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Etrenal Mirage(179)前篇

「弟子にしてください!」
 とある昼下がり、クリシュナの家に銀髪ショートヘアの若い女モンクが訪ねてきた。
「私は弟子なんかとらないわよ。残念だけど帰ってくれる」
 そんな若いモンクに、クリシュナはさらっと答えて立ち上がる。
「姉さん、そんな事言わないで弟子にしてあげたら? 別に減るもんでもないんだし」
「アンタは黙ってなさい!」
 ルシアの一言に、目を閉じ怒鳴るクリシュナ。
 ル・アージュやヴァーシュ、ネリスら3人はそのやり取りを黙って食堂で眺めていた。
「女の修羅なんて他にもいるはずよ? 悪いけど他をあたってくれるかしら」
「わかりました。今日は帰ります。でも、私は諦めません!」
 若いモンクは少々うなだれた様子でクリシュナの家を出ていった。
 だが、これは始まりにすぎなかった。

 翌日

「姉さん、あの子また来てるわよ」
「ほっときなさい。そのうち諦めるわよ。きっと・・・」
 ドアの窓ガラス越しに外の様子を伺うルシアに、クリシュナはさらっと答える。
 ルシアが見ているのは、外で正座して何かを待つ若いモンクであった。
「あの子、クリシュナ伯母さんが弟子にするまでああしてるつもりなのかな?」
 居間で勉強してるル・アージュが呟く。
「買い出し行きづらーい!」
 ネリスのぼやきが食堂にむなしく響いた。

 二日目

「伯母さーん、あの子今日もきてるよ」
 朝一で買い出しに出かけていたネリスが、静かに玄関の扉を閉める。
「クリシュナ伯母さんなら出かけているわよ」
 居間でルシアに勉強を見てもらっているル・アージュが答えた。
「ルア、そこ間違ってるわよ」
「え? あ、ほんとだ・・・」
「さて・・・、姉さんがどう出るか。あれで結構頑固だからなぁ・・・」

 その頃、聖カピトリーナ修道院では・・・。

「無涯長老! 何故私をあの子の師に勧めたのですか?!」
「その話か・・・、確かに私は君の名を出したが、勧めたわけではない。むしろ難しいとは言ったがね」
「そうですか・・・。では他の修羅に師事を求めるよう書文を書いてもらえませんか?」
「それはできない」
「何故です?!」
「君が弟子を取りたがらない理由は知っている。・・・が、しかし、私から師事を変える行いをするのは公平ではない」
 長老の言葉に、苦虫をかみしめた顔で聴いているクリシュナ。
「納得はできません」
「だろうな。まぁどうするかは君に一任する」
「わかりました・・・」
 ワープポータルを出し渋々帰るクリシュナだった。

 五日目

「雨だというのに、あの子も粘るねぇ・・・」
 紅茶を口にしながら、ルシアは玄関のガラス越しに外を眺めていた。
「あ、倒れた」
「ふぅ・・・、仕方ないわねぇ・・・」
 居間で紅茶を飲んでいたクリシュナが重い腰を上げた。
「ルア、悪いけど食堂で勉強してくれる」
「うん」
 クリシュナはそう言うと玄関から出て行って若いモンクを抱き上げ、居間のソファーに寝かせた。
「フレア、氷水と手ぬぐい、それと毛布を一枚持ってきて」
「かしこまりました」
 そう言うとクリシュナは、自分の荷物入れから緑ポーションを出して若いモンクに飲ませた。そしてフレアが用意した氷水に手ぬぐいを浸し、若いモンクの額に乗せた。
「私のモンクの頃の服、まだあったはずね・・・。ネリス、アンタの下着貸して」
「ハーイ」
 クリシュナは自分の部屋からモンク時代の服を持ってきて、若いモンクの服を脱がし始めた。
「伯母さんハイ!」
「毛布をお持ちいたしました」
「ん、ありがと」
 クリシュナとフレアが協力して若いモンクの服と下着を取り換える。濡れたモンクの服は暖炉のそばにフレアがつるした。
 それから数時間後、若いモンクはガバッと起き上がる。
「ここは・・・?」
「私の家よ」
 起き上がった若いモンクにジンジャーティー差し出すクリシュナ。
「あの・・・、私・・・」
「無茶する子は嫌いよ」
 目を閉じ紅茶を口にするクリシュナ。その態度からかなり機嫌が悪いことがうかがえる。
「あなた、名前は?」
 ティーカップを置いたクリシュナが若いモンクに名を尋ねた。
「カー・リーです・・・」
「いくつ?」
「15です・・・」
「15ねぇ・・・」
 カー・リーと名乗った若いモンクは、バツが悪そうにクリシュナの質問に答えていく。
「最後に、どうしても私じゃなきゃダメなの?」
「はい・・・、それだけは譲れません!」
 最後の質問に答えたカー・リーは、真剣な眼差しでクリシュナを見据えた。
「ふぅ・・・。あなたの熱意は認めるわ、でも今日はもう遅いし帰りなさい。明日改まって来なさい。あなたをどうするかは明日まで考えさせて」
「わかりました!」
 質問攻めにあったカー・リーは、暖炉の前に干してあった自分の衣服を持ち、ワープポータル出した。
「ご迷惑をおかけしました!」
 そう言い残し、カー・リーはワープポータルで帰っていくのであった。
 クリシュナはクリシュナで、ため息一つこぼして立ち上がる。
「ちょっとセラフィーの所に行ってくる」
 そう言い残し、クリシュナは傘を持って出かけていくのであった。

  by lywdee | 2015-06-09 12:15 | Eternal Mirage

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