Eternal Mirage(200)
春の日差しが温かくなってきたここプロンテラ。
その一角にあるクリシュナが主の女所帯。その主たるクリシュナは、ここ最近プロンテラの北にある迷宮の森に毎日足繁く通っていた。
もちろんメインのターゲットはハンターフライなのだが、それと同じくいろいろな冒険者がきているせいもあり、狩りの方はぜんぜん苦労しているのだった。
「はぁ・・・、今日も対抗はいっぱいかぁ・・・」
ため息混じりに木陰に腰を下ろして休むクリシュナ。その目の前を色々な職の冒険者がテレポートで入れ代わり立ち代わり現れては消えていく。
クリシュナ自体は朝からやってきていて、時間帯的にも一人だと感じているのだが昼になると一転して冒険者が現れ増えていく。クリシュナとしてもテレポートすれば鉢合わせになったり、ハンターフライが駆除された後に出くわす事も多かった。
彼女にしてみれば、廃鉱でスケルワーカーカードを出してきたように、副産物にも期待しているのだが、これと言って高額なドロップがあるわけでもなく、狩りのテンションはなかなか維持しがたいものであった。
まぁここ(迷宮の森3層目)では、テレポートでの狩りが主流で、ともすればバフォメットに鉢合わせになることもしばしばあるのだがクリシュナは相手にせずひたすらハンターフライを狩っている。ただ、ハンターフライ同様数が多いのはバフォメットJrである。こちらは呪いとディスペル、幻覚と少々腹の立つスキルで邪魔してくるが、倒す見返りとしてはオリデオコンは出るし、イグドラシルの実もでるのでスキルで応対している。
ただ、戦場としてはまちまちな地形に悩まされているがハンターフライを凌駕する金額で取引されるカードを持つMOBもいるので、一攫千金を目指すならこれ以上はない狩場の一つでもある。もっともそのせいで密集地帯で気をぬけば倒されてしまう危険性もあるので、制圧し続けては休息を取らないと狩りが続かないのも現実である。
クリシュナとしては人の少ない時間帯に行くわけではあるが、時間が経つにつれて増える冒険者に、頭を悩まされている。これが廃鉱だったら、対抗も少ないので何時間でもいられるわけなのだが、さすがに人気狩場であるここではそんなことは通用しない。平たく言えば早い者勝ちなのである。だからクリシュナも苦労こそすれ一攫千金と需要と供給に適したここに腰を据えているのである。
「キラーマンティスカードか・・・。いくらするんだろ?」
時折でるハンターフライとは別のカード。まとめ狩りのしている身なので、いつ何がカードを出したか一切わからない狩場。彼女は他にもウルフ、ポリン、ルナティックとカードを出したが経験上安い値段で取引されるカードである。
テンションこそ上がらないモノの、これがエンジェリングやデビルリング、アークエンジェリングがカードを出せばそれこそ一攫千金だ。だからクリシュナは、バフォメット以外のモンスターも倒してはいる。保険に持ち歩いてる白ポーションの重さを考えればハンターフライが落とす結構かたい皮なんて拾っていられない。廃鉱ではそんなこともないのでランタンも拾ってどれぐらい倒したかの目安になるのだが、ここでそれをするには白ポが邪魔になってしまう。だからクリシュナは余計なものは拾わず、価値のあるものだけしか拾ってはいない。他の冒険者も同じようなものだから、ここではハンターフライの残骸と結構かたい皮、ジャルゴンはテレポートするたびに見受けられる。
メカニックでもなければ拾っていられないドロップばかりだが、痕跡を残す人の方が多いのも実情。それだけここではハンターフライがそれこそ親の仇のように狩られていくのだ。
「ルアもラヘルで頑張っているんだ。私も頑張らなきゃ・・・」
休息を取り終えたクリシュナが立ちあがる。家長としての責任が重いが養う義務のある彼女は、自身を慕って居候している家族を守るためにも、今日も頑張って迷宮の森の3層目で必死にテレポ狩りを続けるのであった。
「まぁ! 姉様がネイちゃんのためにハンターフライを?」
「そうなのよ。だから帰ってきたらストレスで吐くこともあるのよねぇ・・・」
5兄弟の中間の立場にあるルシアは、リンク宅でパルティナとお茶していた。
「ルシア姉さんはこれからどうするのさ?」
フラウディッシュ家次男のリンクがパルティナの横で紅茶を飲んでいた。
「私なんてサポート型のソーサラーだし、行けるとこなんて限られてるわ。それこそリンクだって同じでしょ? あんたもサポート型のロイヤルガードなんだし・・・」
「それはそうなんですが・・・」
「姉様も兄様も一人で狩りするなんて珍しいものですからね」
微笑む末っ子のパルティナ。具合がよくなってからはよく笑うようになった。
「それにしても・・・。吐くまで狩りするなんてクリシュナ姉さんらしいな」
「そうなのよ。少しは肩の力抜いて姪っ子に頑張らせないといけないわ」
「それをしないのが姉様らしいですね。ねぇ兄様」
「家族を大事にする姉さんだからなぁ。いい加減にしないと胃に穴が開くんじゃないか?」
「それで済めばましよ。無理して体壊したら意味がないというのに・・・」
ルシアもルシアなりにクリシュナの事を心配していた。
今に始まったわけではないが、クリシュナの自己責任は家族が心配するほど重く感じている。ましてや3人も育ちざかりがいる女所帯の生計をほぼ一人で立てているせいか、居候のルシアにもわかるほど家計は安定している。出費が少ないのと、収入が平行線をたどってるせいだ。
「ルシア姉様。私もクリシュナ姉様に手を貸せないものですか?」
「やめときなさい。あんたまで行ったらテレポ狩りになんてならないわ。効率悪くなっちゃうもの・・・」
「そうですか・・・」
落胆して肩が下がるパルティナ。
「私だってサポートしてやりたいけど、バキューム使ったらかえって邪魔になるもの」
「私も似たようなものですね」とリンク。
苦笑するリンク。とてもじゃないがサポートしたくても姉クリシュナとはレベルが違いすぎるから、ともに狩りするなんてどだい無理な話だ。
「ところで。兄さんはその後ここに来た?」
「はい、パルティナが調子よくなってきてから一度・・・」
「なんか言ってた?」
「はい、実家に帰らないか? と・・・」
「ふーん」
パルティナの言葉にルシアは紅茶を飲みながら聴いていた。
「人の事言えないけど、うちら姉妹は結婚してないからねぇ。兄さんにしてみても心配なんでしょ」
ルシアはため息つきながら紅茶を飲み干す。
「ま、私は家事しなくていいなら結婚してもいいかな? とは思ってるけどねぇ」
「姉さんを前にして言いたくないけど、家事音痴の姉さんに似合う男ってほぼいないと思うよ」
リンクのため息混じりの返答に、ルシアは苦虫をかみしめたような顔でパルティナを見る。
「なんですか? 姉様。何か言いたげな顔してますよ?」
「あんたを怒らす気はないから言わない」
そう言いながら立ち上がるルシア。
「もう帰るんですか? 姉さん」
「そろそろ姉さん帰ってきそうな時間だからね。帰って愚痴ぐらい聴いてやらなきゃね」
そう言ってルシアは、ウィンク一つしてリンク宅を出て行った。
「へー・・・、クリシュナさんがハンターフライをねぇ・・・」
カンカンと鎚打つ音が響き渡る男所帯。セラフィーが製造してる背中を見るネリスとその姉ネイが見ていた。
「・・・で、その副産物でネイに武器を・・・ってかい?」
「本来私は二刀流ですからね。いい短剣が手に入る前で使えるものをって思ってネリスについてきたんだけど・・・」
「お姉ちゃんが使う武器ってなかなかないの」
「それで属性ダマを・・・ってかい?」
「うん。クリシュナ伯母さんが鋼鉄使っていいって言ってたから・・・」
ネリスはクリシュナがためた鋼鉄を持ってセラフィーに属性ダマスカスの製造依頼しに姉ネイとともに男所帯を訪ねてきていたのだ。
「ほら出来たぞ。とりあえず土と風だけだが過剰もしてある」
「わぁ・・・、精錬までしてあるー」
「お姉ちゃん! ところでセラフィーさん。おいくらですか?」
「成功報酬で1本1Mだな。悪いが水までは材料が足らんかった」
お金を渡すネリス。ネイは新しいダマスカスができて上機嫌である。
「ところで、なんで今頃ハンターフライなんだ? クリシュナさんなら廃鉱でスケルワーカー狩ってたほうが早いんじゃ?」
「買うならね。伯母さんは「私が出してやる!」って言ってそれっきり・・・」
「クリシュナさんらしいな」
笑って答えるセラフィー。
「うちの生活費はリューディーが稼いでるからな。お互い様だから何も言えんや」
「しかし一本1Mなんて・・・。安すぎません?」
ネイが出費を気にして尋ねた。
「うちは依頼品しか作らんし、生計立てるために製造してないし、身内から大金取る気はない」
「私も身内なんですね・・・?」
「そうさ。女所帯にいなくてもお前ら姉妹なんだろ? なら身内同然だ」
「ありがとうございます。大事に使わせてもらいます」
「いいってことさ」
そう言ってセラフィーはタバコに火をつけると、製造用具を片付けにはいった。
その帰り道、ネイはネリスに小声で話しかけた。
「あの人って、商売向きじゃないよね?」
「セラフィーさん? いつもあんな感じだけど、お金には困ってないって言ってたよ」
「へぇ・・・」
姉妹二人で帰る道すがら、ネイはそのままネリスとともに女所帯に入っていった。
「あらおかえり。ネイがくるなんて珍しいわね」
女所帯ではクリシュナが紅茶を飲んでいた。
「ネイ、あんたのお望みのものはあと1枚で完成するわよ」
「へ? 伯母さんハンターフライカードだしたの?」
「とりあえず2枚まではね。あんたが必要なのは3枚なんでしょ? もうちょい待ってね」
「言ってみるもんだ・・痛!」
お礼も言わない姉の横腹を肘で打つネリス。恥ずかしいらしく顔は真っ赤だ。
「何するのよ?! ネリス!」
「お礼が先でしょお姉ちゃん!」
二人のやり取りをみてクリシュナが笑う。
その直後女所帯のドアが開いた。
「ただいまー」
帰ってきたのはルシアだ。
「姉さん。パルティナ、調子いいって」
「あら、リンクのとこ行ってたんだ。それはよかった」
紅茶を飲み干した後、フレアがお客様用のティーセットをだして食卓に並べ、あらかじめ温めておいた紅茶を4人に振舞う。
「ところでネイ。あんたこんな時間にどうしたの?」
「いや、別に・・・。暇だから来た」
「暇だからって、うち来ても何もないよ」
クリシュナが言った直後ネイはクリシュナの目の前にカタールを置いた。
「なんだか早くできそうだから預けておくね。伯母様」
「ほいよ。完成したらネリスに届けさせるさね」
「じゃ、私帰るね」
そう言うが否や、ネイは女所帯を後にした。
「今度の花見にパルティナも付き合わせるか・・・」
クリシュナはそう言ってほほ笑むのであった。
その一角にあるクリシュナが主の女所帯。その主たるクリシュナは、ここ最近プロンテラの北にある迷宮の森に毎日足繁く通っていた。
もちろんメインのターゲットはハンターフライなのだが、それと同じくいろいろな冒険者がきているせいもあり、狩りの方はぜんぜん苦労しているのだった。
「はぁ・・・、今日も対抗はいっぱいかぁ・・・」
ため息混じりに木陰に腰を下ろして休むクリシュナ。その目の前を色々な職の冒険者がテレポートで入れ代わり立ち代わり現れては消えていく。
クリシュナ自体は朝からやってきていて、時間帯的にも一人だと感じているのだが昼になると一転して冒険者が現れ増えていく。クリシュナとしてもテレポートすれば鉢合わせになったり、ハンターフライが駆除された後に出くわす事も多かった。
彼女にしてみれば、廃鉱でスケルワーカーカードを出してきたように、副産物にも期待しているのだが、これと言って高額なドロップがあるわけでもなく、狩りのテンションはなかなか維持しがたいものであった。
まぁここ(迷宮の森3層目)では、テレポートでの狩りが主流で、ともすればバフォメットに鉢合わせになることもしばしばあるのだがクリシュナは相手にせずひたすらハンターフライを狩っている。ただ、ハンターフライ同様数が多いのはバフォメットJrである。こちらは呪いとディスペル、幻覚と少々腹の立つスキルで邪魔してくるが、倒す見返りとしてはオリデオコンは出るし、イグドラシルの実もでるのでスキルで応対している。
ただ、戦場としてはまちまちな地形に悩まされているがハンターフライを凌駕する金額で取引されるカードを持つMOBもいるので、一攫千金を目指すならこれ以上はない狩場の一つでもある。もっともそのせいで密集地帯で気をぬけば倒されてしまう危険性もあるので、制圧し続けては休息を取らないと狩りが続かないのも現実である。
クリシュナとしては人の少ない時間帯に行くわけではあるが、時間が経つにつれて増える冒険者に、頭を悩まされている。これが廃鉱だったら、対抗も少ないので何時間でもいられるわけなのだが、さすがに人気狩場であるここではそんなことは通用しない。平たく言えば早い者勝ちなのである。だからクリシュナも苦労こそすれ一攫千金と需要と供給に適したここに腰を据えているのである。
「キラーマンティスカードか・・・。いくらするんだろ?」
時折でるハンターフライとは別のカード。まとめ狩りのしている身なので、いつ何がカードを出したか一切わからない狩場。彼女は他にもウルフ、ポリン、ルナティックとカードを出したが経験上安い値段で取引されるカードである。
テンションこそ上がらないモノの、これがエンジェリングやデビルリング、アークエンジェリングがカードを出せばそれこそ一攫千金だ。だからクリシュナは、バフォメット以外のモンスターも倒してはいる。保険に持ち歩いてる白ポーションの重さを考えればハンターフライが落とす結構かたい皮なんて拾っていられない。廃鉱ではそんなこともないのでランタンも拾ってどれぐらい倒したかの目安になるのだが、ここでそれをするには白ポが邪魔になってしまう。だからクリシュナは余計なものは拾わず、価値のあるものだけしか拾ってはいない。他の冒険者も同じようなものだから、ここではハンターフライの残骸と結構かたい皮、ジャルゴンはテレポートするたびに見受けられる。
メカニックでもなければ拾っていられないドロップばかりだが、痕跡を残す人の方が多いのも実情。それだけここではハンターフライがそれこそ親の仇のように狩られていくのだ。
「ルアもラヘルで頑張っているんだ。私も頑張らなきゃ・・・」
休息を取り終えたクリシュナが立ちあがる。家長としての責任が重いが養う義務のある彼女は、自身を慕って居候している家族を守るためにも、今日も頑張って迷宮の森の3層目で必死にテレポ狩りを続けるのであった。
「まぁ! 姉様がネイちゃんのためにハンターフライを?」
「そうなのよ。だから帰ってきたらストレスで吐くこともあるのよねぇ・・・」
5兄弟の中間の立場にあるルシアは、リンク宅でパルティナとお茶していた。
「ルシア姉さんはこれからどうするのさ?」
フラウディッシュ家次男のリンクがパルティナの横で紅茶を飲んでいた。
「私なんてサポート型のソーサラーだし、行けるとこなんて限られてるわ。それこそリンクだって同じでしょ? あんたもサポート型のロイヤルガードなんだし・・・」
「それはそうなんですが・・・」
「姉様も兄様も一人で狩りするなんて珍しいものですからね」
微笑む末っ子のパルティナ。具合がよくなってからはよく笑うようになった。
「それにしても・・・。吐くまで狩りするなんてクリシュナ姉さんらしいな」
「そうなのよ。少しは肩の力抜いて姪っ子に頑張らせないといけないわ」
「それをしないのが姉様らしいですね。ねぇ兄様」
「家族を大事にする姉さんだからなぁ。いい加減にしないと胃に穴が開くんじゃないか?」
「それで済めばましよ。無理して体壊したら意味がないというのに・・・」
ルシアもルシアなりにクリシュナの事を心配していた。
今に始まったわけではないが、クリシュナの自己責任は家族が心配するほど重く感じている。ましてや3人も育ちざかりがいる女所帯の生計をほぼ一人で立てているせいか、居候のルシアにもわかるほど家計は安定している。出費が少ないのと、収入が平行線をたどってるせいだ。
「ルシア姉様。私もクリシュナ姉様に手を貸せないものですか?」
「やめときなさい。あんたまで行ったらテレポ狩りになんてならないわ。効率悪くなっちゃうもの・・・」
「そうですか・・・」
落胆して肩が下がるパルティナ。
「私だってサポートしてやりたいけど、バキューム使ったらかえって邪魔になるもの」
「私も似たようなものですね」とリンク。
苦笑するリンク。とてもじゃないがサポートしたくても姉クリシュナとはレベルが違いすぎるから、ともに狩りするなんてどだい無理な話だ。
「ところで。兄さんはその後ここに来た?」
「はい、パルティナが調子よくなってきてから一度・・・」
「なんか言ってた?」
「はい、実家に帰らないか? と・・・」
「ふーん」
パルティナの言葉にルシアは紅茶を飲みながら聴いていた。
「人の事言えないけど、うちら姉妹は結婚してないからねぇ。兄さんにしてみても心配なんでしょ」
ルシアはため息つきながら紅茶を飲み干す。
「ま、私は家事しなくていいなら結婚してもいいかな? とは思ってるけどねぇ」
「姉さんを前にして言いたくないけど、家事音痴の姉さんに似合う男ってほぼいないと思うよ」
リンクのため息混じりの返答に、ルシアは苦虫をかみしめたような顔でパルティナを見る。
「なんですか? 姉様。何か言いたげな顔してますよ?」
「あんたを怒らす気はないから言わない」
そう言いながら立ち上がるルシア。
「もう帰るんですか? 姉さん」
「そろそろ姉さん帰ってきそうな時間だからね。帰って愚痴ぐらい聴いてやらなきゃね」
そう言ってルシアは、ウィンク一つしてリンク宅を出て行った。
「へー・・・、クリシュナさんがハンターフライをねぇ・・・」
カンカンと鎚打つ音が響き渡る男所帯。セラフィーが製造してる背中を見るネリスとその姉ネイが見ていた。
「・・・で、その副産物でネイに武器を・・・ってかい?」
「本来私は二刀流ですからね。いい短剣が手に入る前で使えるものをって思ってネリスについてきたんだけど・・・」
「お姉ちゃんが使う武器ってなかなかないの」
「それで属性ダマを・・・ってかい?」
「うん。クリシュナ伯母さんが鋼鉄使っていいって言ってたから・・・」
ネリスはクリシュナがためた鋼鉄を持ってセラフィーに属性ダマスカスの製造依頼しに姉ネイとともに男所帯を訪ねてきていたのだ。
「ほら出来たぞ。とりあえず土と風だけだが過剰もしてある」
「わぁ・・・、精錬までしてあるー」
「お姉ちゃん! ところでセラフィーさん。おいくらですか?」
「成功報酬で1本1Mだな。悪いが水までは材料が足らんかった」
お金を渡すネリス。ネイは新しいダマスカスができて上機嫌である。
「ところで、なんで今頃ハンターフライなんだ? クリシュナさんなら廃鉱でスケルワーカー狩ってたほうが早いんじゃ?」
「買うならね。伯母さんは「私が出してやる!」って言ってそれっきり・・・」
「クリシュナさんらしいな」
笑って答えるセラフィー。
「うちの生活費はリューディーが稼いでるからな。お互い様だから何も言えんや」
「しかし一本1Mなんて・・・。安すぎません?」
ネイが出費を気にして尋ねた。
「うちは依頼品しか作らんし、生計立てるために製造してないし、身内から大金取る気はない」
「私も身内なんですね・・・?」
「そうさ。女所帯にいなくてもお前ら姉妹なんだろ? なら身内同然だ」
「ありがとうございます。大事に使わせてもらいます」
「いいってことさ」
そう言ってセラフィーはタバコに火をつけると、製造用具を片付けにはいった。
その帰り道、ネイはネリスに小声で話しかけた。
「あの人って、商売向きじゃないよね?」
「セラフィーさん? いつもあんな感じだけど、お金には困ってないって言ってたよ」
「へぇ・・・」
姉妹二人で帰る道すがら、ネイはそのままネリスとともに女所帯に入っていった。
「あらおかえり。ネイがくるなんて珍しいわね」
女所帯ではクリシュナが紅茶を飲んでいた。
「ネイ、あんたのお望みのものはあと1枚で完成するわよ」
「へ? 伯母さんハンターフライカードだしたの?」
「とりあえず2枚まではね。あんたが必要なのは3枚なんでしょ? もうちょい待ってね」
「言ってみるもんだ・・痛!」
お礼も言わない姉の横腹を肘で打つネリス。恥ずかしいらしく顔は真っ赤だ。
「何するのよ?! ネリス!」
「お礼が先でしょお姉ちゃん!」
二人のやり取りをみてクリシュナが笑う。
その直後女所帯のドアが開いた。
「ただいまー」
帰ってきたのはルシアだ。
「姉さん。パルティナ、調子いいって」
「あら、リンクのとこ行ってたんだ。それはよかった」
紅茶を飲み干した後、フレアがお客様用のティーセットをだして食卓に並べ、あらかじめ温めておいた紅茶を4人に振舞う。
「ところでネイ。あんたこんな時間にどうしたの?」
「いや、別に・・・。暇だから来た」
「暇だからって、うち来ても何もないよ」
クリシュナが言った直後ネイはクリシュナの目の前にカタールを置いた。
「なんだか早くできそうだから預けておくね。伯母様」
「ほいよ。完成したらネリスに届けさせるさね」
「じゃ、私帰るね」
そう言うが否や、ネイは女所帯を後にした。
「今度の花見にパルティナも付き合わせるか・・・」
クリシュナはそう言ってほほ笑むのであった。
by lywdee | 2017-03-14 14:06 | Eternal Mirage