Eternal Mirage(134)

 カモメの鳴く大海原。ヴァーシュは今、モスコビアのクジラ島にやってきていた。もちろん目的は未開の地でのババヤガとウジャス狩りである。
 クジラのゆっくりとした移動と吹き抜ける潮風が眠気を誘う。ヴァーシュは小屋の壁に背を預け、少々仮眠をとる事にした。

 一刻ほど経ったのだろうか。この島の唯一の住人がヴァーシュを揺り起こした。
「お嬢さん、着きましたよ」
「あ、すいません!」
 慌てて起きるヴァーシュに老人が微笑む。ここしばらく通っているおかげですっかり顔見知りになってしまった。
 そうこうしてヴァーシュは未開の地へと降り立つ。このところ毎日のようにやってきているため、森への道筋は覚えてしまった。ただ、そんなヴァーシュでも森の最深部までは踏み入ることはなかった。
「今日も頑張りますか」
 中型特化トライデントを握り締め、ヴァーシュは颯爽と森の中に入っていく。
 道中レスやウッドゴブリンがひしめく中、彼女はあくまでもババヤガとウジャスに狙いを絞っていた。実質最深部には行けなくもないが、ヴァーシュ自身、力量から言ってまだ早いと感じていた。だからであろう、彼女は最深部にまで行く気はなかった。
「ル・アージュは今頃レイさんとスフィンクスダンジョンかな?」
 ここでの狩りに慣れたせいか、ヴァーシュは人のことを気にする余裕ができていた。ただ、森の中間地点だと少々手ぬるく感じ、最深部だとちょっと辛いと、狩りのバランスがうまくとれないもどかしさを感じずにはいられなかった。
 ただ、ジオ狩りよりかはマシなので、当分の間はここで狩りしていこうと決めたので文句を言う気にはならなかった。
 正直なところ、ヴァーシュはゼピュロスを持ってきたかったが、まだ完成していないのと、最深部には持っていけないので現在持ってる中型特化トライデントが頼みの綱となっている。

 その頃ル・アージュはと言うと・・・。

「ルシア叔母さぁん、私一人で狩り行くなら何処がいいんだろう」
 女所帯の居間で読書中のルシアにル・アージュが尋ねる。
「ルアが一人で行けるところねぇ・・・。ちょっと考えてみるわ」
 紅茶を口にし、読んでいた本にしおりを立てるルシア。それに対し生唾飲んで答えを聞こうとするル・アージュがちょっと前のめりに構える。
「手ごろな狩場なんてないねぇ・・・」
「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ・・・! ほんとにないの?」
「回復剤使わないこと前提でしょ? 氷Dもスフィンクスも使うだろうからねぇ。東谷ならいけるんじゃないかとは思うけど、あそこ人気の狩場だしなぁ。やっぱり今はレイの護衛でスフィンクス行ってれば?」
 結局そこに落ち着くのかと肩を落とすル・アージュ。彼女自身、ヴァーシュが一人で発光したから自分も一人で発光したいと思ってるものだから、そろそろ本腰いれて狩りせねばと感じ始めてきたので、狩場が無いと言われたのがショックでならない。
「あんたは武器の都合上大型相手にしないと効果薄いからねぇ。今度一人でスフィンクス行ってみれば?」
「むー・・・、わかった、今度行ってみる」
「東谷も試してみれば?」
「うん、今度試してみる」
 半ば言いくるめられた感が否めないル・アージュだったが、東谷はヴァーシュも発光まで通った狩場であるから、自分もそこに行き着くものだと思っていたから、覚悟してたぶんショックも大きい。
「まぁここまでは参考にして、あとは自分で試して結果出さないとダメよ」
「あぁ、なんかまたネリスがぐずりそうだわ・・・」
 がっくりと肩を落とすル・アージュを見て、ルシアは無造作に髪を掻いた。
「そんなに残念がることもないんじゃない。あんた属性クレイモアで風持ってなかった? 一攫千金になるけど氷Dでスノウアーc狙ってみればいいっしょ?」
「あぁー、ネリスにも言われたなぁ。やっぱ先立つものは資金なのか・・・」
 居間のテーブルに突っ伏すル・アージュ。それを見たルシアはまた本を取りしおりのページを開いて読書を再開させる。そこへタイミングよく紅茶を持ってくるフレアは2人のティーカップに紅茶を注いでいく。
「まもなくお昼を用意いたしますので、それまでお待ちを・・・」
「あいよ」
 淹れたての紅茶を飲み返事をするルシアとは裏腹に、突っ伏したまま手で合図するル・アージュ。
「あんたもいつまで突っ伏しているのよ見苦しい」
「むぅ・・・」
 ルシアに見苦しいとまで言われ、やおら立ち上がるル・アージュ。
「倉庫行ってくる」
「いってらっしゃい」
 そう言って出かけていくル・アージュを見もせず送り出すルシア。
 ペコペコにまたがり、東門カプラサービスのもとへ走らせるル・アージュとすれ違うネリスが叫ぶ。
「ルア姉ー! ちょっと待ってー!!」
「?!」
 急に呼び止められたル・アージュが、うまいことペコペコ操りスピードを殺してネリスの前にやってくる。
「何? どうしたの?」
「レイさんから伝言。あとでスフィンクスダンジョン行きませんか? だって・・・」
「護衛か。それは行かないと・・・」
「ちゃんと伝えたからねー」
 そう言って女所帯へと帰っていくネリス。ル・アージュもカプラサービスのもとへ急ぐ。
 そして東門に来たル・アージュは、カプラサービスの倉庫から風クレイモアを回収し女所帯へと戻っていく。
 女所帯に着いた時にはもうお昼ご飯が用意されていた。今日のお昼はかぼちゃパイのようだ。
「ルア姉、倉庫に何取りに行ったの?」
「んー? 風クレイモアよ」
「氷Dにでも行くの?」
「今度ね、今度・・・」
 パイを食べながら会話する二人。ルシアは姪の会話に混ざろうとはせずに、静かにパイを食べている。
 昼食が終わるとヴァーシュがまず帰ってきた。その後に続いてクリシュナが帰ってきて昼食を摂りはじめた。
 それから半刻後、女所帯に渚 レイがやってきた。
「ルアさん、モロク行きませんか?」
「行く行く、ちょっと待ってねー」
 いつものように鎧とクレイモア2本を装備し、渚 レイのワープポータルに乗っかり出かけていった。
「ルシア叔母様、こんなの出ましたけど使います?」
 食後にヴァーシュが2本の杖を差し出す。モスコビアで出したリリースオブウィッシュだ。
「んー使うかどうかはわかんないけど、とりあえずもらっておくわ」
 受け取るルシア。表情は冷めた感じであるが、決して迷惑だとは思っていないようで、居間への戻り際口元が緩む。
 クリシュナの方は収穫がなかったようで、あんまり賑やかにもならなかった。もっとも、彼女の狩りはカード狙いだから尚更である。目的があるだけマシなのだろうが、問題のカードは露店で買うには高騰しすぎていて、買うぐらいなら出した方が安上がりなのである。
 そのカードの名は『ドレインリアーカード』今では6M以上の値段のつく代物である。それが3枚必要なので、資金繰りしてまで買うにはちょっと高すぎるのが問題なのである。
 クリシュナにしてみれば、同じく高騰し始めたスケルワーカーカードでも出してそれを売ったお金で買うという手もあるのだが、収支を考えるなら自力で出したいのが本音。だからスフィンクスダンジョンに出向いているのである。
 とりあえず現在転職転生を目指す狩りに2人、アイテム収集に1人という布陣で女所帯は回っている。それだけにクリシュナのレア運が女所帯の収支に深く絡んでいるので、最近はあんまり元気がない。
 かくして、女所帯は今資金繰りに走っているのが現状であることだけここで述べておこう。

 クリシュナの心労は始まったばかりなのである。
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  by lywdee | 2011-07-19 14:34 | Eternal Mirage | Comments(0)

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