Eternal Mirage(181)

 夏

「とりあえずこの夏の間にアンタを転生させるから、文句は聞かないからそのつもりで」
「て、転生ですか?!」
「そうよ。1年で修羅まで突っ走ってもらうから」
 茫然とするカー・リーの前で、さも当然のように言い切るクリシュナ。
 カー・リーはもっと親身に修行するもんだと思っていたので、クリシュナのセリフにあっけにとられていた。
「まぁ私みたいな修羅にする気はないし、なりたいなら教えてあげるけど、基本修羅までは面倒をみてあげる」
 速度増加スキルで半ば駆け足で歩く二人が来たのはグラストヘイムの前のプティットがたくさんいるゲフェンの外れ。まずはカー・リーの実力を見るためである。
「・・・というわけで1週間、ここでプティットを狩ってもらうわ。いいわね」
「はい、師匠」
 言われるがままプティットを狩り続けるカー・リー。その様子を後ろで見ているのがクリシュナ。
 こうしてカー・リーの面倒をみることになったクリシュナだが、今もめんどくさそうな顔で時折ため息をついている。
「師匠、阿修羅覇王拳は覚えたほうがいいですよね?」
「いらない」
 即答するクリシュナに「え?!」と驚くカー・リー。
「転生するまでに使う機会ないから、無理に教える気はない。覚えるならチャンピオンになってからで充分」
「はぁ・・・」
「今はすばやく殴り倒すことだけに集中して」
「はい・・・」

 そうすること1週間、カー・リーは言われるがままプティットを倒し続け、かなり被弾することもなくクリシュナの師事の元スキルもモンクとしての実力もつきはじめた。
「さあて、次はセージワームよ。ここで発光してもらうつもりだから、手は貸すけど基本あなたが倒すのよ」
「はい!」
 グラストヘイムに入り、セージワームのいる部屋に入るとクリシュナは、手始めに見つけたセージワームを軽くひと殴りする。
「さぁ、頑張るのよ。気功は忘れずに、三段掌を織り込みながら殴るのよ」
「はい!」
 カー・リーは言われるがままセージワームを殴り続ける。
 そんなおり、偶々訪れていた他の修羅とモンクのペアがクリシュナを呼んだ。
「よぉクリシュナ。弟子を取ったんだってな」
「気まぐれよ」
「あれほど弟子は取らないって言ってたのに、撲殺天使が気まぐれを起こしたか」
「それより、アンタの弟子も倒れかけてるわよ?」
「おっといけねぇ、じゃあお手柔らかに・・・」
 こうして始まったセージワーム狩りなのだが、カー・リーは男の修羅が言ってた言葉にクリシュナに質問する。
「師匠、撲殺天使って?」
「あぁ、気にしないで。私の通り名だから・・・」
「はぁ・・・」
 セージワームを倒したカー・リーは、その「撲殺天使」という言葉に興味がわいたのか、じーっとクリシュナを見ていた。
「何故そう呼ばれてるのか気になるようね?」
「はい」
「仕方ないわね。そう呼ばれている理由は、爪派であり、ミョルニール廃鉱に8時間以上こもってたのを知った当時の仲間が、勝手につけたあだ名よ。なんでもかんでも殴り倒してたからかな? そのあだ名が広まっちゃったけどね。失礼しちゃうわ」
 今も同じような・・・。という気持ちを言葉に出さず、クリシュナが連れてきたセージワームを殴り続けるカー・リーであった。

 秋

 夏の間に発光して、転生アコライトになったカー・リーは、次なる修行の地、コモドは「サンダルマン要塞西」にきていた。
「ここに来たことは?」
「はい、モンクになるまでここにきてました」
「じゃあ同じようにチャンピオンになるまで、ここでホードを倒してもらうわ」
 そう言ってクリシュナは、腰帯に刺していたチェインをカー・リーに渡した。
「これは? 私チェイン持ってますが?」
「知り合いに作ってもらった過剰ファイアチェインよ。星入りだし、アンタのチェインより威力があるから貸したげるわ」
「ありがとうございます」
 こうしてカー・リーのホード狩りが始まった。・・・と言っても、クリシュナがホーリーライトで気を引き付けて、ルアフをたきながらカー・リーが殴るという行程に変わりがなかった。
 もっとも、カー・リーも昔通った道なので、文句ひとつ言わずホードを殴り続けた。
「そうそう、今のうちに行っとくわ」
「なんですか?」
「アンタは修羅になったら爪も鈍器も扱えるようになりなさい。それがあなたのためよ」
「え? でも・・・」
「文句は聞かないって言わなかったかしら?」
「はい・・・」
 渋々了承したカー・リーは、借りたチェインでホードを倒していくのであった。
「それから、今は純粋に器用さと素早さと力をつけていきなさいね。どうせ修羅になったらまた変わるから」
「はい」
 素直に従うカー・リーと対照的なクリシュナは、こうしてしばらくコモドにいることになった。

 冬

 無事チャンピオンになったカー・リーは、クリシュナの師事の元、ジュノーはエルメスプレートに来ていた。
「ここは私が軍資金稼ぎと修行できていた地よ。ここでは発頸でスリーパーを倒してもらうわ。支援はしてあげるから、思う存分気功使って自力をあげてもらうわ」
「はい」
 もうここまでくると、クリシュナがどんな人間かを理解したカー・リーは、もう言われるがまま修行を進めていっている。
 もちろん自力がつかないわけでもなく、弟子として苦労しているわけでもなく、着実に成長している。当然チャンピオンになったことで、弟子入り記念にもらったフィンガーを使っている。
 とりあえずスタイルとしては、クリシュナのように支援もできるセミコンボチャンプだと言える。この辺は通過点としてクリシュナが勧めたものだ。
 そして発頸狩りに慣れたころにはまたグラストヘイムでセージワーム狩りに移っていった。
 その頃になるともうカー・リー一人でセージワームを倒せるようになっていた。無論クリシュナは何もしていないわけではない。ホーリーライトで共闘をいれたり、支援スキルでブレッシング、速度増加を切らさないようにもしている。そして時折、セミコンボを見せたりしながらの狩りをしている。
「師匠、あれ、去年の修羅さんでは?」
「あー、ほんとだねぇ。弟子は新しい子がついてるねぇ」
 自力のついたカー・リーも、狩りの最中にクリシュナと会話するだけの余裕はついていた。
「よぉ、撲殺天使。弟子がチャンピオンになっているのにまだくっついてんのかい?」
「私はあんたと違って修羅まで面倒見ることにしてんのよ」
「おー怖・・・。撲殺天使が二人になるのか・・・」
 そう言いながら男修羅はその場を離れるのであった。

 春

「師匠とおんなじような修羅になりましたが、この後どうすれば・・・?」
「なに言ってんのよ。修羅になったことでもうあなたは卒業よ」
「え? でも・・・」
 卒業を言い渡されたカー・リーは戸惑っていた。一応スキル的にはクリシュナの修羅になったときと同じスキルを取っている。自力も当然クリシュナに鍛えられたとおりでほぼ同じと言えるが、まさかここで卒業と言われるとは思っていなかった。
「どこの世界におんぶに抱っこの修羅がいるのよ」
 その一言でクリシュナはブルージェムストーンを出した。当然それは師弟関係の終わりだということになる。
 カー・リーも薄々その日が来ることを覚悟していた。しかしそれが唐突にくるとは考えていなかった。
「チャンピオンを卒業した時点で、私が修羅になったときとほぼ同じ実力よ。これ以上は私も強要できないし、する気もない。だからアンタは自分がなりたい修羅になりなさい。撲殺天使は私一人で充分よ」
「でもまだ学ぶべき点が・・・」
「ここからは同じ道を行くべきではないわ。卒業を言い渡した時点でもう師でも弟子でもない。あなたはあなたらしい修羅になりなさい。私からは以上よ」
「わかりました。今までありがとうございました!」

 こうしてまた一人の修羅が生まれた。そしてクリシュナは、もう二度と弟子は取らないと固く誓うのであった。
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  by lywdee | 2015-07-21 10:44 | Eternal Mirage | Comments(0)

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