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Eternal Mirage(192)

 梅雨開けしたプロンテラ。季節の変わり目を迎えるように日差しが暑い今日この頃。
 クリシュナは次の金策を兼ねて、ネリスを引き連れ鍛冶屋街のセラフィーを訪ねていた。
「・・・というわけで、軍資金があるうちに閃光の爪を集めてみたのさね」
 クリシュナ曰く、若cウアcの露店普及率が上がっているので、軍資金があるうちに次の金策に走ってみた。・・・というわけなのである。
「スロットエンチャントはしたけど、3つじゃ過剰厳しいかい?」
「ん~、どうでしょ? 挑戦するのはいいですが、このまま売っても大丈夫なんじゃ?」
「問題はそこなのよ。s3閃光の爪が3個でしょ、このまま売ったら多分±0だと思うのよ?」
 クリシュナはいぶかしんだ眼差しで出来上がった閃光の爪を見る。
 相場ではSE成功しただけで25Mはする。しかも3つなら元手は取れなくもない。その辺はネリスとセラフィーが頭を抱えてる。
 汎用性と需要を考えれば閃光の爪は爪の中では最強と言ってもいい。しかもLv4武器でスロット3つともなれば、+7まで過剰すれば80Mを超える。それでも需要が減らないところを見ると安いくらいだとクリシュナは思ってる。
 事実、今クリシュナが使ってる閃光の爪は+7まで過剰されてるがs2でも問題ないくらいだ。もっとも、金策に走りながら普通の狩りもできるから、彼女にしてみればなんの問題もない。
 ただ、需要を考えるにあたって、s3にもなればボス狩りにも使えるし、爪の可能性を引き上げてるからなんとしても+7にしたいのがクリシュナの考えである。
「まぁ3つもあれば+7の1個ぐらいはできると思いますが、そうなるとせいぜい5Mのプラスになるくらいですね。ネリスはどう思ってんのよ?」
「私ですか? 私は売り専門なのであんまり高望みはしてないよ」
 セラフィーの質問に紅茶を飲みながら答えるネリス。できれば高額で売りたいが、その辺のリスクは承知している。彼女はセラフィーと違って薄利多売派だからだ。
 クリシュナもその辺は理解しているが、なるべくならリスクと天秤に乗せても高値で売りたい。
「まぁ急ぎじゃないならもう少し余裕をみましょう。まだs2の閃光の爪が出ないとも限りませんからね」
 その場を整えたいらしいセラフィーがクリシュナにそう提案した。
 確かに、この1か月余りで閃光の爪が結構並んでた事実を知ってるセラフィーはリスクを少しでも下げたいらしい。
「セラフィーが言うのなら、私たちも少し待ってみるわ。また市場に出ないとも限らないしね」
 そう言ってクリシュナは紅茶を口にするのであった。

 その頃女所帯では・・・。

「ほんとーにパルティナはお人よしだねぇ・・・」
 クリシュナ不在の女所帯の居間に、クリシュナ兄弟の末妹「パルティナ」が来ていた。
「兄様にも言われましたが、たまには家族水入らずで買い物させてあげたいのですよ」
 紅茶を口にしながらルシアとパルティナは面と向かい合っていた。
「でもネリスはどうすんのかねぇ?」
「後で合流するらしいですわ。コホっコホっ・・・」
 軽くせき込むパルティナ。その姿を見てルシアがため息ひとつつく。
「まぁ、あんたの行ってる病院なら、リンクの家の次に近いのここだからねぇ」
「ご迷惑でしたか?」
「いんや、うちの方が女だらけだし、気は使わなくてもいいからねぇ。姉さんも喜ぶでしょ」
 軽く微笑んで紅茶を口にするルシア。
「それにしても、あんたが母さんと同じ退魔ABになるとはねぇ・・・」
「意外ですか?」
「いや、あの親にしてこの娘ありか程度よ。フレアー! 終わった?」
 ルシアが声をかけた先、食堂ではル・アージュがフレアに髪を切ってもらっていた。
「ル・アージュ様、どうでしょうか?」
 手鏡を二つ使い、ル・アージュは髪型を気にしていた。
「んー、これくらいでいいかな」
「では片付けさせていただきます」
 ほうきで床に散らばったル・アージュの髪を集めるフレア。
 ル・アージュは首に巻いていたシーツを取ると、おもむろに居間にやってきた。
「ルア、スッキリしたわね」
「エヘヘ、だいぶ伸びてたからね。ヴァーシュみたいに長くできないけど、この髪型も気にいってるのよねぇ」
「紅茶のおかわりをお持ちいたしました」
 食堂の片づけが終わったフレアが居間の3人に紅茶のおかわりを注ぎにきた。
 それとほぼ同時に、女所帯のドアが開いた。
「ただいまー。フレア、今日の昼ごはんは何?」
 帰ってきたのはクリシュナだった。
「姉さん、ネリスは?」
「ん? あの子ならリンクたちと昼ごはん食べに行ったわよ」
「姉様、お邪魔してます」
「いらっしゃい。何もないけどくつろいでいなさいな」
「いーなー、ネリスは・・・。リンク叔父さん優しいからなぁ」
 居間のテーブルに突っ伏すル・アージュ。
「ル・アージュ。アレス兄様も優しいわよ」
「冗談! 親父が優しいのはリーナ姉の前だけだよ! 私なんか・・・」
「はいはい」
 ル・アージュの言葉に軽く微笑むパルティナ。それを前にルシアが苦笑いしていた。
 クリシュナもハハハと気の抜けた笑い声を出し居間のソファーに腰を下ろした。
「姉さんどうだったの? 話はまとまった?」
 ルシアがクリシュナに問いただすと、クリシュナは黙って目を閉じ首を横に振った。
「ありゃ・・・? セラフィーと意見が合わなかったか・・・」
「まぁね、今はリスクの方が大きいから、しばらく様子見するって・・・」
「だよねー。インバースと違って元値が違いすぎるしね」
 ルシアはそう言って紅茶を飲み干す。
「まぁ軍資金がある今なら、別に失敗しても取り戻せるから、強く出てもよかったのかしらね」
 ため息ひとつこぼしたクリシュナも、ルシア同様紅茶を飲み干す。
「ところでヴァーシュは? あの子非番じゃなかったの?」
「あぁ、ヴァーシュならプロンテラ城よ。なんでも騎士団との会議らしいわね」
「・・・で、ルアは呼ばれなかったの?」
「私? 昼過ぎから会合があるって伝令がきたわ」
「ふーん」
「お昼御飯ができました。皆さま食堂へどうぞ」
 フレアの言葉に、居間の4人は食堂へと向かった。
 お昼ご飯は薬膳スープとサンドイッチだった。パルティナの体調を考慮した軽めのラインナップである。
 クリシュナ家としては静かな昼食となったが、ル・アージュはまじまじとパルティナの顔を見ていた。
「ル・アージュ、どうしたの? 私の顔に何か?」
「いや、パルティナ叔母さん綺麗だなぁって」
「お世辞でもうれしいわ」
「パルティナは母さん似だからね」
 サンドイッチを食べながらクリシュナがそう言った。
「私たちは父親似だって母さん言ってたものね」
 ルシアもスープを口にしながらクリシュナの顔を見る。
「まぁそう言っちゃうと姉さんも母さん似だよね」
「そうらしいわね」
 クリシュナはルシアの言葉を聞き流しつつサンドイッチを食べている。
 
 そうこうして夕方になる。

 クリシュナ宅にリンク親子が訪れた。
「姉さんすいません。パルティナを預かってもらって・・・」
「何言ってるのさね。姉妹なら当たり前でしょ」
「パルティナ、帰るぞ」
「はい」
 パルティナはクリシュナに抱き着くと、「ありがとう姉様」と言葉を残しワープポータルを開いた。
「ネイ姉、またね!」
「あんたもね。今度は二人でどっか行こうか」
「うん!」
 こうして女所帯からリンク親子が飛んでいった。
「パルティナも気晴らしにはなったのかな?」
「どうだろうねぇ・・・。思った事口にしない子だから・・・」
 どこか寂しげな面持ちのクリシュナに、ルシアはそれ以上口にしなかった。

  by lywdee | 2016-06-21 12:23 | Eternal Mirage

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