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Eternal Mirage(36)

 その日ネリスは、真夏の日差しに溢れたモロク近郊の砂漠地帯にきていた。
「ふぅ・・・、暑いよぉ・・・」
 遺跡にできた日陰に入り、腕で額の汗をふき取ると荷袋から水筒を取り出しゴクゴクと飲みはじめる。
「早くサソリの尻尾300個集めないと水分なくなりそう・・・」
 ルシアにコンバーターの材料は自分で集めろと言われ、久しぶりに狩りに出たネリスだが、砂漠の猛暑に思うようにサソリに出あわず尻尾の収集に時間がかかっていた。
 以前はちょうどいい砂漠地帯にプロンテラから行けたものだが、いまやモロクを脅かす魔王のせいで狩場が遠くなり、モロクまで出向かないとスコーピオンのいる砂漠地帯にこれなくなってしまったのだ。
「魔王の馬鹿ヤロー」
 そんなネリスの叫びもむなしく響き渡る。
 それからの小1時間ほどで日差しもだいぶ弱まり、なんとかサソリの尻尾を300個集め終わった頃には夕日がまぶしいそんな時間になっていた。
「あとはスクロールだけだ・・・」
 半日砂漠を歩き続けていたネリスの服は猛暑のおかげでびしょ濡れになっていた。それでも本筋の狩場で狩りをするために、ちょうどキャンペーンが始まってるアルベルタへと飛ばしてもらい、そこからジュノーへと再度飛ばしてもらう。
 そしてジュノーでスクロールを調達すると蝶の羽を使いプロンテラへと舞い戻ってきた。
「あら奇遇ね。ネリスも今帰り?」
 家のドアに手をかけたその瞬間、背後より聞きなれた声が響いた。振り向くとそこには土埃まみれのクリシュナが立っていた。
「あんたも随分汚れたものね。久しぶりじゃないの? そこまで汚れて帰ってくるの」
「うん・・・、シャツがべとべとで気持ち悪い」
「たまには一緒にお風呂にはいろうか?」
 ネリスの返答を聞かずに家のドアをあけ中に入るクリシュナ。そして中からお決まりの言葉が飛んでくる。
「クリシュナ様! 着衣が汚れたまま入るときは私に一言かけてくださいとあれほど・・・」
 フレアの怒声が家中に響く。
「わかってるって・・・」
 そう言いながらクリシュナは玄関でチャンピオンの着衣を脱ぎ始める。そしてあとから入ったネリスの服も強引に脱がしてしまった。
「洗濯よろしく! お風呂の方は準備できてるよね?」
 クリシュナから二人分の着衣を受け取ったフレアは黙って頷く。
「ネリス、さっさっとお風呂入るわよ」
 有無を言わさずネリスを引っ張っていくクリシュナ。女所帯ではこんな風景も珍しくはない。

「フレア、姉さん帰ってきてる?」
 ルシアが家に帰ってきたときにはもうどっぷりと陽が沈んだ後だった。
「クリシュナ様でしたら、先ほどからネリス様とご入浴中でございます」
 クリシュナとネリスのものと思われる選択物をかかえ、帰宅したルシアの問に答えるフレア。
「そっか・・・、じゃあ私も便乗しよう! ずっと座りっぱで腰が痛くて痛くて・・・」
 そそくさと家の奥へ入っていくルシア。それを見送ったフレアは居間で一番日当たりの良い場所にクリシュナとネリスの服をかけていく。

 その頃男所帯では・・・。
「レイのビレタが10個キープしたはいいが、勝算はあるのか?」
 リューディーがセラフィーに問いかける。
「あいつのおかげで+7サークレットが2つ出来たんだ、なんとかなるだろうよ? 問題は・・・」
「エルニウムか」
 リューディーの答えにタバコをふかしながら無言で頷くセラフィー。
「でも、クリシュナ叔母さんが廃鉱通うようになったから、こっちである程度は提供できるわよ?」
 ル・アージュが工房の片隅の椅子に座りながら話にはいる。隣で座るヴァーシュも頷いている。
 二人は武器の点検をかね、セラフィーに手入れを頼みに来ていたのである。
「まぁ先立つものは資金の方なんだがね・・・。よし! 二人とも、手入れは終わりだ。あんまり派手に切り続けんなよ」
 トライデントとクレイモアを受け取る二人。こころなしか笑みが浮かぶ。二人の笑顔がブラックスミスのセラフィーの清涼剤のように思うリューディーであった。

  by lywdee | 2009-09-01 17:11 | Eternal Mirage

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