Eternal Mirage(121)

 春の陽気が温かいプロンテラの昼下がり、天気もよく女所帯ではフレアが全員のベッドのシーツを干している。中ではネリスが昼食で出されたパンケーキを食べつつニコニコと真新しいチンクエディアを見つめていた。
「なんか嬉しそうだね?」
 そんなネリスを見つめながらル・アージュが呟く。
「チンクの過剰が一発でできたの。今度は何特化にしようかなぁって・・・」
「あら珍しい、あんたが過剰成功したんなら雨でも降るんじゃない?」
 冗談めいた台詞で外を見るル・アージュ。
「そういえばルシア叔母様がいないようだけど・・・?」
 いつもなら居間で本を読んでいるルシアの姿がないのにヴァーシュが気づく。
「ルシア叔母さんならデワタに行ったよ」
「一人で?」
「うん」
 ネリスの返事を聞いて顔を見合わせるヴァーシュとル・アージュ。
「ルシア叔母さんのことだから観光じゃないよね?」
「叔母さん新しいもの好きだから、たぶん観光と実地調査じゃないかなぁ?」
 パンケーキを食べ終えチンクエディアをしまうネリス。
 ヴァーシュは紅茶を飲み干すとパラディンの鎧をまとい始め、狩りの準備をすすめる
「今日は何処行くの?」
「アインブロックよ。もう少しあそこで頑張ってみる」
「いいねぇ、まだ狩場が安定してるって・・・」
 紅茶をスプーンでクルクルとかき混ぜながら頬杖をつくル・アージュ。早く安定した狩場に行きたい衝動が彼女を追い詰める。
 ネリスは本気の狩りで龍の城に、材料集めにモロクと決まっている。ヴァーシュはまだジオ狩りが安定しているし、クリシュナは効率無視してカード集めにミョルニール廃坑やスフィンクスダンジョンと行き場があるのに対し、自分は一人の狩りで効率のいいところはまだない。
 たまに渚 レイがスフィンクスダンジョンに誘ってはくれるが毎日って訳でもない。だから平然と狩場に行けるヴァーシュたちが羨ましくてしょうがないのが本音である。
「カプラさんとこ行ってくる」
「あいよ」
 ネリスもカートを引っ張り東門のカプラ職員の下へと出かけていく。どうやら新しいチンクエディアを預けに行くようだ。
 残されたル・アージュは、紅茶を飲み干し騎士の鎧を身にまとう。
(ソヒーcでも狙いに行ってみるか・・・)
 準備もほどほどに厩舎のペコペコにまたがり出かけていくル・アージュ。途中倉庫帰りのネリスとすれちがう。
「ルア姉、何処行くの?」
「フェイヨン」
「頑張ってねー」
 ネリスに見送られ、カプラ職員にフェイヨンまで飛ばしてもらうル・アージュ。フェイヨンに着いてからはそのまま弓手村までペコペコを走らせ、そのままフェイヨンダンジョンに突入していく。
 ソヒーのいる4層目まではハエの羽を使いダンジョン内を飛び回り、程なくして4層目に到着する。
「ツーハンドクイッケン!!」
 黄色いオーラを身にまといソヒーに狙いを定め狩りを始めていくル・アージュ。ネリスが過剰チンクエディアを入手した以上、大口蛙を相手にしなくていいのでさくさくとソヒーを狩り続ける。
 ハイスピードポーションも使い、自決される前に倒さなければいけないので、ル・アージュはソヒーを一人一人手早く相手にしなければならないが、所々に出るホロンが鬱陶しく感じられる。が、そこは手馴れたもの。プロボックをかけおびき寄せては確実に処理していく。
 だが、狩りは1時間ほどで終わった。当然カードも出ることもなく、ル・アージュは剣を鞘に収めて蝶の羽でプロンテラへと帰る。
「ただいまー」
「ルア姉おかえりー」
 ル・アージュがフェイヨンから帰ってきた時には、もうみんな食卓についていた。
「ルア姉早かったね」
「あー、集中力が続かない上に自決されればね。叔母さん達の様に何時間も狩りに集中なんてできないわよ」
「まぁとにかく鎧脱いで食卓につきなさいな」
 クリシュナがそう指示すると、ル・アージュは鎧を脱ぎながら自室へと戻っていく。
 そして数分後、ル・アージュが食卓につくと少々早い夕食が待っていた。
「今日はハンバーグか・・・」
 ル・アージュがパンをちぎり、ハンバーグを口にする。やっぱりフレアが作るものは手抜きされていないのでおいしい。
 食卓での会話はもっぱらルシアのデワタ観光の話がしめていた。ジャティ族との交流もしたらしく、火山にまで足を伸ばしてきたようでもある。
「・・・で、どうなの? 狩場としてルアたちも行けそう?」
 クリシュナがデワタでの感想を率直に聞く。ル・アージュとしてもその辺は気になる様子で食事の手が止まる。
「そうねぇ・・・・、行けない事もないけれどちょっと効率的にはよろしくないと思われる。まぁ効率無視すればちょうどいいのかもねぇ・・・」
「なぁんだ、ちょっと残念」
「少なくとも足代稼げればいい方じゃないかな?」
 ルシアの見解に残念がるル・アージュだったが、ルシアで足代が稼げればという点では評価はまぁまぁなのだろう。
「私に言わせればまだ異世界のほうがましな気がするわ」
 黙々と食べるルシアの見解。それはル・アージュやヴァーシュにとっては酷な気がする発言だった。
 今現在、異世界でまともな狩りをするにあたって苦労しないのはクリシュナとルシアとフレアだけである。残りの3人は当てることさえできればの話になるからだ。
「当面は今の狩場で自力を上げる方がいいわよ。一攫千金を狙うなら若cやソヒーc、ドレインリアーやゼロムカード出した方が稼ぎにはなるし、相場の話になるとネリスが露店で調べてくれないとわからないけどね」
「先立つものはやっぱり資金か・・・」
 クリシュナがボソッと呟いたが、お財布係のネリスにとっては黙って頷くしかなかった。
 そうして夕食も終わり、女所帯のめいめいがお風呂入ったり武器の手入れなどをして時間が進んでいった。
「ヴァーシュにゃ悪いけど、私、廃坑に狩場戻そうかな・・・」
「若c狙いですか? 私の方は急いでいませんよ」
「そう言ってくれると助かるわぁ。資金稼ぎするならついでもあることだし手馴れた廃坑の方が楽なのよね」
 狩場の話で盛り上がる居間で、カードと縁遠いル・アージュもソヒーc狙いの狩りしなきゃいけないなぁと思い始めている。当然のことながらカード運を期待されていないネリスは狩場の話についていけなかった。
 女所帯の資金稼ぎのツートップの一人、クリシュナが廃坑に通えば少なからず高額なカードを手に入れる機会が多い。それにヴァーシュがカード狙いの狩りに参加してくれれば、ネリスとしても資金が潤うので期待している。
「とりあえず資金稼ぎ優先にするか」
 クリシュナの鶴の一声にみんなが黙って頷いた。

 そして夜が更けて女所帯の面々はそれぞれの思いを胸に就寝に入るのであった。
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  by lywdee | 2011-04-19 14:31 | Eternal Mirage | Comments(0)

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