
 視線を外して口ごもるヴァーシュ。リューディーはそれを見てため息をついた。
「私も遊撃部隊の部隊長やらされてるが、城のお偉いさんは冒険者のまま階級をくれるような口ぶりだ。前より自由に動ける機会は減るだろうな」
「私もですか?」
「たぶんな。だからいつでも言ってくれ」
f0158738_10325298.png
「私が師団長に推薦してやる」
「そんな・・・、私なんかが師団長なんて・・・」
「その気がないならしばらくは私にくっつけられるぞ? 遊撃部隊にはそれなりの権限というか、自由があるからな」
「りゅーさんは、私と一緒じゃ嫌なんですか?」
 ヴァーシュは張り裂けそうな胸の内をかかえてリューディーに尋ねた。
「そうは言ってないが、男と組んでるとそれなりの不便さはあるだろ? 現に私だって・・・、いや、なんでもない。それより報告だ。城に急ぐぞ」
「はい・・・」
 こうして二人はプロンテラ城へとグリフォンを飛ばした。
 道中ヴァーシュは、うつむいたままリューディーの後を追う。
(なんだろこの気持ち・・・、わからない)
 自身に目覚め始めた気持ちがヴァーシュを苦しめる。
 理由もわからぬ胸騒ぎが、このあと理解するまでそう時間はかからなかった。

「ごちそう様・・・」
「はいって・・・、どうしたのヴァーシュ? そんなにご飯残して・・・」
「食欲がわかないんです・・・」
 夕食時、ヴァーシュは夕ご飯を残して自室へと帰る。

 パタン

(なんだろこの気持ち・・・? 私・・・、どうかしちゃったのかな?)
 答えの出ない気持ちを抱き、ヴァーシュは鎧を脱いで部屋着になり、バサっとベッドに寝転んだ。
 それまでなんとも思わなかったリューディーとの行動。だが、改めて考えると2年もずっとリューディーの部隊の一員として扱われていたのが、急に師団長へと推薦すると言われ、何かが狂い始めた。
 師団長への推薦の件は過去に何度か言われている。そのときは冗談だと聞き流してきたが、今回は少し本気な気がした。
 ヴァーシュは、自信に芽生えた不思議で不安な思いを理解できぬまま、そのまま眠りにつくのであった。

-翌日-

「今日は警護任務だ。いつもどおり二人での行動になる」
「はい・・・」
 朝から悶々とした気持ちのままヴァーシュはリューディーの後を追った。
 今日の任務はロイヤルガード西方方面部隊長の護衛である。最近になってグラストヘイムで冒険者が倒され続けるという問題が発生して、騎士団か聖騎士団のどちらかを調査に送るということになり、その部隊長を警護するという特別な任務を与えられたのだ。
「どうしたヴァーシュ、顔色が悪いぞ」
「大丈夫です! なんでもありません」
「そうか・・・? ならいいんだが・・・」
 ゲフェンからグリフォンを飛ばしてグラストヘイムへ向かう道中、リューディーはヴァーシュの様子が変だと感じたが、任務中であるため先を急いだ。
 グラストヘイムにたどり着くと部隊長は城と呼ばれる建物の前で勢ぞろいしている考古学者たちと話を始めていた。
 そのあいだリューディーとヴァーシュは、部隊長に言われるがまま周囲の状況を確認するため別行動になった。
(どうしたんだろ? 私・・・)
 心なくグラストヘイム内を歩くヴァーシュ。そんな心境でさまよっていたためか、ヴァーシュは背後から迫る気配を感じられずにいた。
 そしてそのまま迫りくるものの気配が放つ殺気に気付くのが遅れた。
(え?! 深淵の騎士?)
 近づきすぎて反撃の態勢も後退することもできないまま、ヴァーシュは深淵の騎士が放つブランディッシュスピアを間近で受けてしまった。
(殺される!)
 グリフォンから離され、武器も落としてしまったヴァーシュに迫る深淵の騎士。
 だが次の瞬間ヴァーシュの目の前に空から飛びこむ一つの影が光を放った。
「グランドクロス!」
 その影はリューディーだった。
 リューディーの放つグランドクロスで深淵の騎士は倒されたが、同時にリューディーも、深淵の騎士の刃を受けただけではなく、高所から飛び降りたことによる足が骨折してしまった。
「迂闊だぞ、ヴァーシュ・・・」
「りゅーさん! りゅーさん!!」
「このバカたれが・・・」

 結局のところ、調査に出ていた部隊長も収穫のないまま、リューディー達はプロンテラに帰るのであった。
 そのまま休暇を与えられた二人、リューディーは自己ヒールで回復したからいいものの、ヴァーシュは自宅でベッドに顔をうずめて泣いていた。
f0158738_11465283.png
(嫌われた・・・、絶対嫌われた・・・!)
 ヴァーシュは初めて抱いた気持ちが何だったのかを、今はっきりと理解した。
(バカだ・・・、私はバカだ・・・。師団長のことだって、部隊編成のことだって・・・、離れたくなかっただけだったんだ)
 シーツにどんどん染みていく涙。ヴァーシュは深く顔をうずめ、嗚咽が響かないよう、音をたてぬように泣いた。
(りゅーさんのことが・・・、好きだったんだ・・・!)
 ヴァーシュは今、はっきりとリューディーに恋心を抱いてたことに気付いた。
 同時にそれを理解すると、涙があふれて止まらなかった。
(もう合わす顔がないよぉ・・・。どんな顔して合えばいいのさ?)
 ヴァーシュはもう何が何だか分からなくなってきた。自分のせいで傷ついたリューディーに謝ることもできず帰ってきてしまった。それがよけいにヴァーシュの心を傷つけていく。


 その頃男所帯では・・・。

「セラフィー・・・、自分のせいで女の子泣かせたことはあるか?」
「なんだ改まって?」
 リューディーは、工房で鋼鉄を作っているセラフィーに問いかけた。
「俺に惚れてる女の子なんていないさ」
「そうか・・・。私は、泣かせてしまった・・・」
f0158738_12060151.png
「深く考えすぎじゃね?」
「そうだろうか? 私にはわからない・・・」
「とりあえず謹慎中なんだろ? だったら行動すればいいんじゃね。お互い話し合わないと分かり合えるもんもわからんだろ?」
「今は・・・、そんな気にはなれない」
 振り向き自分の部屋に戻るリューディー。
「ふーん、俺にはお似合いのカップルだと思うんだけどなぁ」
 誰もいない工房で独り言ちるセラフィーだった。

 その夜

 コンコン・・・

「リューディー、少しいいか?」
「旦那か? 開いてるよ」

 ギィ・・・

「ヴァーシュを泣かせたそうだな?」
「セラフィーが言ったのか? すまない、旦那に迷惑かけそうだわ」
「事実ならしかたない。ヴァーシュももう年頃の女の子だ。今更おやじ面して何言えばいいのかもわからない」
「面目次第もないよ」
 白鳥は椅子に座ると、リューディーの顔をじっと見て何か考え事を始めた。
 リューディーにしてみれば気まずさ満点なのだが、自分がしたことが間違ってるとか、どうすればよかったのかさえ分からなかった。
「お前なら、娘を任せてもいいと思ったんだがな・・・」
「私がか? 冗談はよしてくれ。こんな不器用、誰が好きになる?」
「そう言うな。これでも既婚者だ。そんな経験何度もしてるよ」
「旦那ぁ?」
「そんな経験できるのはまだ若いってことだ。それで率直に聞く」
f0158738_12233967.png
「お前は、私の娘をどうしたいんだ?」
「・・・」
 黙り込むリューディーの言葉を待つように、白鳥は黙ってリューディーの目を見た。
 リューディーはため息一つこぼして「はぁ・・・」と息を吐いた。
「旦那だから正直に言う。私はヴァーシュを女として見ている。悪く取らんでくれ、ただ、優しいし綺麗だし、そのままだと任務に支障をきたしかねん。でも、それが彼女のためになるかがわからない」
「ふむ・・・。だから距離を置こうとして師団長に推薦してやるって言いたいのか?」
「旦那、どこでそれを?」
「たまたま仕事でプロンテラ内の警護をしていてな。悪いと思ったが立ち聞きしてしまった」
「はぁ・・・、まぁ、その・・・、なんだ・・・。これ以上コンビで任務を与えられたら本当に惚れそうになる。そうなったら遅い気がして、ヴァーシュを遠ざけようとしたのは事実だ」
「なるほどな。ヴァーシュが惚れるのがよくわかる。これでも父親だからな、娘の顔色みれば想像がつく」
「すいません」
「謝るな。私も、お前さんだったら娘を嫁に出してもいいと思ってる。それだけ付き合いが長いってこともあるがな」
 白鳥は微笑むと立ち上がりドアの前に立った。
「娘を幸せにしてやってくれ。ここから先はお前さん次第だ」
 そういって白鳥は出ていくのであった。
(私なんかにヴァーシュを幸せにしてやれるのか?)
 リューディーは窓を開けて暮れ行く空を見つめるのだった。

 翌朝リューディーはプロンテラ南の平原に呼び出された。
「ヴァーシュ、改まってなんだ?」
f0158738_12473064.png
「私、りゅーさんが好きなんです!」
 突然の告白。ヴァーシュは今にも泣きそうな顔をしている。
「嫌われたかもしれない。それでも私の気持ちを伝えずにはいられなかった」
 ヴァーシュの言葉にリューディーは少し戸惑った。まさまヴァーシュも同じ気持ちだったなんて想像もつかなかったからだ。
「本気・・・なんだな?」
「はい、これで振られたら私も決心つきます」
 ヴァーシュが本気で自分の事を好きだと言ったのが鈍感なリューディーでもわかる。
 それだけ自分がヴァーシュを追い込んでいたことが悔やまれる。
「私でいいんだな?」
「はい!」
 涙目になって答えるヴァーシュに、リューディーも男として腹をくくった。
「まぁ、その・・・、なんだ・・・。私からもお願いするよ。不器用なところもあるが、よろしく頼む」
 リューディーの不器用な返答。それでもヴァーシュにはこの上ない言葉だった。
 グリフォンから飛び降り抱き着くヴァーシュ。
 そして二人は、人目もはばからず口づけをかわすのであった。

「よかったねヴァーシュ・・・」
「そうだねぇ」
 誰もいないはずのプロンテラ南の木陰で、一部始終を眺める二人の女性。クリシュナとルシアだった。
 二人はヴァーシュの様子が変だったのに気づいて話を聞き、こうなる算段を立ててヴァーシュに進言したのだ。
「帰るよ。二人の邪魔はできない」
 そう言ってクリシュナはワープポータルを出し女所帯へと帰っていくのであった。

[PR]

  # by lywdee | 2017-10-03 13:02 | Eternal Mirage | Comments(0)

RO冒険日記

 やほー、南の住人「しゅなち」ことくりしゅなです。

 28日から課金切れていたのでラグホでの週末を過ごしてました。

 まずはF鯖からのss処理していきます。

f0158738_00465399.png
 これは日曜の昼から転生マジ育ててた1枚。

 お友達にジョブ@3Lvって言ったら、兄貴村行こうって事になり、トレインしてたのをファイアーボールでまとめ狩りしてました。

 質より量の狩りですね。20分ほどでジョブカンストしました。

f0158738_00501674.png
 そしてめでたく教授に転職。
 このときはじめて気づいたのが、装備ろくにつけてない半裸状態だったこと・・・。

 どうりで被ダメは大きい、与ダメ低いはずでした。倉庫見たらサバ杖あったので間に合わせに装備しました。
f0158738_00530559.png
 そして転職後ジオ狩りして初期スキル取ることにしてアルデバラン↑←↑のマップに・・・。

 とりあえず直接の攻撃力アップのために、ダブルキャスティング取ってメモライズ取って、そんなことしてたらベースが75に・・・。

 エクラ支援切れたところで男垢は終了。

 この後読み切り小説の挿絵撮影のため謗法歩き回って撮影してきました。

 -ここからB鯖-

f0158738_01010749.png
週二の挨拶、さやとん(うるはちゃん)とのブログ見たの挨拶。多分先週の火曜日だと思う。

f0158738_01030147.png
 そして今日(日付上は昨日)あまみんと会ったらブログ見てくれてたようだ。

f0158738_01042684.png
 ・・・でもって日曜、Gvの前にさやとんのブログ見た挨拶。一人称変えても私の事を「しゅなち」と呼んでるのでバレバレ。
f0158738_01073702.png
 これはお試しで生体3に行った一コマ。生体3に行くなんて・・・、合併前のG狩り以来だ。この後初の生体4に行ったんだけど・・・。

f0158738_01094208.png
 見事に焼かれました。

 まぁそんなわけで予定より1日早くRO戦記の更新でした。

 溜まったssは順序だてて更新しないと増えてくし、ラグホ終わったから男垢&サブ垢のキャラを小説の挿絵にするにはまた次のラグホ来てからでしょう。

 とりあえず火曜のメンテ時に小説の方更新したいと思います。

 では明日。

[PR]

  # by lywdee | 2017-10-02 01:16 | RO戦記 | Comments(0)

GOGOぱるちゃん

 やほー、涼しくなってきたね。南の住人「しゅなち」こと、くりしゅなだよ。

 今週は挿絵になるss撮るためF鯖にけっこう行ってました。

 そのため小説のネタが男垢からも誰か撮るために休止しました。なのでほったらかしにしてたssの処理です。

f0158738_11523670.png
 まずは南にてさやとん(うるはちゃん)との恒例の挨拶。

 お互い何かしらssに撮ってはブログにさらしております。

f0158738_11573851.png
 これは多分、B鯖でのジタバグかな? 連れてってもらった記憶がけっこうあいまい。日記さぼるからだ、きっと・・・。

f0158738_11594921.png
 これもB鯖のマラン。たぶん6点盛り・・・のはず? 

 Lv上がってるから多分B鯖だろう。

f0158738_12013926.png
 これは日課にもなってるABのドルc狙いの狩りだ。

 昨日根性入れて220発くらいME張った後、ジュデックスで焼いたやつだ。お前じゃない! お前じゃないんだ・・・。(ノД`)・゜・。

 南で話してたら知り合いが800kで買ってくれました。

 他にもWLで監獄行ってシャアc狙ってるんだけど、どうにも動きが鈍い。まだWL慣れてないのさね。それでも監獄はオリもでるから練習にはもってこい。
 でも油断するとすぐ寝転びます。ポタ屋かGHポタもちの人がいないと行ってません。遠いから(出不精)。

 朝、修羅でサラの記憶行ったんだけど、まさかLv上がるとは思っていなかったのでss撮り忘れ。何にもしてないのに106になった。

 なんかしたっけ? (´・ω・`)って感じです。

 それでは多分来週は小説書くと思う。挿絵付きになってから取材でいろいろ行ってるし、男垢からも誰か出したいのでラグホの後になる。まぁお目汚しな小説なんで、生ぬるい眼で見守って!

[PR]

  # by lywdee | 2017-09-26 12:11 | RO戦記 | Comments(0)

Eternal Mirage(206)

 季節は夏から秋へ、ゆっくりと変わりつつある今日この頃、女所帯の面々はそれぞれの思いにはせていた。
 中でもル・アージュは、朝からルシアに出された課題に取り組んでいた。

f0158738_10204641.png
「難しー」
 ソファーに座り魔導書を見ていたル・アージュ。対面にいたルシアは出かけている。
「ル・アージュ様、紅茶のおかわりをお持ちいたしました」
「ありがと、フレアさん」
 紅茶を口にしながらも課題である魔導書を自分なりに理解しようとする。
 魔力の上昇。それはル・アージュにとっても重要な課題である。
 純粋な魔力の上昇、それは物理的にもオートスペル的にも重要だからだ。ましてやル・アージュは父親と違って力はそれほど高くない。唯一上回ってるのは魔力ぐらい。
 それはエンチャントブレードにも効果のある資質。物理攻撃に端を発し、オートスペルで追撃する。今のル・アージュは完全に父との相反する攻撃スタイルになっていた。
「難しーよー・・・」
「それでも読めるだけ偉いわよ」
 ル・アージュの勉強姿に素直に褒めるクリシュナ。クリシュナはル・アージュの背中越しに魔導書を見てみる。
「ダメだ・・・、ぜんぜんわかんない」
「今日の課題、わかるところはわかるんだけどね。肝心な部分が難しくて・・・」
「ルシアはどこ行ったんだか・・・? 仕方のない妹だわ。ルア、私の部屋入ってルシアの本棚から参考になる物でも探したら?」
「そうさせてもらいます」
 ル・アージュは立ち上がってそのままクリシュナの部屋に向かってく。

 クリシュナの部屋はルシアと兼用なので割と広い。その中でびっしりと詰まった本棚に対峙するル・アージュ。

f0158738_10402163.png
「参考書は・・・っと」
 本棚には魔導書、文献、動物学などが詰まっている。
「あ、これだ! 魔力の流れ、武器に込める魔力編。これでいいはずだわ」
 棚から1冊の本を取り出すと、コンコンっとドアを叩く音がした。
「ルシア叔母さんならいないよー」
「そうですか」

 ガチャ

「失礼します」
「フレアさんどうしたの?」
 ドアをあけて入ってきたのはフレアだった。その腕には新しいシーツを抱えている。
「シーツの取り換えに参りました」
「私は出てくから空けといたままでいいよ」
 そう言ってル・アージュはクリシュナの部屋を後にした。

 居間に戻るとクリシュナの姿がない。ル・アージュはまた迷宮の森にでも行ったものだと判断する。
 ソファーに座り、参考書片手に課題の魔導書を読み始める。
 魔力の流れ、オートスペルの構築と発動。ぼんやりとしか理解してなかった課題の魔導書の中身が参考書とともに読み進めるうちに少しずつ理解していく。
 時には魔道剣片手に意識を集中したり、簡易的なエンチャントブレード試したりと無口になっていく。
 今現在のル・アージュの戦闘スタイルは、オーラブレード+コンセントレイション+エンチャントブレードで物理攻撃を強化、ツーハンドクイッケンで手数を増やし、魔道剣と悪霊糸でのオートスペルによる追撃がメインの戦い方だ。無論魔力は高まっているのでエンチャントブレードの攻撃力強化もバカにはならない。
 回復剤も用意してればバリオフォレストのブギスギス相手でも遜色ない戦い方を見せる。その上予備として持たされたブリューナクの効果でヒールの回復量も、クリシュナ、ヴァーシュのように極めた二人のそれに匹敵する。あとは素早さを上げれば回避率も高くなり、ソロでの戦闘でも困らない実力が証明している。

 ガチャ

「ただいまー」
「おかえり、ルシア叔母さん」
「お、だいぶ読み進めたみたいね?」
 ル・アージュの呼んでる魔導書のページ数を覗き込むように腰を曲げるルシア。
「それが読めるってことは、あんたもオートスペル型セージの上をいってるわよ」
「それって誉め言葉?」
「そうよー。セージの使うオートスペルはだいたいLv3クラスのボルトの威力。だけどあんたは魔道剣の効果でLv5クラスのボルト系ダメージ与えられるからねぇ」
 ルシアが対面のソファーに腰を下ろすと、タイミングよくフレアが紅茶を用意して持ってきた。
「あーーーーーーーーーーーー! やっと読み切れたー」
「はいおしまい。あとは少しでも実践して魔力上げてね」
「はーい・・・」
 気のない返事を返したル・アージュは、机に突っ伏すとため息ひとつ漏らすのであった。
 そんなとき、玄関から声が響いてきた。

「ル・アージュ殿! ル・アージュ殿は居られませんか?!」

「なんだろ・・・?」
ル・アージュが玄関を開けると、そこには伝令の騎士がいた。
「私に何か?」
「騎士団長からの招集です。騎士団詰め所まで来てください!」
「・・・わかりました」
 ル・アージュはそう言うと厩舎のドラゴンを離し、飛び乗ると急ぎ騎士団詰め所まで走らせた。

「おおー、よくぞ来てくれた!」
「団長、私をご指名されたようですが、何用で?」
「話は長くなるが簡潔に言う。ポートマラヤに向かい、バリオフォレストにて遭難中の1個師団からの伝書鳩で、支援型のアークビショップを伴い救出されたしとの一報を受けた。そこで前回の遠征で成績の良かった貴殿に向かってもらおうということになった」
「それならもう1個師団を出せばよいのでは?」
「それなんだがな、遭難した1個師団には密命があってあまり多くの騎士団を派遣できんのでな、今はポートマラヤに1個師団を送るには時が悪すぎる。そこで冒険者を装い秘密裏に救出してほしいのだ」
「はぁ・・・、それでは・・・」

f0158738_11321614.png
「大聖堂詰めのファ・リーナ・フラウディッシュ・シャナを同伴させてください」
「む? それはいいが、支援アークビショップなのだな?」
「はい、姉妹なら怪しまれないと・・・」
「・・・。わかった、すぐにでも呼び出そう。貴殿は準備ができ次第大聖堂まで行ってもらおうか。そこで合流してもらう」
「はい」

「バリオフォレストかぁ・・・、家に帰って火の魔道剣取ってくるか・・・」
 ル・アージュは詰め所を出るとドラゴンにまたがり、一路女所帯を目指した。
「あらおかえり。どっか行ってたの?」
「ちょっと緊急の任務でね、これから出かけるとこ」
 女所帯の帰り道で、ル・アージュはクリシュナと鉢合わせした。
 ル・アージュは一度厩舎にドラゴンをつなぐと、急ぎ家の中に入り自室へと駆け上がった。
 そして部屋の片隅に立てられた2本の魔道剣のうち、柄の赤い魔道剣を手にして腰に携えた。
「じゃあ行ってくる!」
 そう告げるとル・アージュは、また厩舎からドラゴンを連れ出し大聖堂へと走らせた。
 ドラゴンを外につなぎ、ル・アージュは大聖堂の奥へと歩いて行く。厳かな雰囲気に身震いするル・アージュの前に、蒼いロングヘアーのアークビショップが立っていた。
「お姉ちゃん!」
 ル・アージュが声をかけると、アークビショップが振り向いた。
「ルア! あなたが私を指名してくれたの?」
「うん。ちょっと訳ありの任務だし、お姉ちゃんなら支援だから助かるし、他のアークビショップつけられるのは嫌だったから・・・」

f0158738_12095614.png
「嬉しかった。ルアに必要とされたから・・・」
「話は聞いてるよね?」
「ええ。お姉ちゃんに任せなさい」
 こうしてファ・リーナと合流したル・アージュは、東門のカプラ職員のサービスでアルベルタへと向かった。

「船で行くの?」
「そ、表向きはあくまで冒険者ってことにしてるからね」
 船着き場までくると二人はポートマラヤ行の船に乗った。時折風に混じって飛んでくる潮風が心地よい。
 二人は船べりに背を当て座った。
「遠征以来ね、ルアと一緒になるのも」
「そうだねー」
「でもいいの? 私なんかより渚先輩の方が冒険者としては上よ?」
「んー。レイさんでもよかったんだけど、私としては気を遣わない分お姉ちゃんのほうが嬉しい」
「ありがと」
 そうしてとりとめのない会話を続けていたら、船はポートマラヤにたどり着くのであった。
 ル・アージュはドラゴンの背にファ・リーナを乗せると、怪しまれない程度に急いで森へと向かって行った。
「遭難場所はわかってるの?」
「伝書鳩には北の海岸沿いにいるって話だったわ。お姉ちゃんサポートよろしくね!」
「うん」
 そうして二人はゆっくりと北上していった。時折現れるモンスターは、支援してもらってるル・アージュによって駆逐されていく。
 ファ・リーナも、渚 レイが教えてくれたダメージをブーストさせるスキルでル・アージュをフォローする。
 ブーストスキル、それはオラティオで聖属性耐性を下げ、アスペルシオでル・アージュの魔道剣に聖属性を付与させ、オーディンの力で攻撃力を更にあげるというもの。それは攻撃重視のル・アージュにしてみればうれしいフォローで、自身のブーストスキル、オーラブレイド+コンセントレイション+エンチャントブレードと、防御を無視したスキルで物理攻撃力を上げることだった。
 ル・アージュにしてみれば、支援があるとわかってる分、多少囲まれてもオートスペルと姉のフォローもあることから、多少無茶しても少々急いで北上していった。
 数分後、二人は北の海岸沿いの岩場に上がっていた。すると、端の方で手を振る騎士団が見えた。
「騎士団からの使者です、大丈夫ですか?」
「ああ、うちのアークビショップがやられたうえに囲まれて負傷した騎士も数人いる。早く手当てを・・・」
「わかりました。お姉ちゃん!」
 ファ・リーナはまず倒れたアークビショップに回復スキルをかけてなんとか動けるようにした。あとは負傷兵を二人のアークビショップがそれぞれ回復させていく。
「密命があると聞いたんですが、任務は続行できますか?」
「回復さえしてくれれば、あとは我々だけで対処できます」
「そうですか。頑張ってください」
 小一時間回復に回っていたファ・リーナも一息ついたのか、肩を落としてため息一つついた。
「お姉ちゃんお疲れ」
「ふぅ、疲れたわ」
 額の汗をぬぐったファ・リーナは立ち上がってル・アージュのドラゴンに背を預けた。
「救援感謝です。あとは我々だけでなんとか任務を完遂できます」
「そうですか。これ、念のため預かった支給物資です。受け取りを・・・」
「ありがとうございます」
「じゃあお姉ちゃん、ポタよろしく」
「はい」
 こうして任務の終えた二人は、ファ・リーナのワープポータルでプロンテラへと帰ってきた。

f0158738_12541076.png
「お姉ちゃんが一緒でよかった」
「ルアにそう言ってもらえると、頑張った甲斐があったわ」
 帰り際ル・アージュはファ・リーナの住んでる家の前にいた。
「どうする? お母様に会ってく?」
「いんや、任務の報告もあるし、おやじがいないとしても勘当された身。年始でもないのに帰る気にはなれないわ」
「そっか・・・」
「じゃ、私詰め所に戻らないといけないから。もう行くね」
 一瞬寂しさが顔に現れたが、ル・アージュはファ・リーナに背を向けごまかした。
 そしてル・アージュは騎士団詰め所に戻り報告すると、一人女所帯へと帰るのであった。

[PR]

  # by lywdee | 2017-09-19 13:00 | Eternal Mirage | Comments(0)

Eternal Mirage(205)

 季節は夏から秋になり始めていく中、女所帯の面々は常夏の観光地「ブラジリス」に来ていた。
 理由は簡単、今年はまだ海に行ってない。ただそれだけだった。
 だが、喜ぶ女所帯の面々の中で、一人だけ仏頂面でやる気のない者が一人いた。

f0158738_11481911.png
「伯母さん泳がないの?」
「私は泳げないって言ってるでしょ!」
 そう、自他ともに認める金づち、ルシアだった。
 ネリスの言葉に怒気を見せ、一人波打ち際に一人用エアベッドのようなものを膨らませ、その上にゴロンと横になっていた。
(まったく・・・、何が楽しいのやら・・・)
 不機嫌なまま潮風を頬に受け、ルシアはそのうちうとうとと眠りにつくのであった。

「ヴァーシュ、また胸が大きくなったんじゃない?」
「そ、そうかしら?」
 ル・アージュはヴァーシュの水着姿を見て、自分の胸と比較した。
 ビキニから零れ落ちそうなヴァーシュの胸を見て、ネリスはおもむろにヴァーシュの胸を触らせてもらい今度は自分の胸を触る。すると何故か涙目になって離れるのであった。
「あの子、まだあきらめつかないのか・・・」
 ル・アージュとヴァーシュは、ネリスの後を追い慰めるがネリスは機嫌が悪いのかそっぽを向いて、「羨ましくなんか・・・、ないんだからね!」と強がって見せていた。
「まぁそれは置いといて、みんなでアイス食べに行こ!」
 ル・アージュはネリスの手を引き立たせると、ヴァーシュと3人で中心街まで向かうことにした。
「ねぇルア姉、ルシア伯母さん寝てるけど、ほっといていいの?」
「起こすのも悪いからね、それにクリシュナ伯母さんもいるもの。大丈夫でしょ?」
 こうして若い3人はブラジリスの中心街まで歩いて行くのだった。

 それから数分後、中心街のベンチで腰を下ろし、若い3人は談笑していた。
 そこへ現れたのがクリシュナとフレアの二人がきた。
「あれ、ルシアと一緒じゃなかったのか?」
「へ? ルシア叔母さんなら海岸に・・・」
「え、いなかったわよ? てっきりあんたたちとぶらぶらしてるものだと・・・」
「・・・」
『まさか!?』
 5人ははっとして海岸に急ぐ、しかし波打ち際で寝ているはずのルシアはそこにいなかった。
「伯母さんアレ!?」
 ネリスが海岸に漂うエアベットを見つけた。その上にルシアの姿はない。
 5人は慌てて海に入り、エアベットのある海域に急ぎ泳いだ。

f0158738_12175649.png
 ブクブクブク・・・。
「いた! この下よ!」
 ルシアを見つけたクリシュナがヴァーシュとル・アージュを呼び、数分後なんとか波打ち際まで引き上げるのだった。
「ルア、心臓マッサージを。ヴァーシュは腹を押して海水を吐き出させて!」
 クリシュナはル・アージュとヴァーシュに指示を出し、自身はルシアの鼻をつまんで人工呼吸を始めた。
 時折吐き出される海水。結構飲んでるように見えた。
 多分ではあるが、波打ち際で寝ていたルシアは、満ち潮で沖へと流されていったのであろう。

「ひどいじゃない! みんなで私の事忘れるなんて・・・!」
「いやー、満ち潮の事まで考えてなくて・・・」
 クリシュナは申し訳なさそうに笑顔を作るが、ルシアは涙目で背を向け、膝を抱え込んで座っていた。
「ルシア様、替えの下着とソーサラーの服です。お着替えにならないと風邪をひきますわ」
 フレアはルシアに着替えの入ったバックを手渡す。何かあったらと、ルシアは一応着替えを用意していたのだ。
 ルシアは黙ってそれを受け取ると一人着替えに歩いて行くのであった。
f0158738_12325724.png
ジャー・・・。

「ひどい目にあった・・・」
 ルシアは着替えを済ませトイレにいた。
 よもや溺れるとは思ってもいなかったのだろう。
「これだから海は嫌いなのよ!」
 一人ブツブツと文句を言いながら更衣室を出ていくのであった。
「おかえり伯母さん」
「ただいま。姉さん、私帰りたい」
 ネリスのお迎えに頭をなでなでするルシア。
 クリシュナ達も着替えを済ませていたので、全員そろってることを確認してワープポータルを出した。

 プロンテラに帰った後もルシアの機嫌は治らなかった。放置されたことがよっぽど腹に据えかねていたのだろう。
「ルシア様、紅茶です」
 居間で文献をあさっているルシアの前のテーブルにフレアは紅茶を置く。
「悪かったって言ってるでしょ? まだ怒ってんの?」
 クリシュナも対面のソファーに腰を下ろしていたが、ルシアはジト目でクリシュナを見つめる。
「本当にそう思ってる?」
 紅茶を飲みながらも、ルシアの機嫌は悪かった。
「私たちも起こすの悪いかなー? って・・・」
「すいません伯母様、まさか流されてるなんて思いもよらなかったもので・・・」
 ル・アージュとヴァーシュもルシアに謝る。
 するとルシアは、やおら立ち上がりネリスのカートに借りてきた文献をすべて乗せた。
「ネリス、図書館に付き合って」
「いいよー」
 こうして二人はプロンテラの中心へと歩いて行った。

「伯母さんまだ怒ってんの?」
「別に・・・」
 表情からはわからなかったが、ネリスはルシアの機嫌がまだ悪いと思った。
 図書館に入ってからは少し機嫌がよくなったのか、ルシアは一人図書館の奥に入っていく。
 ネリスも何回か来ているところなので、カートに積まれた文献や本を受付に返していく。すべて返した後はルシアの後を追って図書館の奥へと向かって行った。

f0158738_12553881.png
 ルシアは魔導書などの文献や本を見繕って、時には手に取って呼んだりしながらネリスを待っていた。
「次のルアの課題、何にしよ・・・」
 本に囲まれたことでルシアの機嫌は少し良くなっていた。
「これとこれならルアの魔道剣に力を与えてくれそうね。もうちょいルシアの魔力を上げる課題になればいいんだけどなー」
「伯母さんお待たせ」
「うん」
 ネリスのカートにあれもこれもと本と文献を積むルシア。当然自分の読む物も積んでいる。
「これって、全部ルア姉の課題?」
「私の知的好奇心を満たす物も混じってるけどね」
「ふーん」と積まれた本を開いてみるネリス。だが彼女にしてみれば何書いてあるのか全然わからないものばかりであった。
「これってルア姉読めるの?」
「そうよ。あんたも勉強する?」
「遠慮しときます」
 ネリスの言葉に「ふふふ」と笑うルシア。本に囲まれたことで機嫌がよくなっているようだ。
 そうして数分後、カートに積まれた魔導書なりの本と文献を受付で確認してもらうと、ルシアはネリスのワープポータルで女所帯へと帰っていくのであった。

 夏は終わりを告げ始めるのであった。

[PR]

  # by lywdee | 2017-09-12 13:08 | Eternal Mirage | Comments(0)

SEM SKIN - DESIGN by SEM EXE