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Eternal Mirage(74)

 春の長雨もおさまり、プロンテラは初夏の気温に包まれていた。
 そしてここ、女所帯も衣替えの季節をむかえ、フレアの指揮の元あれやこれはと右往左往しながら賑やかに衣類の移動をしていた。
「ヴァーシュ様の夏服はこちらです! ル・アージュ様冬服はこちらに置いてください!」
 フレアは納戸の入り口でそれぞれの衣類を持ち出しては中へ、夏服は外へとせわしなく動いている。この辺は手馴れた動作を見せる。
 そうして数時間が経ち、衣類の移動が終わるとフレアはようやく納戸から出てきてホッとため息をついて厨房に入る。
「疲れたー」
 ル・アージュが居間のソファーに倒れこむように横になると、対面のソファーにはヴァーシュとネリスが腰を下ろした。
「これで衣替えは終わりね」
 ヴァーシュも疲れた様子だがル・アージュほどだらしない格好ではない。ネリスに至ってはソファーの肘掛を枕に横になっている。
「いい若いもんが揃って衣替えぐらいで情けない。もうちょっとしゃきっとしなさいな」
 両手を腰に構え、姪のだらしなさに呆れるクリシュナ。ため息をつきながら3人の姪に叱咤する。
「はーい」と生返事でソファーに座りなおすル・アージュとネリス。
 数分後には昼食が出来たとフレアの声が居間まで届いてくる。
 少々遅い昼食ではあるが、4人は食卓につき並べられた料理を食べ始める。
「ルシア叔母様は?」
「ルシアならまたジュノーに出かけて行ったわよ。アレは衣替えするほど私服持ってないからねぇ」
 クリシュナが淡々と喋る中、噂の主が「ただいまー」と女所帯に帰ってきた。
「あら、早かったわねぇ。夜まで帰ってこないと思ってたのに・・・」
「肝心な本が貸し出し中で、仕方ないから帰ってきた」
 意外そうな反応を示すクリシュナをよそに、ルシアは食卓にもつかずクリシュナの部屋へとまっすぐ進んでいく。
「お昼はどうするのさね?」
「いらない。夕方まで寝てる」
 淡々とした口調でクリシュナの部屋に入るルシア。徹夜でもしたのかそうとう眠たそうではある。
「相変わらず本の虫なんだから・・・」
 姉妹であることから小さい頃からルシアを見ているだけあって、クリシュナの言葉は呆れ半分ではあるが、妹の性格も熟知しているだけそれ以上何も言わなかった。

 そして夕方。

「ヴァーシュ、ルシア叔母さんって一体何を調べてるんだろうね?」
「さぁ? 私たちがわかるものじゃないことは確かね」
 ヴァーシュとル・アージュは夕食まで時間があるので先に風呂に入ることを選んでいた。話題は当然ルシアのことである。
 ルシアが女所帯に来てからというもの、二人はルシアが居間で本を読んでいるところしか見ていない。それ以外は御飯を食べているか図書館に行ってるかのどちらかで、狩りの話なんて聞いたこともない。
「ヴァーシュ姉! ルア姉! 私も入るねー」
 突然ネリスが浴室に入ってきた。この3人が揃って風呂に入ることなど珍しいが、ごく稀に入ることがある。
 ネリスは浴槽に入ると先に湯に浸かっているル・アージュがネリスに尋ねる。
「ルシア叔母さん起きたの?」
「まだ寝てるよ」
「そっか・・・、だから夕食まだなんだ」
 ル・アージュは浴槽から出るとヴァーシュの横に座る。
「背中流してあげるよ」
 体を洗うヴァーシュの横についてタオルを受け取るとル・アージュはヴァーシュの背中を洗い始めた。するとネリスも浴槽から出てタオルに石鹸をつけ始め、ル・アージュの後ろに座った。
「ルア姉は私が洗ってあげるー」
「あら、気が利くじゃない」
 こうして三人で体の流しあいをしながらもやっぱり話題はルシアのことが浮かんでくる。
「ネリスは留守番多いからルシア叔母さんが何してるか見ているんじゃないの?」
「うーん、本読んでるところしか見たことないなぁ・・・。たまに狩りに出るっていうけどすぐ帰ってくるし、家にいる事の方が多いよ」
「そうなんだ」
 こうしてそれぞれが背中を流し合い、時間も経って風呂から上がると厨房からいい匂いが流れてくる。どうやら夕食が出来たのだろう。
 食卓にはすでにルシアがクリシュナと囲んでいた。風呂上りの3人も食卓につくとフレアが食事を運んでくる。
 謎多きルシア。彼女が狩りをする姿が思い浮かばない3人であったが、何をそんなに調べているのか深く追求する気が起きない現実に、3人はただ用意された夕食を食べるだけであった。

  by lywdee | 2010-05-25 11:55 | Eternal Mirage

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