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Eternal Mirage(130)

 初夏の長雨、プロンテラは梅雨時を迎えここ数日雨がやむことは無かった。
「退屈だねぇ」
 そんな昼下がり、居間でくつろぐクリシュナの前にフレアが紅茶を運んでくる。
「紅茶のおかわりはいかがいたします?」
「もらうわ。ルシア、あんたは?」
 無言でティーカップを差し出すルシア。相変わらず居間で本を読んでいるルシアに、外の天気なんて関係ないも等しい。
 フレアは無言で2人のティーカップに紅茶を注ぐと静かに厨房に戻っていく。クリシュナにしてみれば、言葉数の少ないこの2人といると正直息が詰まりそうで落ち着かない。
「狩りにでも行くか・・・」
 紅茶を飲み干しやおら立ち上がるクリシュナ。そしておもむろに腰帯に挿していたスピリットハリケーンフィンガーを右手に装着する。
「クリシュナ様、今日はどちらまで?」
「ミョルニール廃鉱まで行ってくるわ。あそこなら雨でも関係ないからね」
「わかりました。戻られるまでにお風呂の準備は進めておきます」
 フレアはそう言いながら玄関の前に洗濯籠を用意した。
「じゃあ行ってくるわ」
 そう言って玄関を出ると同時に消え去るクリシュナ。テレポートでゲフェンまで飛んでいった模様である。
「あれ、クリシュナ叔母さんは?」
 タイミング悪く1階に下りてきたのはネリスであった。
「クリシュナ様でしたら今しがた廃鉱に向かわれましたが・・・」
「ふーん・・・」
 フレアの言葉にから返事で答えるネリス。表情は若干残念そうである。
「何だ、叔母さん狩り行ったのか・・・」
 今度は騎士の鎧に身を包んだル・アージュが2階から下りてきた。彼女もまた狩りに出かける準備だけはしているようだ。
「ルア姉も狩り行くの?」
「いんや、いつ狩りに誘われるかわかんないから支度だけしてんのよ」
 そう言って食卓の椅子に座るル・アージュ。
「スフィンクスダンジョンの4層目にはごっついミノタウロスが沸いてきたからねぇ。プリースト一人じゃ落ち着いてアヌビスなんて狩れないだろうからねぇ」
「そうなのよねぇ・・・、私も支援もらえないとちょっときついわ」
 珍しく会話に混ざってきたルシアに、ル・アージュはちょっと愚痴っぽい返事を返した。
 そんなおり、女所帯のドアをコンコンっと叩く音が雨音に混じって聞こえてきた。
 フレアがドアを開けるとそこには傘をさしてる渚 レイがそこにいた。
「ル・アージュさん狩りに行きませんか?」
「行くよー」
「待ってー!」
 二つ返事で了解したル・アージュの目の前にネリスが立ちふさがった。
「どうしたのネリス?」
「モロク行くなら私も連れてって」
「へ? なんでまた・・・?」
 驚くル・アージュと渚 レイの間でネリスはカートの準備をしていく。
「ネリスさんがスフィンクスダンジョンへ、ですか?」
「んーん。モロクに行きたいだけ」
「何? コンバーターの材料集めでもするの?」
「うん。移動費もかからないからモロクまで飛ばしてくれるだけでいい」
「それでしたらワープポータル出しますよ」
 渚 レイは玄関のドアを開けると女所帯の入り口前にワープポータルを出す。そしてル・アージュとネリスが光の輪の中に身を投じ、最後に渚 レイがポータルに乗っかりモロクへと瞬間移動して行った。
「よかったわねネリス。雨降ってなくて・・・」
「ルア姉、それって皮肉・・・?」
「まぁまぁお二人さん、落ち着いて・・・」
 スフィンクスダンジョンの入り口で、引きつった顔で見つめあう2人の間に入り落ち着かせる渚 レイ。
「ではネリスさんは材料集めだけなんですね?」
「うん。レイさんポタありがとー」
「あ、待ってください!」
 材料集めに向かおうとするネリスを渚 レイが引き止める。そして振り向いたネリスにブレッシングと速度増加をかける。
「ありがとー」
「お気をつけて・・・」
 こうしてネリスはル・アージュらと別れモロクの街に入り、南門を抜けスコーピオンのいるフィールドまで歩いていった。後はめいめい目的を持った狩りが始まったのである。
 クリシュナはミョルニール廃鉱でカード狙いの狩り、ル・アージュと渚 レイはスフィンクスダンジョンでのアヌビスとごっついミノタウロス狩りに、そしてネリスは砂漠でのスコーピオン狩りと、三者三様ではあるがそれぞれの目的が終わる頃にはプロンテラの雨もやんでいた。
「ただいまー」と元気よく帰ってきたネリス。玄関の洗濯籠にはすでにすすまみれのチャンピオンの服が入っている。どうやらクリシュナは先に帰ってきていたようだ。
 ネリスも汗まみれのスパノビの服を脱ぎさり下着姿になる。そして自室から下着と普段着を持ってお風呂場へと駆け込んでいく。
「叔母さんただいまー」
 汗まみれの下着を脱ぎ、お風呂場のドアを勢いよく開いて中に入るネリス。クリシュナは浴槽の中に浸かっていたが、ネリスが入ってきたので浴槽の縁に両腕を置いてそこに顔を乗っけた。
「おかえり。狩りに行ってたのかい?」
「うん!」
「それはよかったね」
 浴槽から桶に湯を入れ浴びるネリスは颯爽と身体を洗い始める。するとクリシュナが湯船から上がりネリスのタオルを取り上げ、そのままネリスの背中を洗い始めた。
「私はもう上がるから、ゆっくり入ってなさい」
「はーい」
 ひとしきり背中を流してクリシュナは風呂場を出て行く。すると今度はル・アージュが入れ違いで入ってきた。
「なんだ、叔母さんと一緒じゃなかったのか」
「ルア姉の背中流してあげるお」
「ありがたいねぇ、ちょっとまっとくれ」
 そう言って浴槽から手桶でお湯を浴びるル・アージュ、そしてネリスが背中を流し始めた。
「あんたコンバーターの材料集めてたんじゃないの?」
「うん。材料だけ集めてきたの」
「へぇ、どうりでルシア叔母さんがコンバーター作ってなかったわけだ」
 ネリスがル・アージュの背中を洗い終えると、そのままタオルをル・アージュに渡し、浴槽から手桶でお湯を汲んで自身の石鹸まみれの身体を洗い流す。
 2人がお風呂から上がってきた頃にはすでに夕食の準備が終わっていた。
 そうして全員が揃って夕食となったわけだが、いつもより静かな夕食となり食卓での会話はあまりなかった。
 かくして女所帯の面々は思い思いに自室に帰って夜を迎えるのであった。

  by lywdee | 2011-06-21 01:20 | Eternal Mirage

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