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Eternal Mirage(167)

 春の陽気に包まれ始めたプロンテラ。騎士やクルセイダー、プリーストになろうと剣士やアコライトが、今日もギルドの勧誘に包まれている。
 そんな街中を歩くネリスとフレア。今日の買出しを終え女所帯へと向かっていた。
「ギルドかぁ、そんなにいいものなんだろうか?」
 素朴な疑問がネリスの胸中によぎる。
 実際、女所帯ではクリシュナのみがギルドに所属している。でも正規のギルドではないので、日曜日に行われる攻城戦には参加していないので、それほど有名ってわけでもない。ただ、マスターの人柄によって集まったギルドなので、その存在は知る人ぞ知るってところである。
「ただいまー」
 ネリスが元気よく女所帯のドアを開けると、食卓にはヴァーシュとル・アージュが談笑していた。
「ルア姉、騎士団から帰ってきてたんだ」
「定例会は短いからねぇ。ギルドの勧誘にあう前に抜け出してきた」
「へぇ・・・」
「今紅茶の準備をいたしますね」
 ネリスがヴァーシュらの前に腰掛けると、フレアはかまどに火をくべポットでお湯を沸かし始める。
 居間ではルシアが読書にいそしんでいる。イズルードの海底遺跡の先に神殿があったことで、文献などをあさっているのが現状。調査に出たいところではあるが、セージ1人で行けるところでもなければ、ファイアーウォールが効かない狩場なので行くに行けないといったところであろう。
「・・・で、定例会って何してたの?」
「んー? 新規の騎士登録とロードナイトの選抜」
「ルア姉はその選抜を受けてきたの?」
「まぁ気が早いけどロードナイトになれるまでの狩場の斡旋だったからねぇ、今の狩場から離れることもなかったわ」
「へぇー」
「推奨されたのが兄貴村の東の谷だったからね、今頃騎士やロードナイトがハイオーク相手にしていることだと思うわ」
 食卓の3人に紅茶が振舞われる。今日はミルクティーのようだ。
 当然居間のルシアにも紅茶が差し出されるが、ルシアは文献を読みながら無言で紅茶を口にした。
「でもロードナイトってやっぱいいわぁ・・・。あの鎧、憧れるなぁ」
 紅茶を飲みながらル・アージュは遠い目をしていた。今着用している鎧に比べ、ロードナイトの鎧は華やかさがあるらしく、ル・アージュも早くロードナイトになりたいと思っている。
 ヴァーシュはそんなル・アージュを見ながら紅茶を口にする。自身も憧れのパラディンになった時がそうであったように、上位2次職の鎧を受け取ったときは歓喜に満ちていた。だからル・アージュがロードナイトになることを楽しみにはしている。
「まぁ早いとこ転生できるように頑張るか」
「これから狩り?」
「ううん、お昼まで仮眠。御飯食べてから狩りに行くよ」
 そう言って2階の自分の部屋に向かうル・アージュを見て、ネリスは思った。
(ルア姉もリーナ姉みたいにのんきなとこあるよなぁ)
 双子ってああなのか疑問に包まれたが、ネリスはヴァーシュと一緒に紅茶を口にするのであった。
「ねぇヴァーシュ姉、発光ってそんなに時間かかるものなの?」
「そうねぇ・・・、狩場にもよるでしょうけど、結構時間かかるわねぇ」
「そうなんだ・・・」
「私のときは対抗いっぱいでハイオーク狩っていたからね、騎士やロードナイト、ブラックスミスもいて大変だったわ」
 自身の追い込みの思い出に浸るヴァーシュだったが、範囲攻撃を持つ職業が今でも羨ましいので、ヴァーシュも早くロイヤルガードになって範囲攻撃を取得したいなと思っていた。
 そんな矢先、ルシアが居間からネリスを呼んだ。
「ジュノー行くから付き合いなさいな」
 そう言いながらネリスのカートに本を積んでいくルシア。ネリスに拒否権はないらしい。
 そうしてルシアとネリスはジュノーへと出向くのであった。

 そしてお昼。

「あー、よく寝た」
 ル・アージュが起きた時、ルシアとネリスはまだ帰ってきていなかった。
「あの2人は?」
「ルシア叔母様達ならジュノーに行ってるわ」
「また図書館か・・・」
 食卓に座るル・アージュ。叔母の本の虫には呆れ半分感心半分なので、ネリスも大変だなぁっと思うところがあるようだ。
 それからしばらく経ち、まずクリシュナが帰ってきた。
「ルシアがいないってことは図書館か・・・。相変わらずだねぇ」
 チャンピオンの服がそれほど汚れていないところを見ると、どうやら彼女はスフィンクスダンジョンに行っていた模様だ。
 それからしばらく経ったところでルシアとネリスが帰ってきた。
「ただいまー」
「おかえり。ご苦労さん」
 クリシュナに出迎えられ、二人は女所帯の中へと入っていく。
 全員が揃ったところでフレアが昼食を食卓に並べる。今日の昼食はエビチリグラタンである。
「ルア、あんた狩りは?」
「御飯食べたら行ってくる」
「もう少しで折り返しだろうからねぇ、まぁ無理せず頑張りなさいな」
「うん」
 そのまま和気藹々と昼食を取る女所帯の面々、まず先に取り終えたのはルシアだった。
 彼女は「ご馳走様」と言い残し、ネリスのカートから今日借り出した文献の束と本を居間に運んでいく。
 次にル・アージュが「ご馳走様」と言い、居間に用意していたナイトの鎧に身を包む。
「ルア姉頑張ってねぇ」
 ネリスに見送られながらル・アージュはモロクへと出かけていく。
 その後、昼食をとり終えた残り3人は、食後の紅茶をフレアに注いでもらいめいめい好きなことを始める。
「そうだわ、セラフィーさんに武器見てもらおう」
「ヴァーシュ姉行くなら私も行く」
 そう言ってヴァーシュとネリスは各々の武器を手に鍛冶屋街に出かけていく。
 若い衆がいなくなりクリシュナはチャンピオンの衣服を脱ぎ去り洗濯籠の中に放り込む。
「フレア、お風呂は?」
「沸いております」
「ルシア、あんた風呂は?」
「姉さん入るなら私も入るわ」
 そうしてクリシュナとルシアは揃ってお風呂へと入るのであった。

 カンカンカン・・・。

「おし、ヴァーシュのは終わりだ。手入れしてるだけあって痛みも少なかったな。次はネリスか」
 男所帯に鎚打つ響きが広がる。セラフィーはチンクエディアを見つめて研ぎなおす。
「ネリスのはあんまり狩り行ってないからこれでしばらくは持つ。問題はル・アージュか・・・」
「ルア姉は今日もミノ狩りだよ」
「追い込み中だからな。夕方にでもこちらから出向くわ」
 カートの中に精錬用品を片付けてセラフィーは立ち上がる。
「ありがとうございます」
 ヴァーシュが深々とお辞儀するとネリスも合わせて頭をたれる。
「じゃあ夕方行くからル・アージュにも伝えといてくれ」
「わかりました」
 手入れの終わった自分らの武器を手にし、2人は女所帯へと帰って行く。
「さて・・・、ルアのクレイモアは何処まで痛んでることやら・・・」
 静かになった男所帯で、セラフィーはタバコをくゆらせながらため息を吐くのであった。

  by lywdee | 2012-03-06 11:30 | Eternal Mirage

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