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Eternal Mirage(172)

「厩舎の工事終わりました」
「すいませんねぇ、急に頼んだりして」
 女所帯の主、クリシュナが大工さんに頭を下げる。
 そう、かねてから頭にあった厩舎の拡大工事を大工さんに頼んでいたのが今日終わったのだ。
「冒険者アカデミーの合宿がきてからというもの、厩舎を拡大したいってお客さんが増えたから、こちらとしても嬉しい悲鳴ですがね」
「うちの子達もご他聞に漏れずロイヤルガードにルーンナイトになったからねぇ、これで厩舎の心配がなくなったわ」
 新しくなった厩舎を見て、クリシュナはホッと胸を撫で下ろした。
「グリフォンにドラゴンですか。まぁお互いが喧嘩しないよう施工しましたので大丈夫かと・・・」
「それだけじゃないわ。うちの妹も騎乗動物飼いたいって言ってたからねぇ、その分も作ってもらって助かったわ」
 クリシュナは頑丈になった厩舎の3匹分のスペースを見てため息をついたが、ようやく問題が解決したことに対して苦笑いで大工さんを見た。
「じゃ、次の現場がありますんで、何かあったらまた連絡ください」
「お世話になりました」
 立ち去る大工を見て家の中に戻るクリシュナ。
「あんたもプロフェッサーになったというのに、本の虫は相変わらずか・・・」
「んー、する事変わんないから、だから転生はそんなに気にしてないって言ったでしょ」
「まぁ少しは変わったでしょ。転生したって言っても、覚えることいっぱいあるんだから」
 居間で紅茶を飲んでいるルシアは、呆れる姉の台詞を聞き流しながら新しい文献などに目を通している。
「わー、厩舎が新しくなってるー!」
 ル・アージュの声が女所帯の中まで響いてきた。どうやらドラゴンを借りてきたらしい。
 クリシュナが外へ出るとル・アージュは真新しい厩舎にドラゴンを繋いでた。
 それと同時にバッサバッサと羽音を立てるグリフォンが舞い降りてきた。
「厩舎が新しくなりましたのね。ちょうど良かったですわ」
 着陸したグリフォンから降りるヴァーシュ。ル・アージュもドラゴンを繋ぎ終わり、帰ってきたヴァーシュに手を振る。
「あんたたちの希望通り厩舎は新しくしたわ。これからはしっかり稼いでもらったりしてもらうからね。肝に銘じておきなさいね」
 喜ぶ姪に叱咤してクリシュナは女所帯の中に戻る。
 ル・アージュもヴァーシュとともに女所帯に入り、食卓に座りフレアから冷たい紅茶を貰う。
「なんにせよ、あんたたちも無事3次職になったんだから、しっかりしてね」
「はーい」
 食卓の二人は紅茶を飲みながら返事を返す。
「ヴァーシュはリューさんの舞台に配属決まったんでしょ? 私も独立遊撃部隊に配属されたわ」
「当分はリューさんと一緒の部隊だけれども、グリフォンに慣れたらまた配属先が変わるって言ってましたわ」
「あんたたちも配属先が安定したらカードやアイテム集めに行ってもらうからね」
 クリシュナの言葉に身をすぼめる二人、これから新たな生活が始まるのであった。

 一方、男所帯でも変化はあった。

「ようやくホワイトスミスか、ご苦労様」
「ホントはメカニックまで行きたかったんだけどね、さすがに出遅れ感が否めなかったわ」
「それでも精錬は憶えたんだろ? とりあえず武器に関しては金かからなくていいじゃないか」
 工房の片隅で冷たい紅茶を飲むリューディーとセラフィー。
 特にホワイトスミスになったセラフィーは、当面の目標の転生を済ませれたことにホッとしていた。
「まぁメカは来年までいいかな程度に考えてる。今は目先の防具の精錬だけが残ってるがな」
 工房のテーブルに目録を広げているセラフィーは、まだ消されていない防具の数々に目をやりため息をついた。
「そういやヴァーシュに聞いたんだが、お前さんの部隊に配属されたんだってな」
「あぁ、まずグリフォンに慣れてから追々配属先が決まるそうだ」
「そう言うことか・・・」
 一人納得するセラフィー。すると厨房にいた渚 レイがお盆にティーポットを載せ工房にやってきた。
「おかわりはいかがですか?」
「お、もらうわ」
「私はいい。ちょっと出かけてくる」
 そう言って一人男所帯を後にするリューディー。グリフォンの泣き声からほんとに出かけていったようである。

「ネリスは限界突破しなかったんだね」
 湯船につかりながらル・アージュは髪を洗うネリスに声をかけた。
「うん、限界突破するも何も、新しい狩場見つけなきゃ辛いもの」
「土精狩りじゃ時間かかるものね」
 同じく髪を洗うヴァーシュ。頭を湯船に近づけるとル・アージュが手桶でヴァーシュの頭にお湯をかける。
「さぁて、これから狩場を新しくしないとなぁ」
 悩むル・アージュとヴァーシュ。ナリスは頭にお湯をかけてもらいながら何かを考えていた。
 お風呂から上がると食卓では晩御飯の準備がなされていた。今日のメニューはミートソースパスタとチキンオニオンスープであった。
「セラフィーさん帰ってきたなら武器の点検してもらわないとね」
 ヴァーシュが隣に座るル・アージュに声をかける。
「そうだねー。これから新しい狩場探さなきゃいけないしね」
 さしたる話題もなく進む夕ご飯。女所帯はこれから新しい岐路に立たされるのであった。

  by lywdee | 2013-08-27 15:20 | Eternal Mirage

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