人気ブログランキング | 話題のタグを見る

Eternal Mirage(112)

 閑静な昼下がり。プロンテラではバレンタインの季節が巡ってきていた。
 毎年この時期になると憂鬱になるのが女所帯のル・アージュである。
(また今年もホットチョコレートの季節か・・・)
 今年はアルベルタでバレンタインのイベントが催されているようではあるが、ル・アージュの興味を引くことはできない。ネリスに誘われアルベルタに出向いたが、はしゃぐネリスとは裏腹に、賑わう街中で一人浮いた感じがしてならなかった。
 そんな感じでプロンテラに帰ってきたはいいが、女所帯では現在ヴァーシュの上位2次職への追い込みのため、毎日ヴァーシュがアルデバランへと出向いていた。
「ただいまー」
 ネリスが元気よく女所帯へ入ると淹れたてのホットチョコレートが2人を待っていた。
(女所帯でチョコレートもないだろうに・・・)
 毎年バレンタインを迎えるたびに思うル・アージュだったが、今日は女所帯の雰囲気が少し違っていた。
「あれ? ルシア叔母さんは?」
 ホットチョコレートを口にしながらル・アージュが居間を見渡す。追い込み中のヴァーシュがいないのはわかるが、いつもなら居間で読書にいそしんでいるルシアの姿が今日はない。
「ルシア様でしたらヴァーシュ様の付き添いでアルデバランへ出かけましたが・・・」
「付き添い? ルシア叔母さんが?」
「はい、何でもジオグラファーの部分駆除だとか申していられましたが」
「部分駆除? なにそれ」
「ジオ密集地の数減らしと変なところに咲いたジオの駆除よ」
 フレアとの会話の最中にクリシュナが居間へとやってきた。
 自身も廃アコ時代にヴァーシュを連れて行った経験のあるクリシュナは、読書で時間を潰しているルシアに自分と同じ事をさせるために付き添わせていたのである。
「まぁ2輪咲き程度ならヴァーシュ一人でも何とかなるだろうけど、それ以上に密集したら一人じゃ狩れないからねぇ。そういったのをルシアに狩らせているのさね」
「へぇー」
「まぁジオ狩り始めたんだから、ヴァーシュがパラディンになる日も近いだろうさね」
「ジオ狩りってお金になるの?」
 ル・アージュが素朴な疑問をクリシュナに投げつけた。
「足代にはなるけど、そんなにお金にはならないわよ」
「・・・にしてはネリスが文句言わないのは何故?」
 そう言って食卓でホットチョコレートを飲んでほのぼのとしてるネリスを見る。
「1次職でお金稼げるなんて思ってないよ。ヴァーシュ姉は転生前にしっかり稼いでるから、今は採算度外視するしかないもん」
「ああ、そういうこと・・・」
 投げかけた質問にあっさり答えるネリスを見て、ル・アージュは明日はわが身かと想像した。
 ル・アージュもホットチョコレートを口にしながら食卓の椅子に腰を下ろした。果たしていつになったら自分も転生できるのだろうかと想像するのであった。

  by lywdee | 2011-02-15 10:07 | Eternal Mirage

<< パラディンになれました! すくすくと・・・ >>

SEM SKIN - DESIGN by SEM EXE