Eternal Mirage(131+α)

「そうですか・・・。それは深刻な問題ですね」
「そうなのよ。最近特にすれ違っちゃってね、お互い気まずいなぁって・・・」
 スフィンクスダンジョンの片隅で休憩を取っていたル・アージュと渚 レイ。今日も他の冒険者が多く、狩りのペースが落ちてきたので長々と会話にいそしんでいた。
「私が狩りに誘っているからでしょうか? だとしたら人事ではありませんからねぇ」
「いや、レイさんのせいじゃないよ。それに今に始まったわけでもないから」
 真剣な面持ちでル・アージュの相談に乗る渚 レイだったが、ル・アージュにしてみれば問題は自分自身にあるものだと思っている。
「悩みすぎなのでは?」
「そうかな・・・」
「あまり自分自身を責めていますと見えるものも見えなくなりますよ」
 プリーストとしての立場上、目の前に悩める者がいれば親身に話を聞かなければならない。ましてや他人ではないル・アージュが悩んでいるので、彼の性格上放っても置けない。
 かといって、ル・アージュだけの話を聞いても問題が解決するわけでもない。この辺は難しいところではある。
「とにかく後ろ向きな考えではいけません。少しでも前向きに考えましょう」
「前向きねぇ・・・。そうだね」
「では気分転換に狩りに戻りましょう」
「おしっ! 気合入れるぞぉ!!」
 渚 レイに少しでも心情を吐露したせいか、ル・アージュの目に明るさが戻ったように見える。
 ル・アージュはペコペコにまたがりクレイモアを抜く。渚 レイも襟元をただしビレタを被りなおしてお互いにブレスと速度増加のスキルをかける。そしてル・アージュの先導のもと狩りが再開された。
「ツーハンドクイッケン!!」
 黄色いオーラを身にまといパサナをしとめていくル・アージュは、続いてアヌビスの注意を引きつつ渚 レイがターンアンデットでしとめるのを援護する。このコンビでの狩りは大体こんな感じで進行される。

 だがこの日は運が悪かった・・・。

「ルアさん! 一度下がって!」
 ごっついミノタウロス相手に剣を振るうル・アージュに渚 レイが後退を指示する。が、ル・アージュは引き下がらずアヌビスの注意も引き始めた。
「大丈夫! レイさんはアヌビスを・・・!」
「しかし・・・」
「早く!!」
 渚 レイは仕方なくル・アージュにブレスと速度のスキルをかけ、アヌビスにレックスディビーナを仕掛ける。
 しかし、今回は中々ディビーナが決まらず、ル・アージュがアヌビスのソニックブローをまともに浴びることになり彼女の意識が一瞬飛んだ。
「ルアさん!」
 ようやくアヌビスを沈黙させ、ル・アージュにヒールをかける渚 レイ。そこにアヌビスとミミックを引き連れたプリーストが現れ、いきなりテレポートで姿を消した。
(擦りつけ! こんな時に・・・!)
 急遽擦り付けられたアヌビスを沈黙させ、ル・アージュの体力がもつ事を祈りながらターンアンデットで昇天させる。そしてル・アージュを攻めるアヌビスを、ミミックの邪魔を受けながらもなんとか昇天させる。
 すると今度はごっついミノタウロスまでが渚 レイを襲い掛かってきた。
(ルアさん。倒されたのか!?)
 視線をル・アージュがいた場所に移すと、目の前にペコペコから落下したル・アージュの姿が映る。
 ペコペコは無事なところを見ると気を失ったところで、ごっついミノタウロスの気がこちらに向いたと見える。
 渚 レイは、ル・アージュが無事だということを信じ、自身に速度増加をかけ、ミミックとごっついミノタウロスを引っ張りル・アージュから遠ざける。そして安全域まで引っ張ると、今度は自身がテレポートでル・アージュの元へと急いだ。
 少々時間がかかってしまったが、なんとかル・アージュの元へと戻ることができた渚 レイは、彼女の様態を確かめる。
(瀕死に近いが死んではいない)
 渚 レイはヒールでル・アージュを回復させていく。おそらく気絶した瞬間にペコペコから落ちたことでごっついミノタウロスが彼女を倒したと誤認してくれたのだろう。
「あ・・・、レイさん・・・ごめん」
「気づきましたか、話は後で、一度帰りましょう」
 意識の戻ったル・アージュをペコペコに乗せ、渚 レイはワープポータルを出しペコペコを誘導する。
「さぁ、行ってださい」
 渚 レイの視線を感じたペコペコは、ル・アージュを落とさないようゆっくりとポータルに入る。そして渚 レイが後を追うようにポータルに入る。
 男所帯の前に出た渚 レイ、先に入ったル・アージュはようやく回復したのか申し訳なさそうな顔で彼を待っていた。
「レイさんごめん。あの時ちゃんと下がっていれば・・・」
「いや、ルアさんのせいではありません。あの時は他人にアヌビスを擦り付けられなければ何とかなりました。問題はマナーのなっていない冒険者がいたせいです。ルアさんが謝ることはないですよ」
 渚 レイは服の埃を払いながら笑顔でル・アージュを見た。ル・アージュはというと、本当に申し訳なさそうな顔つきで渚 レイを見ている。
「まぁ無事戻ってこれた事ですし、この話はここで終了です。あまりお気になさらずに・・・」
 笑顔で見送ろうとする渚 レイだったが、切なそうな顔つきのル・アージュを見てとっさに「ルアさん!」と引き止める。
 何だろうと思って渚 レイに近づいてきたル・アージュは、次の瞬間パンっと力の無い平手打ちを受けるのであった。
「レイ・・・さん・・・?!」
「これでおあいこです。私ももうちょっと支援がうまければ転がすことも無かったでしょうから」
 渚 レイも自身の支援スキルに自信がなかったから、少々引け目を感じていたらしかったということで、お互い悪いところもあるんだということでル・アージュを責められない事を言った。
「では、また機会があれば狩りに誘いますね」
「・・・はいっ! また誘ってください」
 こうしてル・アージュは女所帯へと帰っていった。

 ル・アージュが女所帯についた時、ペコペコ厩舎にはヴァーシュのペコペコが繋がれていた。どうやらヴァーシュは帰ってきているようだ。
「あらル・アージュおかえり」
「ただいま。これから風呂焚き?」
「ええ、そうよ。ルアも一緒に入る? ネリスは一緒に入るって今湯加減見てるわ」
「私も入るわ。ヴァーシュには話したいことがいっぱいあるから」
 そう言ってル・アージュは鎧を脱いで井戸の側で鎧を洗い始めた。
「ヴァーシュ、モスコはどうだった?」
「うーん、ジオ狩り飽きてきたから気分転換にはなったわ」
「そうなんだ」
「ちょっと移動費がかかるから、足代稼ぐのがちょっと問題かもしれないわ」
 たわいもない狩りの話題。でもル・アージュは久しぶりにヴァーシュと会話してるように思えた。
 鎧を洗い終えた頃には陽は傾き、夕焼けが綺麗に見えた。ル・アージュとヴァーシュの会話はお風呂に入るまで続いた。それまで溜め込んでたものを吐き出すかのように・・・。ヴァーシュもル・アージュに話したいことはいっぱいだったようで、会話が途切れることは無かった。
 ル・アージュもヴァーシュも、結局のところお互いの狩りのことで会話が無かっただけだということで、お互いが気を使っていただけなんだということを知ったのだった。
 ル・アージュは、渚 レイの言うとおり前向きに話し合うことによって気まずさを払拭でき、2人の絆はより強固なものへと変わって行くのであった。それをお互いが知るのにかなり遠回りをしたことも、後の笑い話となるであろうと2人は思うのであった。
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  by lywdee | 2011-06-30 02:26 | Eternal Mirage | Comments(0)

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