Eternal Mirage(108)

 ここはオーク村の東、険しい丘の広がるハイオークの生息する場所。ヴァーシュは転生への追い込みのため単身槍を持ってやってきていた。
 ペコペコを巧みに操り、迫ってくるオークどもをなぎ倒していくが、人気の狩場のためか騎士やブラックスミスがよくすれ違う。その分ヴァーシュが目的とするハイオークとの遭遇率は減っている。まとめて倒せる騎士やBSが連れ歩いているせいでもある。
「スピアクイッケン!!」
 それでも数の多いハイオーク相手に、囲まれないよう各個撃破していく。
 父親の言うように視野を広げ、周囲を囲まれないように冷静に対処していくヴァーシュだったが、ここにきて体力の消耗に苦戦を強いられている。
 自身の傷はヒールである程度回復できるが、取り囲まれると目も当てられない。だからヴァーシュは無理にハイオークの群れに突っ込まず、2~3匹引き寄せては倒すという戦法をとっていた。
 ただ、ハイオークだけならいいのだが、ここには厄介なオークアーチャーが存在する。嫌われているのかまとめ狩りをする騎士たちも手を出していないせいで遠間からの遠距離攻撃がペコペコの足を止めさせる。
 また、オークレディやオークウォリアーも厄介な相手だ。強くはないがハイオークに混じって攻撃されるとどうしてもペコペコの足を止められる。
 転生経験者のリューディーとクリシュナに言わせてみれば、オーラロードは我慢と無理しないことと助言を受けているので、ヴァーシュ自身に焦りはない。むしろ道程が長いのでテンションを維持して狩りをしていく方が正直つらい。
(叔母さんたちが通ってきた道、私も負けてられない!)
 気を奮い立たせてはハイオークを狩っていくヴァーシュだったが、収集品も回収しているため、バーサークポーションを3つ使い切る頃には重量がかさんでプロンテラに帰らなくてはならない。
 今日もその重量がかさんだため、ヴァーシュは一区切りつけるために蝶の羽を使いプロンテラへと帰る。
 カプラサービスに戦利品を預け、必要な消耗品を補給したところでヴァーシュは一度女所帯に帰ってきた。
 いくら急所を狙って狩りしてるとはいえ、鎧やペコペコに返り血がびっちりついている。ヴァーシュはペコペコの返り血を落とすために、井戸から水を汲んできては丁寧にペコペコを拭いていく。自身の鎧もついでに拭いていくが、鎧下の衣服にまで染み付いた返り血は多少乾いてしまっているせいでなかなか落ちない。
 仕方なく女所帯に入ると、脱いだ鎧と鎧下の衣服を持って自室へと帰ろうとする。
「ヴァーシュ様、鎧下はここに置いていって下さいませ」
 玄関から入ってきたヴァーシュをフレアが呼び止める。もちろん洗濯のためだということは承知していた。
「おかえりヴァーシュ」
 居間からクリシュナが声をかける。どうやら今日は狩りに出かけていなかったようだ。
「返り血かい? 私らのオーラロードには無縁だったからなぁ」
 リューディーもクリシュナもオーラロード中の狩りで返り血を浴びることはなかった。何しろ相手は亡霊か砂の塊であるからして返り血なんぞ持ってる相手ではなかった。
「・・・で、どうなんだい? 順調に狩りしてるの?」
「おかげさまで。でも転生まではまだまだですわ」
「ま、焦る必要はないさね。気長にがんばりなさい」
 クリシュナの言葉が終わるとヴァーシュは自室へと帰っていく。階段を上り終えるとそこにはネリスがいた。
「ヴァーシュ姉おかえり」
「ただいまネリス。戦利品は倉庫に預けてきたから」
「はーい」
 ネリスはそのまま下へ降りていった。多分戦利品の処分にでも出かけるのであろう。
 ヴァーシュはヴァーシュで自室に入るなり倒れこむようにベッドへ横になった。
 3時間弱の狩りを終え、疲労が一気にヴァーシュを襲う。眠りこそしなかったけれど、ヴァーシュの疲労はかなりのものである。
「お風呂にでも入ろうかしら・・・」
 倒れこんで数秒、ヴァーシュは立ち上がり着替えを用意して1階に降りていった。
「おやヴァーシュ、これから風呂かい?」
 階段から降りてきたヴァーシュにクリシュナが声をかける。
 ヴァーシュは素直に答えるとクリシュナも立ち上がり、「ちょっと待ちなさい」と自室へと戻って着替えを持ってきた。
「たまには一緒に入るわよ」
 そう言うや否や、クリシュナはヴァーシュの手を引いて浴場へと歩き出した。
 驚きを隠せないヴァーシュだったが、クリシュナとともにお風呂に入るのはすごく久しぶりのことである。
 そして浴場に入りともに湯船に浸かると、クリシュナはヴァーシュ話しかけたのだった。
「私のオーラロードは資金稼ぎも兼ねてたからねぇ。あんたとは対極的な狩りだったさね」
「私は・・・、資金稼ぎとは言えないけれど、どうなんでしょう?」
「別にいいんじゃない? ネリスが頭抱えてないから元は取れてるんでしょうよ。今はあんたに資金稼ぎ強要していないし、カードも期待されていない。だから今のままの狩場でいいんじゃないの」
 淡々と語るクリシュナ。確かにヴァーシュはネリスからの催促は受けていない。
 そうこうして互いに背中を流し合い、ヴァーシュはクリシュナからオーラロードの話を聞かされていた。
「まぁあんたには転生遅すぎるくらいだし、焦らず狩りして収集品でも集めてればいいんじゃないの?」
「そうでしょうか?」
「そうよ。人気の狩場だし、時間はかかるだろうけど、一歩ずつ着実にオーラロード進みなさいな」
「はい」
「よし、上がるわよ」
 ひとしきり話し終わるとクリシュナとヴァーシュは浴場を後にした。
 ヴァーシュもオーラロードの話を聞いて、肩の荷が下りたせいか表情は明るくなっていた。
(よし、明日も頑張ろう)
 気持ちを入れ替えて、ヴァーシュは明日もオーラロードを進んでいくことになるだろう。着実に一歩ずつ転生を迎えるために・・・。
[PR]

  by lywdee | 2011-01-18 15:56 | Eternal Mirage | Comments(0)

<< なんとか・・・ やっと >>

SEM SKIN - DESIGN by SEM EXE