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カテゴリ:Eternal Mirage( 220 )

 

Eternal Mirage(215)

 桜舞う季節を迎えたプロンテラ。それとは無縁の地にネイ、ネリス姉妹は春でも暑い日が差すモロクに来ていた。
「お姉ちゃーん、まだぁー?」
「ん? もう少しよ。あとでアイス買ってあげるからおとなしくついてきて」
 わずかな手持ち袋をもつネイが、大量の荷物をカートに載せたネリスを引き連れる。
 二人はモロクの街を北西に向かって歩いていた。するとネイがネリスを外に残し、一軒の民家に入っていった。

「これでよし! やっと部屋が片付いたわ」
「ナーハト、元気してた?」
「きゃあ!」
 ネイは薄暗い部屋の中にいた一人のギロチンクロスの女性に背後から抱きついた。
「セリス! いつからそこにいたの?!」
 ネイの事をセリスと呼んだギロチンクロスの女性は飛びのいてベッドに背中から倒れた。
「あー・・・、まだ私の事セカンドネームで呼ぶのね。相変わらずね、ナハトは・・・」
 ネイはナハトと呼んだギロチンクロスの女性を引き起こし、ベッドに飛び乗って彼女の顔を見た。

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「うちに来てまで何の用よ?」
「つれないなー。いいじゃん、アサシンギルドの同期だし、ナハトにしか頼めない事だってあるんだから」
 顔をそむけたナハトファルター(以後ナハト)に対して、ベッドで頬杖ついて微笑むネイ。
「はいはい・・・、どうせ猛毒の瓶でも作ってくれとでも言いたそうね? 材料は持参よ。わかってるでしょ?」
「さっすがナハト、話が早い」
「同期じゃなかったら追い出してるわよ。セリスもわかってるでしょ?」
 両手を腰に当てネイをにらむナハト。それに対しベッドから起き上がり「ははは」と照れ笑いするネイ。
「材料はその袋に入ってるのね? ふむ、これなら1時間もあればすぐ終わるわね」
「あはは・・・それが・・・、材料は外にもあるんだけど・・・」
「はぁ!? モロクで荷物を置いてるなんて盗まれたいの! 今すぐ持ってきなさい!」
「だーいじょうぶよー。妹が見てるから。いっぱいあるからついてきて」
「妹?」
 ナハトはいぶかしんでネイとともに外に出た。
「お姉ちゃーん! おっそーい!」
「ごめんごめん。あ、ナハト、この子うちの妹ね」
「ネリスと言います。お姉ちゃんの親友だって聞いて・・・」
「セリス! あんたこんな小さな子を外で待たせてたの?! 信じられない!」
「ははは」と苦笑いするネイ。ネリスはその剣幕に押され、口をぱくぱくしてたが、当のナハトはネイの首を絞めてた。
「ネリスちゃん、暑かったわよね? 中に入って冷たいジュースでもだすわ。セリス! あんたは材料を私の部屋に運んで!」
 そう言ってナハトはネリスを連れ家の中に入っていった。

 30分後。

「ナハト―、全部いれたよ」
「ほんとどうしようもないお姉ちゃんね・・・。ネリスちゃん、苦労してるでしょ?」
 ナハトは食堂でネリスとジュースを飲んでいた。もちろんネイに聞こえるようにわざと無視してしゃべっていた。
「ナーハート―・・・! 聞いてるぅ!」
「はいはい・・・、で、何十個作ればいいわけ?」
「とりあえず500個分もってきた。ナハトならすぐでしょ?」
「はぁ! 何言ってるの! 500個分何て! 1日じゃ終わらないわよ! 何考えてるのさ?!」
「ほらお姉ちゃん、やっぱり怒ったでしょ」
 ジュース片手に呆れるネリス。
 毒の知識はないものの、伯母であるルシアがコンバーター作るときもかなり時間がかかることを知っているネリスは、ため息ついてネイの顔を見ていた。
「私はセリス担当の毒師じゃないのよ! 手数料取るわよ!」
「そこはその・・・、同期のよしみで・・・」
「同期じゃなかったら追い返してるわよ! まったく・・・」
 文句を言いながら作業に入るナハト。その後ろでちらちらと製毒作業を見るネイ。
「気が散るからベッドで寝てなさい! それが嫌なら外で時間つぶすなり帰るなりして!」
 ふと沸いた疑問。ネリスはネイに「お姉ちゃんは作れないの? 同じギロチンクロスなのに・・・」と聞いた。
「あーそれは・・・」
「製毒試験で赤点取ったのよ、セリスは・・・」
「ナハト! それ言っちゃダメ―!」
 ネイは顔を真っ赤にしてネリスの耳をふさいだ。まぁ手遅れではあるが・・・。
「実技じゃ負けるんだけどねー。製毒になるとさっぱり・・・うぐぐっ!」
 ネイはナハトの口を両手でふさぐ。
 その光景を見てネリスは笑った。
「お姉ちゃん。邪魔になるから帰ろ? どうせお姉ちゃん一人じゃ持ち帰れないんでしょ?」
「うーん・・・、仕方ない。ナハト、私達帰るわ」
「そうして。明日の昼にはできてると思うわ」
 そうこうして、二人がプロンテラに帰ったころには日がとっぷりと暮れていた。

 時間は戻って、夕方のプロンテラでは・・・。

「なんだ、帰ってたのか」
 ル・アージュの実家の廊下ですれ違う親子。
「帰ってちゃ悪いの? ここ私の家よ?」
「別に・・・。ゆっくりしてけ」
「な?!」
 口数少なく書斎に入っていくアレス。ル・アージュは拍子抜けな感じで居間に戻って行く。
「なんなの? 一体・・・?」
 居間ではル・アージュの姉「ファ・リーナ」と母「サラスヴァティ」の二人が待っていた。
「どうしたのルア? きょとんとして・・・」
 ファ・リーナが椅子に座る妹をみて声をかけた。
「いや、父さんが・・・」
 姉の顔を見て書斎を指さすル・アージュ。
「感じ変わったでしょ? お父さん」
「うん、てっきり愚痴を言われるかと・・・。どうしたのさ? 母さん」
 腰を下ろして母に問いかけるル・アージュ。
「いろいろあってね」
 そう言ってサラスヴァティは微笑んだ。
「パルティナに説教されて、お父さんも少し反省したのよ。ルアが自由に帰れるようにね」
「ふーん」
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「勘違いしないであげて。お父さんはお父さんなりにルアの事考えてるのよ」
「それは・・・、わかってるつもりだけど・・・」
「だったら話すけど、お節介になるけど聞いてくれる?」
「うん」
「お父さんはね、その気があれば彼氏さんとうちで暮らしてもいいとお父さんは言ってるのよ」
「はぁ?!」
 ル・アージュは顔を真っ赤にして立ち上がった。
「わわわ私達まだそんな関係じゃ・・・」
「でも付き合ってるんでしょ?」
「そうだけど・・・でも!」
「落ち着いて聞いて。彼氏さんにも聞いたけど、二人ともまだ住む家決まってないんでしょ? お互い家は違うけど居候の身なんだし、新しい家が決まるまではここで暮らしていいとお父さんは言ってるのよ」
「ま、まま、まだお互い新居だなんて・・・」
 もう恥ずかしくてル・アージュはしどろもどろに答える。
「ふふふ、ルアも大きくなったって事よね。お母さんはうれしいわ」
 サラスヴァティはなおも話を続ける。
「子供の頃は、お父さんにずっと付きまとってたのに、騎士になって反抗期迎えて・・・、義姉さんの所で大きく育っちゃって、お父さんはちょっと悔しがっていたのよ」
「父さんが悔しがる? なんで?」
「ふふふ、義姉さんに預けたことで、騎士としても女としても立派に育っちゃって、親なのに何もしてやれなかったってね」
「父さんがそんなことを・・・」
「だから強がって、先を考えて、結果離れていっちゃったってことにね」
「ルアが伯母様の家に逃げた時から、お父さん痩せちゃったのよ」
 ファ・リーナがル・アージュの手をとって微笑む。自身も姉として何もできてないと思っていたからだ。
 しかし、ル・アージュはそれだけですぐ変われるほど強くはなかった。
「今はまだ無理かもしれないけど、お父さんのことをあまり悪く取らないでね」
「母さんがそういうなら・・・、でも・・・」
「いいのよ少しずつで。ただお父さんも反省してるようだし、悪く取らないであげてね」
「うん、わかった」

 時同じくして男所帯では・・・。

 カーン! カーン! カーン! と鎚の音が響くセラフィ―の工房。そこにメカニック「セラフィー」と鎧姿のロイヤルガード「リューディー」がいた。
「そうか、まだ出ていかないんだな」
「ああ、今はまだお互い結婚式も新居への引っ越しも考えてない。むしろ仕事の方が増えちゃってな。それどころでもない」
「まぁ、なんだ。新婚費用に金貯めなきゃいけないんだろ? うちらの生活費はどうとでもなる。いつまでいても困らんから、二人でゆっくり話してればいいさ」
「すまないな・・・」
「別に謝ることでもないさ。今日明日にでも出てくってわけでもないし、そういうことは出ると決まってから言えばいいさ。・・・と言うことは?」

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「当面の間は軍同行だわ」
「新人担当ってことかい?」
「そうなる。とくにオートスペル部隊に入りたい新人が増えてな、グランドクロス部隊の大半がそれぞれ新人をつけられることになったから私もその中に・・・。細かいことは軍規の都合でしゃべれんが、ヴァーシュも女性限定の部隊に配属されるから、お互い忙しくてそれどころじゃなくなった」
 ため息混じりのリューディーの言葉に、セラフィ―はねぎらいの言葉しかかけてやれなかった。
 まぁ二人が正式に付き合うことになり、うれしさ半分間が悪かった点も否めないが、この二人は同じ部隊の期間が長かった分会えない時間が増えるのは覚悟していた感があるとセラフィーは思っていた。
 だが、リューディーがマスタークルセイダーに婚約したとヴァーシュとともに挨拶に行った分、休暇だけは会えるよう、お互いの休暇は合わせてもらっているらしかった。
「ヴァーシュはなんと言ってるんだい?」
 そこにルーンナイトの「白鳥 悠」が声をかけてきた。
「ヴァーシュとは休暇しか会えないが今は仕方ないと・・・」
「まぁお互いの気持ちが固いのは知ってる。娘を幸せにしてくれるなら、私からは何も言わない」
「助かります、旦那」

 そして翌日。

「ネリスー! お姉ちゃんだよー!」
 女所帯の玄関でネイが叫ぶ。
「お姉ちゃん、声がでっかい!」
「そんなことより、今日も付き合ってくれるんでしょ?」
「お姉ちゃん一人じゃ持ちきれないんでしょ? わかってるって」
 昼日中からの姉妹の会話。
「早く行かないとまたナハトに愚痴言われるからね。さっさと行って用事済ませましょ」
 こうして二人がカプラサービスの元へと歩いて行く。
 そこへ見慣れた髪型のルーンナイトが走ってくる。ル・アージュだ。
「あら、ネイ姉さんネリスとどっか行くの?」
「ちょっとモロクまでね。それより、ルアこそどうしたのよ? そっちからくるって事は大聖堂にでも彼氏に会いに行ってたのかしら?」
「残念。お姉ちゃんを大聖堂まで乗っけてった帰りよ。昨日は実家で寝てたから・・・」
「へー、珍し。じゃあ私達行くわ。また今度ねー」
 そう言ってネイとネリスは出かけて行った。

 その頃大聖堂では・・・。

「あら、リーナちゃん。早かったわね。もうじき交代の時間かしら?」
「パルティナ叔母さんこんにちわ。ルアにここまで乗せてもらったんですよ。それで予定より早く・・・」
「へー、兄様何か言ってたのかしら?」
「ルアにね、たまには顔出せ程度のことは言っていましたが、なにか?」
「とくになんとも・・・、あ、刹那君こんにちわ」
「お、こんにちわ」
 ちょうど大聖堂の祭壇前で揃うアークビショップの3人。
 聖堂内では他にもABはいるのだが、派閥があるわけでもなく雑談している者は少なくはないが、そこは大聖堂、プリーストやハイプリーストの面々はそれぞれお付きのABに指導してもらっているらしい。
 中でもプリーストにいたっては、世にいう冒険者でありながら大聖堂の仕事をもらっている者もいる。つまり退魔指導や支援の勉強を先輩であるABに見てもらっているというのが正しいのだろう。
「ギルドにでも入ってりゃハイプリーストになるのも早いものを・・・。いっそのことファ・リーナも支援ではなく退魔ABにでもなってればいいのにな」

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「時津先輩には言われたくありません!」
「そっか? 支援だと一人だときついだろうと思っただけなんだがな」
「刹那君、退魔だけが司祭の仕事ではないのですよ」
「パルティナ様に言われると反論できませんな。ところで、レイを見なかったか? そろそろ孤児院から戻ってくるはずなんだが・・・?」
「さぁ? 私たちも今しがたきたばかりなので・・・」
 周囲をきょろきょろと見渡す3人。そこへ来たのは渚 レイではなく、一人のシスターだった。
「すいません、時津神父、渚神父からこれを・・・」
 そう言ってシスターは、時津 刹那に手紙を渡した。
「何かあったのですか?」
「ああ、孤児が一人波にさらわれたらしい。急いでロイヤルガードのグリフォン部隊に連絡してくれとのことだ」
「あら大変! すぐにでも聖騎士団に連絡を・・・!」
「ファ・リーナはすぐ聖騎士団を大聖堂前まで連れてきてくれ。私は現地のポタを取ってくる。急いでくれな」
「はい!」
 こうしてファ・リーナは王宮に向かい、事情を説明して一個師団のグリフォン部隊を大聖堂前へとワープポータルで送る。その頃には時津 刹那も大聖堂入り口で待機していた。
「ポタを出します!」
 時津 刹那がワープポータルを展開し、光の柱にRG部隊とともにファ・リーナと時津 刹那も柱の中に飛び込む。

 結果グリフォン部隊が到着したことで海上に浮かぶ渚 レイと孤児1名が発見される。
 事なきを得た司祭やシスターたちが急いで救出した二人を大聖堂へとワープポータルで送る。
 後日、渚 レイが風邪を引いた程度で問題は解決した。まぁ渚 レイが孤児を抱え海上に立ち泳ぎで浮いていたおかげで発見は早かったので、これはこれで正解だったのだろう。
 最後に、ファ・リーナがル・アージュにこのことを伝え、ル・アージュはしばらく騎士団に休暇をもらい渚 レイの看病をしていたことを伝えよう。

 プロンテラは桜が舞い散る季節にはいっていた。

  by lywdee | 2019-03-29 20:52 | Eternal Mirage | Comments(1)

Eternal Mirage(214)

 ミッドガルドは冬となり、プロンテラなどはすでにクリスマスを迎えるべく、そこかしこでクリスマスツリーやゲートを飾り始めていた。

 そんなプロンテラの一角、女所帯でも変化をもたらしていた。
「ルア姉、ずいぶん髪のびたね」
 女所帯のお財布係り、スーパーノービスの「ネリス」が居間にいるルーンナイトの「ル・アージュ」の赤い髪を見つめていた。
 血縁上、フラウディッシュの血筋はみな髪が赤い。青い髪はシャナ家の血筋か、修羅の「クリシュナ」ル・アージュの母アークビショップの「サラスヴァティ」その娘にてル・アージュの双子の姉「ファ・リーナ」シャナ家の当主にてクリシュナらの母ぐらいである。
 フラウディッシュの血縁、「ル・アージュ」その父「アレス」そしてアレスの兄弟ソーサラーの「ルシア」ロイヤルガードの「リンク」アークビショップの「パルティナ」そしてリンクの娘「ネリス」の6人が遺伝の関係上赤い髪なのである。
 そして「リンク」の娘にしてネリスの姉ギロチンクロスの「ネイ」と二人の母が青い髪である。
 話は戻るが、髪の色という遺伝は差し置いといて、女所帯はしばらくル・アージュだけがショートカットだったのが、ここ数か月の間にル・アージュもサイドテールにするぐらい髪が伸びていた。
「んー、うちはみんな長髪だからね、私だけショートカットゆーのもなんだし、また伸ばそうかなーってね」
 そう、もともとポニーテールだったル・アージュは、伯母であるクリシュナがポニーテールにするということで一度はばっさり切った髪だったが、家族全体が長髪の為、ル・アージュも髪を伸ばすべく毛先だけ揃える程度にしか髪を切っていなかったのだ。
「私ってほら、ヴァルキリーフェザーバンド使ってるじゃない。だからサイドテールの方が邪魔にならないし・・・
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レイさんも「綺麗な髪ですね」って言ってくれたからもう一度伸ばそうと・・・ってね」
「ふーん」
「ネリス、女ってね、好きな人がいると変わるものなのよ」
 ル・アージュとネリスの会話にルシアが割り込む。
「ルシア伯母さんも好きな人がいるの?」
「いや、私はクセっ毛でね。ショートカットだとはねるのよ。だから切らないの」
 ネリスの目の前で後ろ髪を束ねてるすそをひらひらと見せるルシア。
 そんなルシアでさえクラシカルリボンが目を引く赤いロングヘアーであるのだ。
 ネリスにしてみても、身の回りの女性たちがロングヘアーであり、自身もロングヘアーなのだから伸ばしていたのだ。しかもネリスの姉ネイもまた母も綺麗なロングヘアーなのだから、今更ショートカットにする気にはなれなかったのだ。
 ネリスいわく、「髪の長い女性は綺麗に見える」という持論がある。とくにヴァーシュのように銀髪のロングヘアーは同じ女としても嫉妬するほど美しく見えていたのだ。
「そう言えばヴァーシュは? 朝からみてないけど・・・」
「ヴァーシュ姉ならセラフィーさんとこ行ったよ」
「武器の手入れ?」
「ううん。墓参りがどうとか・・・」
 紅茶を飲みながらネリスは答えた。

 その頃・・・。

「母上。私、この方と一緒になることを選びました。ご安心ください」
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「娘さんをもらいます。きっと幸せにしてみせます」
 プロンテラ大聖堂の裏手にある墓地ににて、ヴァーシュとリューディーの二人は、ヴァーシュの母の墓前に花束を供えていた。
「さて、行くか・・・」
「はい!」
 二人は墓地を後にすると、プロンテラの中心街までゆっくりと歩いて行った。
「私としては好都合だったが、まさか二人そろって休暇がもらえるとはな・・・」
「そうですね。最近平和だったからそのせいでは?」
「たぶんな」
 二人は道すがら当たり障りのない会話を続けてプロンテラの中心街まで来た。
「任務以外で二人で歩くこともないからな。たまには二人で飯でも食うか?」
「そうですね。りゅーさんが行きたいところでしたら私も付き合いますよ」
 ヴァーシュが腕を組んでリューディーに寄り添うと、二人は顔を紅潮させどちらからともなく顔を見合わせて微笑んだ。
「しかし意外だったな」
「何がです?」
「いや、まさか私のグリフォンとヴァーシュのグリフォンが子供を産むなんてな」
「そうですね。軍は少年兵用にしたいそうですよ」
 クスクスと笑うヴァーシュ。
 リューディーもつられて笑ったが、少年少女がロイヤルガードになるのがいいことなのか、正直バツが悪そうにゴホンと一つ咳ばらいをするのであった。
「リューサンはこれから忙しくなりそうですね」
「まったくだグランドクロス部隊はオートスペル部隊と一緒になる噂があるし、少年兵の半数以上がオートスペル部隊らしいからな。指導が大変だ」
 ため息一つつくリューディー。
 いつもなら小隊規模の部隊による行動がおもだったが、遊撃部隊としての自由度が無くなることに少々抵抗感があった。
 ヴァーシュはヴァーシュで女性のみの部隊による任務が本格的に始動するとなって、今後リューディーと組んだ任務がとれなくなるのではと危惧していた。
「まぁ休みの日まで任務が気になるようじゃ、お互い軍人気質に染まってきているってことだ。今日くらいは軍の事を忘れて休みを満喫するか・・・」
「はい!」

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「ヴァーシュもルアも、会う度に綺麗になってくなぁ」
 溶鉱炉に石炭をくべつつセラフィーが独り言ちる。
「気になります?」
 そばでグロリアを詠唱していた渚 レイがセラフィーに問う。
「気にならんと言えば嘘になるが、女って男ができると綺麗になるという話が本当のようだなって・・・」
「そうですね。お義母さまにも同じことを言われました」
「挨拶に行ったそうだが、ルアの家豪華だったろ?」
「はい。伺ってみて初めてルアさんがご令嬢だったことを知りました」
「本人は否定してるがな」
 二人は笑って立ち上がった。
「よし! 風チェインの過剰も終わった。レイ、受注品は確かに出来上がったぞ」
「お疲れ様です。では大聖堂に行きましょうか」
 渚 レイがワープポータルを展開する。光の柱が立ち上ると、二人はチェインを担ぎ、光の柱に身を投じた。
 光の柱はプロンテラ大聖堂の目前に通じていた。二人は大聖堂に入ると雑談をしながら奥へと向かって行った。
「今は火チェインより風チェインの方がいいのか?」
「はい、アコライトの体力じゃホードの属性攻撃に耐えられませんからね。イズルードのバイラン島では耐えられますから、モンク志望の子以外はバイラン島に行きますね」
「そうなんだ?」

 コンコン

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「大司教様、街の精錬工をお連れしました」

 ギィ・・・

「おお! 待ちかねたぞ。依頼品はできたのだな?」
「はい。ここに・・・」
「過剰風チェイン星二つ入り、依頼通り10本おもちしました」
 そう言ってセラフィーは、大司教の机に上に10本のチェインを置いた。
 それを大司教らが手にしたり降ったりして確かめると、大司教はセラフィーの両手をつかみ、上下に振った。
「急な依頼に応えてくれたことに感謝する。・・・で、報酬は本当にあの額でいいのだな?」
「はい。成功報酬500万ゼニーで間違いなく」
「うむ、あまり大きな額は用意できないなか、こちらの予算より安く作っていただき心から感謝する」
「噂通りの精錬工だな。星入りで作っていただけるとは・・・」
 大司教らの称賛を浴びながら、セラフィ―はシスターから報酬を受け取る。
「親友の頼みとあらば、受けないわけにはいきませんからね。では確かに・・・」
 報酬を受け取ると、セラフィ―は静かに大聖堂を後にするのであった。

 そしてミッドガルドは、まもなく新年を迎えることとなる・・・。

  by lywdee | 2018-12-09 06:14 | Eternal Mirage | Comments(0)

お詫び

 南の住人くりしゅなです。

 今日書いた読み切り小説、構想はちゃんとしてたんですが、改めて自分で見るとちょっとお目汚してきなできばえなので申し訳なく思います。

 ちょっと話が突飛すぎるし、展開も早すぎた。そのうえル・アージュと渚 レイの実家挨拶も書けてない。

 簡潔に言えば「手抜き」に見える。

 次書くときはもっと構想練ってから進めたいと思います。 申し訳なす。

  by lywdee | 2018-05-01 23:37 | Eternal Mirage | Comments(0)

Eternal Mirage(213)

 桜舞い散る初夏のプロンテラ。今日は男所帯が午前からにぎわっていた。
 ・・・と言うのも、ヴァーシュとル・アージュが朝から来ていたからだ。

「よく来たな、ヴァーシュ」
「はい、父上」
「旦那。ヴァーシュと正式に付き合うことになったから、遅くなったが挨拶に来た」
 男所帯の白鳥 悠の部屋に、私服姿のリューディーとヴァーシュが入ってきた。
 それというのも、二人はお互いの気持ちを確認したまではよかったが、その後任務が重なりなかなか二人そろっての休みが取れなかったせいでもある。
「とりあえず同棲はしないがここにはちょくちょく来ると思う」
「そうか、まぁ今更だが交際は認めるし、お前さんなら安心して娘を任せられるからな。とくに反対はせんよ」
(あらいい槍)
 リューディーと白鳥が話し合ってる中、ヴァーシュは白鳥の槍、アルシェピースに視線が取られた。
「今のところ男所帯を出るまではしないが、いいところが見つかれば二人で暮らすかもしれない。もっとも、結婚してからここを出るかもしれませんが・・・」
「なぁに、二人で決めてくれればそれでいいさ。私からは何もないし、ヴァーシュが幸せなら何も言うまい」
「恐縮です」
 軽く会釈するリューディー。
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「安心しろ、お屋敷を出た身だ。子供に過度な期待はせんよ」
「あらやだ父上、子供だなんて・・・、まだ早いですわ」
 そう言ってヴァーシュは、顔を紅潮させアルシェピースをくるくると回した。
(いつの間に?!)
 二人は同時に同じことを思った。

 時同じくして同じ男所帯の中で、ル・アージュは渚 レイの部屋に通されていた。
「へー・・・、レイさんの部屋ってこんなだったのか・・・」
 初めて入る異性の部屋に、ル・アージュは感嘆な声をあげた。
「何もお構いできませんが、お茶でも持ってきますね」
 そう言って渚 レイは部屋を出ていった。
(司祭の部屋ってこんなものなのだろうか? そう言えばお姉ちゃんやパルティナ叔母さんの部屋って見たことないや)
 ル・アージュはイメージ的に司祭の部屋って十字架やご神体があるものだと思っていたが、割と普通なんだな・・・と思っていただけに、殺風景な渚 レイの部屋をきょろきょろと見まわしていた。
 ただ、最初は椅子に座っていたル・アージュだったが、そのうち落ち着かずうろうろと渚 レイの部屋を見て回っていた。
「何もない部屋で驚いたでしょう?」
「へっ?!」
 いつの間にか戻ってきた渚 レイの声に、ル・アージュは驚いてしまった。
「私自身部屋をどうこうしようかなんて考えたこともなかったですからね」
 渚 レイは何食わぬ顔をして、ル・アージュの立っているところにある小さなテーブルに紅茶を二つ置く。その後ベッドの横に立つと思い出したように手をポンっと叩く。
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「正式に付き合うためにも、まずはご両親には挨拶しないと・・・」
「う、うちに来るの?」
「はい」
 真面目に答える渚 レイの言葉に、ル・アージュはどぎまぎして椅子に腰かけた。
「私の実家は母しかいませんから後でもいいですね。ルアさんの所は先に顔を出した方がいいでしょう」
「うちかぁ・・・、気が重いなあ」
「まぁ早いうちにご両親に会いましょう。とりあえず紅茶が冷めないうちにどうぞ」
 渚 レイに促されるまま紅茶を口にするル・アージュ。
(うー・・・。うちに帰るのはいいとして、おやじの事だから絶対ぐちぐちとうるさいだろうからなぁ。なんかいい方法ないかなぁ)
 ル・アージュは紅茶を飲みながら少々考え事を始めた。
(クリシュナ伯母さん連れてくと絶対おやじと喧嘩はじめるだろうし、ルシア叔母さんだと小言で会話が進まないだろう。多分・・・)
「ルアさん?」
(そうだ! パルティナ叔母さんに頼もう! パルティナ叔母さんならやんわり話が進むはず!)
「そうだそうしよう!」
「?」
 考えがまとまるといきなり立ち上がるル・アージュ。
「ルアさん。何か考え事でも?」
「あ、こっちのこと・・・。レイさん、明日休み?」
「はい。それが何か?」
「挨拶は明日の午後行こう。それと、私ちょっと用が出来たから帰るね。紅茶ごちそう様」
 ル・アージュはそう言うと渚 レイの部屋を飛び出した。
「あ、セラフィ―さん。ヴァーシュに先帰っててって伝えといて!」
「お、おう・・・」
 工房で精錬の準備をしていたセラフィ―に一声かけると、ル・アージュは取り急ぎ男所帯を後にした。
「何かあったのか?」
「さぁ?」
 セラフィーは紅茶セットを乗せたお盆を持って厨房に行こうとした渚 レイに声をかけたが、当の渚 レイもわからず二人して首をかしげるのであった。

「・・・と言うわけなのよ叔母さん」
「ルアちゃんのお願いはわかったけど、私なんかでいいの?」
「パルティナ叔母さんじゃなきゃ話がこじれたときやんわりといかないもの。こればっかりはクリシュナ伯母さんにもルシア叔母さんにも頼めないわ」
 パルティナは自室の椅子に腰を下ろし、不意に微笑んだ。
「杞憂だと思うんだけどなぁ。兄様ならもう大丈夫だと思うわよ?」

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「それに、兄様も喜んでたわ」
「喜ぶ? 何が?」
「ルアちゃんはルアちゃんで、ちゃんと彼氏見つけたんだなぁって」
「へ?」
「あの後私、実家に顔を出してきたのよ。そのとき兄様もいたから、それとなくレイ君のこと伝えたのよ」
「えええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!」
 素っ頓狂な声をあげるル・アージュ。
「そしたら兄様ったら、ルーンナイトじゃないことにがっかりしたけど、『アークビショップならまだましか』って。顔には出してないけど喜んでたのは事実よ」
 微笑んでル・アージュの顔を見るパルティナ。ル・アージュにいたっては顔がトマトのように真っ赤になってる。
「だから大丈夫だと思うわ」
「でもでも! なんかあったら怖いからパルティナ叔母さんも付き合って!」
「はいはい」
 悪びれなく笑う叔母を前に、ル・アージュはため息ひとつついた。
「じゃあ私、母さんにおやじの事頼みに行くから、明日よろしくね」
 こうしてル・アージュは、微笑んでるパルティナを残し、リンク宅を出ていった。

「ふー、そうかぁ・・・。二人とも考えは一緒か・・・」
 タバコをふかしながらセラフィーはリューディーと渚 レイの顔を見た。
「ま、女性と付き合うとなれば、うちじゃうるさいだろうしなぁ」
「悪いな。急ぎじゃないが当面の生活のめどが立つまではここにいるが、結婚してからはここじゃ住めない」
「私も同意見です。男所帯に女性を住まわせるには暑いですからね」
 セラフィーとしても、男ばかりで気兼ねなく精錬するのには困らなかったが、二人が女性と付き合いだすのがほぼ一緒ということに頭を抱えた。
 もっとも、リューディーと渚 レイがいなくとも男所帯の生活は成り立ってるし、別に食事に困ることもない。
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「それでも、二人に出ていかれるのは痛いな」
「何か問題でも?」
 セラフィーの発言に渚 レイは頭をかしげた。
「何、大したことじゃない。エルニウムのあてと飯の準備が遅くなるだけの話さ」
 セラフィーは灰皿にタバコを捨てると、ソファーに座ってため息をついた。
「まぁ急ぎじゃないし、なんとかなるだろ」
 男所帯の主として、同居人が減るのがうれしいわけもなく、セラフィ―は心から二人を祝福した。
「結婚式には呼んでくれよ?」
「だからまだ先だって・・・」
「わかってる。冗談だよ」
 呆れるリューディーにセラフィーは笑って答えるのであった。

  by lywdee | 2018-05-01 16:13 | Eternal Mirage | Comments(0)

Eternal Mirage(212)

 粉雪舞う1月の終わり、プロンテラの朝はまだ肌寒い日が続く。そんな寒さの中、男所帯のアークビショップ「渚 レイ」は朝も早く大聖堂にいた。
(主よ、お許しください。私は神に仕える身でありながら一人の女性を愛してしまったようです。しかしこの気持ちを伝えていいものか悩んでいます)
 朝早くから渚 レイは、大聖堂のご神体を前に祈り続けていた。それを柱の陰に身を隠し、温かく見守る女性のアークビショップ「パルティナ・フラウディッシュ・シャナ」が微笑み見つめていた。
(若いっていいことね)
 パルティナは何するわけでもなく、胸元に抱える悪魔祓いの書を小脇に移し、一人大聖堂を後にした。
「あーもうじれったいな。そこまで悩んでるんだから、その気持ちを大事にしろよ。主はお許しになってくれるはずだ」
「刹那・・・」
 同期のアークビショップ、「時津刹那」が渚 レイの背中を押す。
「まじめすぎるんだよ、お前は。1日2日の悩みじゃないんだ、そろそろ行動に移せよ。みてられないんだよ」
「しかし・・・」
「しかし・・・、なんだ? まだ悩んでることでもあるのか?」
「いえ・・・、なんでもありません。孤児院に行ってきます」
「あんまり悩むと胃に穴があくぞー」
 刹那に後押しされながら、渚 レイは孤児院に向かうのであった。

「司祭様? 何かお悩みでも・・・?」
 孤児院で孤児たちに将来何になりたいかを考えさせてた渚 レイにシスターの一人が声をかけた。
「いえ、そういうわけでは・・・」
「もう、司祭様はすぐそうやってごまかします。子供たちも見ていられるのですから、この際はっきりさせた方が・・・」
「そうですね。このままでは執務に支障をきたしますね」
「司祭様・・・」
「ここを任せてもよろしいでしょうか?」
「はい、お任せを・・・」
 こうして渚 レイは孤児院を後にした。

「おはよー。ご飯できた?」
「あんたで最後よ。さっさと食卓につきなさい」
 寝起きのルーンナイト「ル・アージュ・フラウディッシュ・シャナ」が修羅「クリシュナ」に指示される。女所帯ではありがちな光景だ。
「ルア姉、さっきレイさんがきてこれを渡すように言われたんだけど・・・」
「手紙? なんだろ?」
「食事を先にしなさい!」
 クリシュナの激が飛ぶ。ル・アージュは手紙を懐に入れて食事を始めた。
 今日の朝食はミートソースパスタだった。ル・アージュはフレアの作るミートソースパスタが特に好きだった。

 数分後、女所帯の朝食が終わるとル・アージュは、自室に戻り椅子に座ると懐に入れてた渚 レイからの手紙を開けた。

―いつもの海岸線で待っています。 渚 レイ―

(いつもの海岸線? あぁあそこか)
 ル・アージュは手紙を読み終えるや否や、ルーンナイトの鎧を身につけ壁に立てかけた赤と茶色で色分けされた魔導剣を腰に携えた。
「ちょっと出かけてくる」
「いってらっしゃーい」
 ル・アージュはネリスに見送られ厩舎につながれたドラゴンを解放し背中に飛び乗ると、プロンテラ南門を超えてプロンテラ南を駆け抜けていった。

(なんだろいったい・・・? 狩りなら大聖堂で待ち合わせなんだろうけど・・・)
 疑問を抱きながらル・アージュは、南と呼ばれるプロンテラの平野を南下していく。

 数分後にはル・アージュがよく考え事をするイズルードから南にある海岸線にたどり着いた。
「来てくれましたか」
 そこには渚 レイが待っていた。
「どうしたのレイさん? 何かあった?」
「いえ、気持ちの整理をしていました」
「へ?」
 ル・アージュはドラゴンから降りると渚 レイのそばへと近づいた。
「ルアさん」
「はい」

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「あなたの事を愛しています」
「へ?」
 ル・アージュの時が止まった。
 頭の中では「愛してる」の言葉がこだまのように響き渡る。そして数秒後には、ル・アージュの顔がこれ以上無く赤くなり、擬音を使えばボッと紅潮していった。漫画であれば頭から煙が出ていることだろうその言葉に、ル・アージュの思考回路がショートした。
「ご、ごごご、ごめんなさいー」
 ル・アージュはドラゴンをそっちのけにして走り出していった。
「振られたのかな? 私・・・」
 渚 レイは、残されたドラゴンの手綱を引き、プロンテラへと帰るのであった。

 渚 レイがプロンテラにたどり着いたころ、ル・アージュは鎧姿のまま自室のベッドにもぐりこんでいた。
(こ、告白されちゃった・・・)
 うつ伏せ状態で毛布を頭からかぶり、渚 レイからの告白を思い出すたびに顔が紅潮し、心臓の音が誰かに聞かれるんじゃと思うほどドキドキと波打っている。
(ど、どどど・・・、どうしよう!)
 あまりの恥ずかしさに、ル・アージュは自分のドラゴンを置いてきたことすら忘れていた。
(返事もせず帰ってきちゃったよぉ)
「ルアー、レイがドラゴン連れてきてくれたよー」
 少し冷静になってきたところで、ル・アージュは自分のドラゴンを置いてきたことに気付いた。それと同時に下からルシアの声が響いてきた。
(ちゃんと返事しなきゃ・・・)
 ベッドから抜け出て下に降りるル・アージュ。
 しかしル・アージュが降りてきたところで渚 レイの姿はなかった。
「あれ? レイさんは?」
「帰ったよ。あんた、ドラゴン置いてきて何があったのさ?」
 ルシアの一言にル・アージュは、またボッとまた顔が赤くなった。
(ははーん、そう言う事ね)
 ルシアはル・アージュの態度で何があったのか大まか予想できた。
「ルア、私パルティナのとこに行ってくるわ」
「う・・・うん」
(純情だねぇ・・・、ヴァーシュとは正反対だ)
 ルシアは笑いながら女所帯を出ていくのであった。

 ところ変わって鍛冶屋街の男所帯では・・・。
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「報酬は受け取った」
「おう、またなんかあったら頼むわ」
「・・・」
 メカニック「セラフィー」がシャドウチェイサー「シル・クス」にお金の入った袋を渡し、代わりに16個もの閃光の爪を受け取ったところで渚 レイが帰ってきた。
「おや、シル・クスさんも帰られたのですか? ではお昼でも作りましょうか?」
 工房を抜け厨房に入る渚 レイ。
「レイ、ため息なんぞついてどうした?」
「いえ、別に・・・」
「まぁ恋愛話なら聞かんけどな」
「ではいいです。」
(恋愛話か! 冗談だったのに・・・)
 セラフィーは「ははは」と力なく笑った。
「と、とにかく、俺、ちょっとスロットエンチャントに行ってくるから、飯はそのままでいいわ」
「はい、わかりました」
 荷物を抱え、プロンテラの南西まで出かけるセラフィー。シル・クスは「飯ができたら呼んでくれ」と自室に帰っていった。

「まぁ、そんなことが・・・」
「そーなのよパルティナ。だからさ、大聖堂であったらそれとなくね・・・」
 ソーサラー「ルシア・フラウディッシュ・シャナ」は、妹、「パルティナ」と揃ってネリスの実家にて何やら算段を立てていた。
「姉様、それは本当の事ですよね?」
「多分間違いない。あの子、あぁ見えて純情だから、顔にすぐ出るからね」
 ルシアは自分の事は棚にあげといて、姪のル・アージュの事でパルティナと話をしていた。もちろんネリスの実親であるロイヤルガード「リンク・フラウディッシュ・シャナ」がいないことを察しての訪問である。

-翌日-

(ちゃんとレイさんの告白に答えなきゃ・・・)
 ル・アージュは朝からプロンテラ大聖堂前に佇んでいた。でも本心は今すぐにでも逃げだしたいくらいの恥ずかしさが歩みを止める。
(えぇーい、ままよ!)
 勇気を振り絞って大聖堂に入るル・アージュ。
 大聖堂の中はいつもより静かな気がした。
(レイさん何処かな?)
「あら、ルアちゃん。おはよう」
「ひぃっ!」
 突如背後からかけられた声に、ル・アージュは素っ頓狂な声をあげた。
 振り向くとそこには、満面の笑みでほほ笑むパルティナがいた。
「叔母さん驚かさないでよ」
「ふふふ・・・、誰かさんの心が浮ついてるから気付かないのよ」
 悪びれることなく微笑む叔母に、ル・アージュはため息一つつくのであった。
「あのー、お姉・・・ちゃんはいないよね?」
「リーナちゃんなら今日は非番よ。でも、会いたい子は違うんでしょ?」
「そうだけど・・・、お姉ちゃんがいたら恥ずかしいし・・・」
(ホント姉様の言うとおりね。もう顔が赤いわ)
 フフフとほほ笑むパルティナ。ル・アージュの態度で、前日ルシアが話したことが本当であることを証明している。

「きびきびした態度は取れるけど、ルアは自分の事になると恥ずかしさが顔に露呈するから。きっと渚 レイに告白されたのよきっと」

 パルティナは姉、ルシアの言葉を思い出してほほ笑んだ。まったくその通りなのだから尚更である。
「ルアちゃん、それは決して恥ずかしいことなんかじゃないのよ」

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「あなたの想いはちゃんと伝わるわ。本気ならね」
「叔母さん?」
「想いを伝えたい人なら、今はルティエにいるわ。一人で孤児たちのおもちゃを受け取りに行ってるから、おもちゃ工場の近くまで行ってらっしゃい。運命の人なら、出会えるわ。きっと・・・」
「うん! 行ってみる!」
「あなたに神の祝福を・・・」
 ル・アージュは駆けだした。叔母パルティナに後押しされたんだ。きっと出会える。その想いが勇気となった。

 ルティエについたル・アージュは、おもちゃ工場の入り口でドラゴンから降りた。
(大丈夫・・・、きっと会える)
 顔は赤くないものの、ル・アージュの心臓はドクンドクンと高鳴っていた。
(落ち着け・・・、落ち着け私)
 何度も深呼吸をしては、逃げ出したい気持ちを押し殺す。すると30分くらい経った頃だろうか、大きな袋を抱えた渚 レイが出てきた。
「おや、ルアさん。奇遇ですね、こんなところ出会うなんて・・・」
「私、レイさんに話があるのついてきて・・・ください」
 ル・アージュはドラゴンの手綱を引きながら、袋を担いだ渚 レイとともに歩き出す。
「レイさん、私ね・・・、ずっと考えてたの。レイさんのこと・・・」
「私も、ルアさんの事を考えていました」
「この間の事謝りたくて・・・」
「・・・」
「レイさんに愛してるって言われて嬉しかった。でも恥ずかしくて逃げちゃったこと後悔してるんだ」
 ル・アージュは顔を朱に染めながら歩き続けた。そして何気ない話や、親が孫に期待していることやら、自分の事やらで何を話してるのか脈絡もなく話し続けた。
 渚 レイも、そんなル・アージュの話を聞きながらともに並んで歩いていた。
 そして数分後、二人はルティエの教会前の広場に出た。
「レイさんありがとう。こんな私を好きになってくれて・・・、でね私の答えを聞いてほしい」
「はい」
「私、レイさんの事・・・」
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「愛してます」
 勇気を振り絞って吐き出した言葉。ル・アージュの顔はもう真っ赤になっている。
 そんなル・アージュを、渚 レイは何も言わず抱きしめた。
 粉雪舞うルティエの教会で、二人は気持ちを通わせいつまでも抱きしめ合うのであった。

  by lywdee | 2018-01-30 13:32 | Eternal Mirage | Comments(0)

Eternal Mirage(211)

 ここはゲフェンの東にあるミョルニール山脈にある廃鉱。昔は鉄や石炭が多く取れていた時期もあったが、今はモンスターが闊歩する危険な鉱山跡地となっていた。
 そこに来る冒険者も、今じゃスケルワーカーカードを狙う冒険者がたまにくるダンジョンとなっていたが、ここを修行場にしている冒険者も数が減り、女所帯の主、修羅「クリシュナ」がよく金策に通うダンジョンの一つとなっていた。
 しかもここは、クリシュナが8時間こもったことが何度もあるダンジョンで、そのことから仲間内ではクリシュナの事を「撲殺天使」と呼ぶようになったいわくつきのダンジョンでもあった。
「さて、まずは鈍った体を起こさないとね」
 入り口に立ったクリシュナは、テレポートでまず2層目を目指す。1層目に大量にいるミストを見向きもせず、何度目かのテレポートで2層目の入り口に立った。
「今日は何周しようかねぇ・・・。金策に来たわけじゃないし、4周ぐらい回って迷宮の森に行くか・・・」
 もう迷路のような2層目もクリシュナにしてみればもはや関係ない。通ってる年季からしてもう迷うこともない。
 さっそく砂時計代わりのハイスピードポーションを飲み、自身にブレッシングと速度増加スキルを使ってスケルワーカーを殴り始める。
 そして3周目の中盤に差し掛かったところだろうか、ドレインリアーを殴り倒したらひらひらと紙きれらしきものが落ちる。

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「あら珍し、ドレインリアーカードだなんて・・・。出るのも久しぶりだねぇ・・・」
 クリシュナはゆっくりそれを拾うと、ひらひらと目の前で揺らした。
「年末だしね、あの子たちのお年玉にでもするか・・・?」
 カードを荷物入れに入れると、クリシュナはテレポートでプロンテラに帰るのだった。

-翌日-

「ヴァーシュ! ルア! ネリス! ついでにルシア。ちょっとおいで」
 女所帯にクリシュナの声が響き渡る。
「私はついでかい・・・」
 ルシアも重い腰をあげ、居間から食堂のテーブルについた。
 それにちょっと遅れて2階から若い衆3人が降りてきてこちらも食堂のテーブルについた。
「なあに? 伯母さん」とネリス。
「ちょっと早いがお年玉よ。公平に分けるからね」
 そう言いながらクリシュナは、テーブルについた4人の目の前に封筒を一つずつ置いてった。
「伯母さんこれって昨日のカード売れたお金?」
「そうよー。生活費に困ってないし、アンタたちもたまにはほしいものがあるでしょ? 服とか本とか、その他もろもろ・・・」
 ル・アージュが早速封筒を開ける。そして中身を確認すると・・・。
「叔母さん、50万ゼニーもあるじゃない! ほんとにいいの?」
「いいのよいいのよ。ルアとヴァーシュはお給料もらってるとはいえ、年頃だし、ネリスとルシアは給料もらってないんだから。臨時収入としてもらっておきな」
「姉さん、なんで私まで? あとで体で稼げとか言わないよね?」
「アンタにはやる気ももらう気もない。ついでだって言ったでしょ」
「ついで・・・ねぇ・・・」
 いぶかしげるルシアだったがとりあえず封筒を懐に入れた。
「・・・で、姉さん。フレアにもあげたの?」
「当然。ボーナスとしてあげたわよ。じゃ、私迷宮の森で鍛えてくるから。これにて解散」
『伯母さんありがとー』
 若い衆の言葉に、クリシュナは笑顔で出かけるのであった。

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「カード売ってお年玉とは・・・、クリシュナさんらしいな」
「でしょー。私たちも驚いたわ」
 若い衆3人は各々の武器をもって男所帯に来ていた。
「でもいいのですか? お金も取らずに武器の手入れしてもらうなんて・・・」
 ヴァーシュが椅子に座って槍をぶら下げる。
「いいんだいいんだ。お金に困ってないし、お前らとの付き合いも長いから、身内から金取る気なんてさらさらないさ」
 一つ一つ武器を手入れするセラフィーは、「時間がかかるから買い物行ってこい」と若い衆を締め出した。
 こうしてヴァーシュ、ル・アージュ、ネリスの3人は、久しぶりにショッピングにプロンテラの中心街まで歩いて行くのだった。
「ヴァーシュ、リューさんとのデートのために新しい服買ったら?」
「そんな・・・デートだなんて・・・」
 ル・アージュの言葉にヴァーシュは、顔を赤らめ右手の人差し指が空中に円を描いている。
(そっか、回すものないと指が回るのね)
 照れるヴァーシュをみてル・アージュはそう思った。
「ネリス、アンタは欲しいものなんてないの?」
「うーん、これと言ってほしいものってないなぁ」
「じゃあ、まずは腹ごしらえでもしようか。伯母さんたちには外食してくるって言ってあるし」
「そうね。そうしましょ」
 こうして3人はレストランに入っていくのであった。

「シル・クス、いるか?」
 セラフィーは同じ男所帯の住人、シャドウチェイサーの「シル・クス」を呼んだ。
「何か用か?」
「ああ、お前さんにしか頼めないことがあってな」
「・・・話を聞こうか」
 二人は居間のソファーに向かい合って座る。
「・・・で話ってなんだ?」
「うん、生活費も半年くらいもつからな、お前さんにイズルードの海底神殿まで行ってドフレから閃光の爪を集めてきてもらいたいんだ」
「何個だ?」
「16個くらい・・・。報酬は出す。頼めるか?」
 セラフィーがそう言うと、シル・クスはすっと立ち上がり背を向けた。

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「報酬があるなら仕方ない。16個だな」
「頼めるか」
「例のごとく倉庫に回復剤を用意しといてくれ。しばらく帰らん」
「わかった」
 そこまで言うとシル・クスの気配は消えた。さっそくイズルードまで出かけていったのだろう。
(これでクリシュナさんの装備はなんとかなるだろう)
 セラフィーはタバコに火をつけると、「フゥー」っと煙を吐いた。

 ガランガラン

「セラフィーさん手入れ終わった?」
 ネリスの声が男所帯に響く。
「ああ、全部終わったよ。大事に扱ってくれよ」
「うん!」
 若い衆3人はそれぞれの武器を手に取って刃先などを入念に見つめた。
「ありがとうセラフィーさん」とル・アージュ。
「いいってことだ。何かある前にまたもってこい。手入れはいつでもしてやる」
 セラフィーに見送られて3人は帰っていった。

「ただいまー」
 ネリスを先頭に若い衆が女所帯に帰ってきた。だがそこにクリシュナはいなかった。
「ルシア叔母さん。クリシュナ伯母さんは?」
「ああ、迷宮の森に行くって」
「最近よく行くね」
「ルアが急成長したからね。負けてられないんでしょ?」
 居間のソファ―に腰を下ろしているルシアは、本を読みながら視線も変えず答えた。
「ルアは攻撃型ルーンナイトだからね、防御型の姉さんにしてみれば、成長は早いからねぇ。私からしてみれば、ルアは攻撃力だけなら姉さんを超えてるわよ」
「そうかな? 実感がわかない」
「それならまた今度あんた連れてバリオフォレスト行ったげる。それで実証するわ」
「わかった」
「まぁ魔力だけなら、オーラまとったハイウィザード超えてるわよ。私が保証してあげる」
 読んでた本を閉じてルシアが笑う。
「で、伯母さんは金策? それとも修行?」
「たぶん自分で使うカードでも探してんじゃない? 今の武器じゃ限界が近いらしいからね」

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「ま、姉さんに狙われたら最後よねぇ」
「ははははは・・・」
 ルシアの一言に、ル・アージュとヴァーシュは力なく笑った。
「我が姉ながら、尊敬に値するわ。あの執着心・・・」
 想像に難くないクリシュナの狩り。あの集中力は真似できないと若い衆は思った。
「ネリス、暇でしょ? 暇に決まってる。ジュノーまで付き合って」
「はーい」
 そしてルシアとネリスは出かけていった。
 残されたル・アージュとヴァーシュの二人は、各々鎧を着こんで狩りに出かけるのであった。

  by lywdee | 2017-12-26 12:13 | Eternal Mirage | Comments(0)

Eternal Mirage(210)

 季節は巡り、ハロウィンの後片付けに励む者も多いプロンテラの一角。「鍛冶屋街」と呼ばれるブラックスミス系が多い住宅街に男所帯はあった。
 この辺に住んでる鍛冶屋たちは、街の武器屋に卸す武器を製造する傍ら、こぞって製造する属性付き武器の仕上げに追われている。その分鍛冶屋街は連日のように鎚打つ響きに覆われている。無論、メカニック「セラフィー」も初心者向けの属性武器をたまに製造している。
 セラフィーが作る属性武器の多くは初心者でも扱える属性武器に星の欠片も含まれているので、威力の方は過剰精錬している分攻撃力には定評はある。ただ、本人は製造で飯食ってるわけではないのだが、家にルーンナイトの「白鳥」がいるおかげで、騎士団への武器調達なども兼務している。
 そこに住むアークビショップ「渚 レイ」も、大聖堂からの受注も少なくなく、初心者アコライトが修行の一環で鈍器を使っての鍛錬に励んでいるので、時々作っているのが星の欠片が二つ入った火属性の過剰チェインである。今はイズルードの近く、バイラン島でも使える風属性のチェインも並行して作っている。
 まぁそういったわけであり、男所帯はロイヤルガード「リューディー」が集めるエルニウムやレイドリックカードなどでも生計を立てているので、生活に困りはしなかった。
 今日はその中でも渚 レイにまつわる話でもしようか。

 渚 レイの朝は早い。
 セラフィーと交代で作る朝食や、朝の礼拝などもこなしている渚 レイ。料理も得意でその器用な手先で食事を作るのも上達している。時折大聖堂に転がり込む孤児たちの世話もしているので支援の仕事以外にも意外と多忙な毎日を送っている。
「刹那、今日はプリーストの支援でニブルヘイムですか?」
「ああ、退魔プリーストを目指す子たちが増えたからな。サンクチュアリやマグヌスエクソシズムの貼り方や、そのための資質を上げるための修行の仕方を1から教えなきゃいけない。手間だけが増えるさ」
「そうですか。頑張ってください」
 気の合う同期のアークビショップ「時津 刹那(ときつ せつな)」との会話をしながら渚 レイは一つ尋ねるのであった。
「刹那、私はもしかしたら大事な人ができるかもしれません。そうなると孤児たちの面倒も、支援プリーストの修練にも差し支えそうで悩んでいます。どうしたものでしょう?」
 それを聞いた時津 刹那は、「うーん」と悩みつつ一声かけた。
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「恋愛か? 私には縁がないがお前次第だろ?」
「そうですよね。愚問でした・・・」
「まぁそうなったら応援してやる。長い付き合いだからな」
 笑いながら刹那はそう答えた。
 午後からは交代のアークビショップが来たので渚 レイは男所帯に帰ることにした。
 とはいってもセラフィーに大聖堂からの受注品の目録を携えているので、また大聖堂に行くかもしれないと思っていた。
「セラフィーさん、いますか?」
「おお、おかえり。レイ、昼はできているから温めなおして食ってくれや。ってなんだ?」
「大聖堂からの目録です。多分製造依頼だと思いますが・・・」
 そう言って目録を手渡す渚 レイ。
「うーん・・・、風属性チェイン10本か・・・。数作るには鋼鉄が足らんな。ちょいとクリシュナさんのとこ行って石炭分けてもらうわ」
「そうですか。行ってらっしゃい」
 渚 レイはセラフィーを見送ると、厨房に置かれたチキンソテーを温めなおして遅い昼食をとるのであった。

 夕方、渚 レイはセラフィーの製造に協力していた。・・・と言っても少しでも製造の成功率を上げるためにグロリアなどで支援するだけであったが・・・。
「よし、とりあえず20本出来たか。あとは過剰だな」
「お手数かけます。ところでセラフィーさん、ルアさんのことどう思いますか?」
「突飛だな。ルアに惚れたのか?」
「わかりません。気にならないと言えば嘘になりますが、どう接したらいいかわからないもので・・・」
「へー・・・お前とルアか。いい組み合わせだと思うがな」
 真面目な顔でチェインを精錬するセラフィー。
「いいんじゃない。告白して付き合っちゃえよ?」
「そんな・・・、簡単に言ってくれますね」
「だっていい子じゃん、お前さんだってまんざらでもないんだろ? 誰かに取られちゃう前に自分からアピールすれよ」
「・・・」
「安心しろ。邪魔はしねーよ。自分が「好き」だと思うなら行動すれよ。じゃないと後で後悔してもしらないぞ?」
 チェインを精錬していたが、セラフィーは不意に渚 レイを見た。
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「ルアだけじゃない、女所帯の若い衆に身内感覚で付き合ってるからな。ルアにしたって、俺からしてみれば妹みたいなもんだ。特別な感情何てないわ」
 セラフィーはそう言うが、渚 レイにしてみれば深刻な問題ではないかと思っている。付き合いも長いし二人で狩りに行くのも一度きりってわけでもない。
 渚 レイは複雑な思いで自室へと戻るのであった。

「告白すれば? かぁ・・・」
 渚 レイはまだ薄明るい陽の光で目が覚めた。
(これが「恋」ってやつですか・・・)
 自分には縁のない話だろうと思っていた渚 レイであったが、日増しに大きくなるル・アージュへの想い。しかしながら渚 レイにも司祭としての立場もある。つらいところだ。
 その日は天気も良いので渚 レイは孤児たちを連れてプロンテラの南へ遠足に出かけることになった。もちろん一人では持て余すだろうと、他にも二人ほどシスターがついてきている。
 そして行きついた場所、それはよくル・アージュとともに語らったことのあるイズルード南の海岸線だ。
 孤児たちはそれぞれの水着を着て波打ち際で遊んでいる。そういう静かな光景を見るのが渚 レイの楽しみの一つでもある。
「ポリン叩いちゃダメよ。あぁー、クリーミーはもっとダメ!」
 シスター二人も、遊び盛りな子供たちの面倒で四苦八苦している。
「君たち、生き物はもっと大事にしなきゃ。むやみに傷つけるのはよくないですよ」
「はい! 司祭様」
 子供たちがまた波打ち際で遊ぶようになってから、渚 レイは少し離れた海岸線に腰を下ろした。
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(どうしたものかな・・・)
 海を見つめながら、渚 レイはふと笑うル・アージュの顔を思い出した。
「司祭様、そろそろ孤児院に戻りますわよ」
「はい、今行きます」
 すっと立ち上がり、渚 レイはワープポータルを開いた。
 子供たちとシスターが入っていく中、渚 レイは一人のシスターに「ちょっと一人になりたいので・・・」と告げ、一人プロンテラへと歩いて帰るのであった。

(ルアさんから見て、私はどう思われてるんだろう?)
 いろいろな思いが交錯する渚 レイの胸中。これが恋だという事には気づいていた。しかしル・アージュとの距離を考えると踏ん切りが中々つかなかった。
 そんなことを思っているうちに、いつのまにか渚 レイはプロンテラに戻ってきていた。
(子供たちにお菓子でも買って帰りましょうか・・・)
 気持ちを切り替えた渚 レイは、お菓子の売ってる店に行こうとして突如視界を奪われた。
「だーれだ?」
「カスミでしょ。声でわかりますよ」
「へへへ・・・」
 急に背後に立っていたのは、渚 レイの妹「渚 カスミ」であった。
「どうしたんですか? アマツでの契約はとっくに切れてるはずですが?」
「うん、それでね、お母さんの許可が取れたからプロンテラに住もうかな? って様子を見に来たの」
「そうですか。では一緒に家でも借りて住みますか?」
「冗談はやめてよ。私だって独り立ちしてるのよ」
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「お互い彼氏彼女できたら出てかなきゃいけないじゃない。だからお兄ちゃんとは暮らさないよ」
「そうですか、いや、そうですね」
 もう立派な女性になったのかと、渚 レイは少しうれしかった。
 子供の頃、あれだけ暴れまわっていた妹も成長したのだと、目の前の妹を見て時の流れを感じる渚 レイであった。

-その頃-

「あら? ルアちゃん、どうしたの?」
「パルティナ叔母さん、あのあとおやじどうなったのかなー? なんて思って・・・」
 プロンテラ大聖堂に来たル・アージュは、たまたま居合わせた叔母「パルティナ」にあの日の出来事がどうなったのか聞きに来ていた。
「兄様なら、お見合いは諦めて孫に期待するって言ってたわよ」
「ま、孫?!」
 突拍子もない言葉にル・アージュは固まった。
「孫も何も、どうしてそうなっちゃうわけ?!」
「兄様からしてみれば、男の子が欲しかったのでしょう。だからルアちゃんは諦めて、その子供に家を継がせるって言ってたわ」
「ははは」とあきれた笑い方をするル・アージュに、パルティナは優しく微笑んだ。
「ルアちゃん、なんか私はついでのように思うけど・・・」
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「大聖堂まで来たって事は、好きな子でもできたのかなって・・・?」
「そ!そそそそ、そんなわけじゃな、ないけど・・・」
「いいのよ。そんな照れなくても。若いんだから」
 顔が真っ赤になったル・アージュに優しく微笑むと、パルティナは奥へとひっそり消えてくのであった。
「もう! 叔母さんったら・・・」
「どうかしましたか?」
「ひっ?!」
 背後から不意に話しかけられたル・アージュは、背筋が凍る思いをしながら飛びのいた。
「れ、・・・レイさん?! 脅かさないでよ・・・」
「それはすいません」
 謝る渚 レイの顔を見ていたら、ル・アージュの脳裏にパルティナの「孫」という言葉が脳裏をよぎった。
「顔が真っ赤ですよ? 熱でもあるんじゃ・・・?」
「だだだだだだ、大丈夫です! な、なんでも・・・、なんでもないです!」
「そうですか・・・。私はてっきり私に会いに来たのかと・・・?」
「へ?」
「もちろん狩りにでも誘われるのかと・・・?」
 その台詞にル・アージュは思わず深呼吸した。
(よかった。気付かれてない。もー! 叔母さんったら、あんなこと言うから意識しちゃうじゃない!)
 ル・アージュはうつむいたまま深呼吸をする。
 そして意を決して渚 レイの顔を見るル・アージュ。
「レイさん、狩り行こ!」
「いいですよ。久しぶりですね」
 こうして二人は、新天地にむけて狩りに行くのであった。

  by lywdee | 2017-11-14 11:10 | Eternal Mirage | Comments(0)

Eternal Mirage(209)

 木枯らし舞うプロンテラ。今年も街はハロウィンで盛り上がっていた。
 そんな中、祭りには似つかわしくないメカニック「セラフィー」は、カートを引きながらプロンテラ城前をゆっくり歩いていた。
「セラフィーさん!」
 背後からの声に気付いたセラフィーが振り返ると、これまたハロウィンには似つかわしくない鎧と竜の団体の中にル・アージュがいた。
「おー、ルアか。なんだ? 事件でもあったか?」
「違うよー。オートスペル型の新人のレクチャーでポートマラヤに行ってきたんだよ」
「へー・・・、部隊長ってやつか? ルアも偉くなったもんだ」
「へへへ、そんなことないよ」
 ル・アージュが照れ笑いするなか、一行はそのまま騎士団詰め所まで歩いて行くのであった。
「セラフィーさん、何の用で騎士団に?」
「仕事だよ。わりい、火もらえないか?」
「いいよー。ほら、火ぃ吐いて」
 ル・アージュの声に反応して、ドラゴンは空気を吸い一気に吐いた。
 その火に危険も熱も気にせずセラフィーは近づいてタバコに火をつける。
「ありがと」
「相変わらず恐れを知らないというか、火が怖くないというか・・・。セラフィーさんらしいね」
「火が怖くてメカニックなんかやっちゃいねーよ」
 笑いながら騎士団詰め所まで歩く一行。入り口までついて一旦セラフィーはル・アージュらと別れてカートを引っ張り詰め所に入った。
「すんませーん。団長殿はおられますか?」
「おー、待ちかねてたぞ。こっちだ」
「頼まれてた物資の一部ですが納品しにきました。確認してください」
「資材長、確認してくれ」
「団長! オートスペル部隊、遠征から帰還しました!」
 ル・アージュがそう叫ぶとほぼ同時に、騎士団資材長は団長に「確認できました。過剰ブリューナク確かに10本あります」と声をかけていた。
「過剰ブリューナク?」とル・アージュ。
 騎士団長はル・アージュらが帰還したのを見て、近くに寄れとばかりにル・アージュらを手招きした。
「ル・アージュ卿も持参しているようだが、オートスペル部隊に配給するブリューナクだ。諸君らもル・アージュ卿のヒールは受けたはずだ。城から予算が出たのでな、オートスペル部隊に配給するため、民間の精錬工に発注していたのだよ」
「へー・・・」
「オートスペル型ルーンナイト諸君らはル・アージュ卿のデータをもとに、生還率上昇の為ヒールを使えるようにしないとな」
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「確かに納品しました。残りの武防具に関しては供給が追い付いてないんでね、私としては露店から購入することをお勧めします。一応こちらでも用意はしますが時間かかりますよ?」
「そうだな。現状の部隊には前回手配したもので間に合ってる。では代金は追ってそちらの工房に持っていかせる。ご苦労だったな」
「ではサインを・・・」
「うむ」
 セラフィーは契約書と納品書に納品のサインを受け取り騎士団を後にした。
「ではル・アージュ卿、報告を聞こうか・・・」

-昼下がり-

「アレスがルアを連れて来いだって? 何考えてんだあいつ・・・」
 女所帯の主クリシュナは、ファ・リーナの言葉に苦虫をかみしめたような顔でつぶやいた。
「細かいことは聞かされていませんわ。お父様はここ数日写真を見ながら悩んでた様子でしたよ」とファリーナ。
「まー兄さんの事だから、ルアを連れてったらまず喧嘩になるわね」
 紅茶を飲みながら居間のソファーでくつろぐルシアが言った。
 クリシュナも何やら考えているようだが、少なからず悪い予感はしていた。
「娘のリーナにも知らせてないなんて、何かあるわね」
 腕を組んで考えてるクリシュナは、ぽんと手のひらにこぶしを当ててネリスを呼んだ。
「なぁに? 伯母さん」
「これからリンクとパルティナの所に行って急いで実家に帰るよう言ってくれない?」
「いいよー。行ってきまーす」
「さて・・・、アレスのやつ、どう出るか・・・」
「何の話?」
 ネリスと入れ違いで帰ってきたル・アージュ。居間のファ・リーナに気付いて手を振る。
「ルア、悪いんだけど実家に行くよ」
「え?! 嫌よ! 親父の顔なんて見たくないわ!」
「安心して、あんた一人帰すわけじゃない。安心して」
「むー・・・、伯母さんがそう言うなら、考えないわけではないけど・・・」
 いぶかしげるル・アージュは、ファ・リーナの隣に腰を下ろす。
「お姉ちゃん、なんで今頃おやじから連絡入れてくるのさ?」
「ごめんねぇルア、私も連れて来いとしか言われてないの」
 その言葉にル・アージュは嫌な予感しかなかった。
「ルシア、あんたも来るのよ」
「へーい」
 クリシュナの言葉にいやいや立ち上がるルシア。
「フレア、留守をよろしく」
「かしこまりました」
 そうして女所帯からクリシュナ、ルシア、そしてファ・リーナとル・アージュの4人は実家たるシャナ家に向かうのであった。

-小一時間後-

「あー・・・、やだなぁ、うち帰るの・・・」
「ルア、それ10回目」
 ル・アージュとファ・リーナは揃ってクリシュナの後を歩いている。
 ル・アージュにしてみれば、年始の挨拶ぐらいしか帰ってないここ数年。できるだけ親の顔はみたくないと思っていた。
 15歳で家を出て、考えてみればもう十数年。祖母と母とファ・リーナがいるからこそ年始は帰っていたが、ル・アージュにしてみれば半分勘当されたも同然の家に帰るのだから、気が重くて仕方なかった。
 その実家とも言うシャナ家はプロンテラの高級住宅街にはいるのだが、実家に近づくにつれ、ル・アージュの足は重くなるのであった。
「姉さん! 急用ってなんだい?」
「ああリンク、パルティナ、悪いね、あんた達まで巻き込んで・・・」
 実家を前にして、リンク、パルティナ、ネイにネリスの4人はクリシュナが来るのを待っていた。
「ルアがピンチなんでしょ? 伯母さん」
「ネイは察しがいいねぇ」
 パルティナの背後から顔をのぞかせたネイ。
 大事になってしまったがシャナ家にクリシュナを先頭に入っていく。
「やっと帰ってきたか! この親不孝者!」
「アレス・・・、姉にむかってよくそんなことが言えるわね?」
 クリシュナは平静を装っていたが握り拳がプルプルと震えていた。
「なんでクリシュナが! リンクにパルティナまで・・・」
「ほう? 姉を呼び捨てにするなんて、ずいぶん偉くなったわねぇアレスちゃん」
「くっ・・・!」
「上がらせてもらうよ? いいわね!」
 玄関での雑言もそのままに、一行はシャナ家に入った。

「で、父さん、なんで私なんかが呼び出されるのさ?」
 いやいや帰ってきたル・アージュは、居間に連れて行かれソファーに座って待てと言われた。
 他の保護者一同は、そのル・アージュの後やら横に立ち、アレスの一挙一動を見つめていた。
「お前にはこのままここにいてお見合いを受けてもらう」
「はぁ!?」
「ここ十数年自由にさせてやったんだ、いい加減帰って身を固めろ」
「じょ、冗談じゃないわよ! 見合いなんて、何勝手に決めてるのさ!」
(こんな事だと思ったわ・・・)
 クリシュナがため息を漏らす。
「私は見合いなんかしないわよ!」
「親不孝も大概にしろ! お前のおかげで何年迷惑をかければ気が済む!」
「勝手に迷惑がってるのは兄さんだけでしょ?」
「ルシアは黙ってろ! これはうちの問題だ!」
 ルシアもその一言にカチンときたのか、苦虫をかみしめたような顔で言葉を飲んだ。
 パルティナもアレスを落ち着かせようとするが、アレスの言葉は続いた。
「騎士になって家を継ぐ気になったかと思えば、年始しか帰らずに帰ってきても人の話を聞かず出ていく。そんな身勝手をいつまで続けるんだ! 今更見合いもうけないだと? どこまで父親の顔に泥を塗り続ければ気が済むんだ!」
「私は父さんみたくならない! 家の事とか、将来の事まで決めつけられるなんて、まっぴらごめんよ!」
「なんだと! 親が娘の将来考えなくてどうする! いつまでも子供じみた事を言うな!」
「それが迷惑だって言ってるでしょ! 私の道は私が決めるわ!」
 毅然とした態度で言い放ったル・アージュだが、目にはうっすらと涙を見せる。
 クリシュナら兄弟もアレスの言動を聞き捨てず、なんとか落ち着かせようとしてるがそれでもアレスの気持ちは静まらない。
 するとル・アージュはゆっくりと立ち上がった。
「もういい、わかった・・・」
「わかってくれたか」
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「私はあんたの人形なんかじゃない! 自分の道は自分で決める!」
「な! 待て! ルア!」
 ル・アージュは顔を伏せたまま家を飛び出した。
 そしてシュナ家の居間にしばし沈黙が流れた。
「アレス・・・、あんた最低だわ」
「そうよ兄さん、言いすぎよ」
 クリシュナとルシアはアレスの対面に腰を下ろして言い放った。
「何を言う、お前たちには家の事をとやかく言う資格なんぞないだろ。私は家長として家を守らなければならない義務がある」
「さっきルアに言った事、リーナにも言えるの?」とクリシュナ。
「・・・」
「兄さん、口げんかで私に勝てると本気で思ってる?」とルシア。
「・・・」
 何も言えなくなったアレスは、ゆっくり腰をおろしてため息をついた。
「リンク、パルティナ、お前達も同意見なのか?」
「兄さん、男親の立場としてはよくわからない。けど子供の意見を尊重せず頭ごなしに言うのは問題ありだと思うよ」
「そうです兄様。ルアちゃんのことを思うのはわかります。でも、親の一存で子供の未来を閉ざしてしまうのはいけませんわ」
 しばらく沈黙が続いたかと思えば、アレスは一人書斎へとむかっていく。
「すまん、一人にさせてくれ」

「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・」
 ル・アージュは零れ落ちる涙も拭かずに走っていた。
 目的地なんぞなかった。ただプロンテラから離れたかった。

 ドン!

「すいません!」
 走りながら通りすがりのアークビショップにぶつかるル・アージュ。そのまま顔を上げることもなく走り去っていく。
(あれは・・・?)
 今のル・アージュには街の雑音など耳に入らなかった。ただ遠くに行きたい、その一念でプロンテラの南門をくぐって街の外に出ていった。
(もう嫌だ・・・、帰りたくない)
 立ち止まることもなくプロンテラから南下していくル・アージュ。
 零れ落ちる涙も拭くこともなく、ただ走っていくだけだった。
 それからどれくらい経っただろうか。ル・アージュはイズルードよりも南にある砂漠にほど近い海岸線のあたりでようやく走ることをやめた。
 はずむ息を抑えることもなくル・アージュは一人泣いた。
 膝を抱え顔をうずめ、あふれる涙を止めようとしなかった。
 それからしばらく時がたち、ル・アージュの隣に一人のアークビショップが現れた。
「やっぱり・・・、ル・アージュさんでしたか」
「レイさん?」
「なんとなくですが」
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「ここにきてるんじゃないか? って・・・」
 そう言うと渚 レイはル・アージュにハンカチを差し出した。
「どうしてここに・・・?」
 ル・アージュはハンカチで涙を拭きながら、渚 レイに背を向けた。
「街でぶつかったときに泣いてましたからね、何かあるなと思い追いかけてしまいました」
「でもどうしてこんな短時間にこの場所に?」
「以前・・・と言ってもかなり古い記憶ですが、ロードナイト時代のあなたがよくここで海を見ていたなと思い出しまして、勝手ではありますが追いかけさせてもらいました」
 笑顔で答える渚 レイの言葉にル・アージュは振り向いた。
「愚痴でもなんでも聞かせてください、こう見えても司祭ですから、お悩みぐらい聞きますよ。もちろん他人には話しませんから・・・」
「ありがと・・・」
 そう言ってハンカチを返すル・アージュ。
「レイさん、どうしても分かり合えない親を持つ子の気持ちなんてわからないよね?」
「はい。わかりませんね。私は父なし子ですから」
「え?」
「驚きましたか?」
 レイの言葉にあごを上下するル・アージュ。
「それでも司祭になって孤児の面倒も見ることになって、また、ル・アージュさんと狩りに行ったりして楽しかったですから、こんな風に楽しく過ごさせてもらってます」
「寂しくないの?」
「はい」
 渚 レイは物静かに話を続ける。
「親はなくとも子は育つと言いますしね。家族なんて十人十色ですよ? いがみ合うばっかりでもなく、放っておくこともなく、慣れ合うだけでもなく、ですよ」
「いいなぁ。そういう風に思えて・・・」
「ル・アージュさんに護衛してもらった記憶も、私にとっては大事な思い出です。あなたがいなければ、私はプリーストのままでそれだけの関係だけだったとしか思えませんからね」
「私も、騎士のままだったかもしれないね」
「出会いは人それぞれ・・・、すべてが悪いわけではありません。大事なのは、それを受け入れてどう生かすか。・・・ですよ」
 渚 レイと話していて気が楽になったのか、ル・アージュの顔も少しやわらかになっていく。
 ル・アージュも、いつからか笑うようにもなった。
 それから二人は海を眺めながら雑談に興じた。
「レイさん」
「なんでしょう? ル・アージュさん」
「短い付き合いじゃないんだから、私の事、ルアって呼んでくれない? いつまでも他人行儀みたいにさん付けしなくてもいいじゃない」
「そうですね。ルアさん」
「もー・・・、さん付けしないでって言ったばかりなのに・・・」
「すいません。こんな話し方が私なので・・・」
 二人は声に出して笑った。
 いつしか日は落ちて夕暮れも終わりに近い時間になっていた。
「帰りましょうか?」
「うん。いい加減帰らないと伯母さんに怒られちゃうからね」
「そうですね。どうです? 気は収まりましたか?」
「正直わかんない。でも帰ってどんな顔をすればいいのか・・・」
「笑顔が一番ですよ。私もルアさんの笑顔は好きですから」
 笑顔で返す、不意の渚 レイの言葉に、ル・アージュはちょっとだけ顔が熱くなった。
「あのー、レイさん」
「なんでしょ?」
「ううん、なんでもない。帰ろ!」
 ル・アージュが立ち上がると、渚 レイは立ち上がりワープポータルを出した。二人はその光の柱に飛び込み一瞬にして男所帯の前に降り立った。
「レイさん今日はありがと。おかげで少し楽になった」
「そうですか。それは何よりです」
「じゃ、帰るね」
「お気をつけて・・・」

「ただいまー」
 女所帯のドアを開くル・アージュ。
「おかえり」
 女所帯の住人すべてが食堂でル・アージュの帰りを待っていた。その表情からは日中の出来事があったときよりも明るい。
「ルア、安心しなさい。見合いは破談、アレスのやつにはルシアとパルティナの二人が説教したから」
「ほんと?! ありがとルシア叔母さん」
「これでしばらくは兄さんもおとなしくなるでしょ」
 ハハハと笑うクリシュナとルシアの二人につられて笑うル・アージュ。
「それと、ルアはこのままうちにいて好きにしなさいってさ」
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「ほんと! じゃあクリシュナ伯母さん。これからもよろしくね」

 こうして、ル・アージュはまた変わらない女所帯の日常に戻るのであった。

  by lywdee | 2017-10-31 15:58 | Eternal Mirage | Comments(0)

Eternal Mirage(208)

 季節は夏から秋へと移り変わり、もうじきハロウィンが始まるであろう世界の端くれ、ポートマラヤでも祭り一色になり始めていた。
 そんな中、ルーンナイト「ル・アージュ」はソーサラー「ルシア」とともにバリオフォレストにいた。
「さぁ、課題の成果をみせてもらいましょか」
「うん、まずはどうすればいい?」
「そうねぇ、時間測りたいからまずはエンチャントブレードなしで戦ってもらうか」
「はーい」
 ルシアに言われるままル・アージュは、オーラブレードとコンセントレーションだけ発動してブギスギス1匹を相手に戦い始める。
 途中オートスペルの発動があったがそれでも無傷でブギスギスを倒す。
「約1分か・・・、じゃあ次はエンチャントブレード発動させて」
「はーい」
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 ル・アージュは言われるままエンチャントブレードを発動させてまたブギスギスと戦う。
「ふーん、約30秒か。ASの発動率もまぁまぁだし、魔力が上がってるからエンチャントブレードの効果もバカにならないわね」
「叔母さん、今度はどうする?」
「そうねぇ・・・、ものは試しで支援してあげる。それで戦ってみて」
「支援・・・?」
 いぶかしげるル・アージュに近づくルシア。懐からはレッドブラッドを一つ取り出す。
「フレイムランチャー! ストライキング! はいこれで戦って」
 ルシアが支援という名の付与をかけて、ル・アージュをもう一度ブギスギスに対面させる。
 そしてル・アージュが戦い始めると同時に、ルシアは「ボルケーノ!」と火属性の力場を発生させた。
「これで20秒弱か・・・、まぁまぁね。これでアークビショップの支援の25%ぐらいの差か・・・。ふむふむ・・・」
 ルシアはル・アージュの戦いを分析しながらもなにかメモを取り始める。
「今度は兄さん呼び出して素のルーンナイトの攻撃力見なきゃね」
「え? 親父呼ぶの・・・?」
「安心しなさい、ルアは一緒じゃないから喧嘩することもないでしょ?」
「だったらいいけど・・・」
 そうこう言いながら二人は1時間ほどバリオフォレストにいた。
 ルシアはル・アージュの戦闘を分析しながらブツブツといいなにやらメモを取り続ける。
「よし、ルアの戦果はこんなものね。あとは素のルーンナイトの戦果見なけりゃ対象になるものがない。兄さんはオートスペル型じゃないんでしょ?」
「たぶんね」
「だったらパルティナ連れて行くって言えば兄さんも断れないはず。今度連れ出そう」
 ル・アージュはブツブツとつぶやくルシアを見て、ただ単に知的好奇心を埋めようとしてるだけだと思った。

 プロンテラに帰ると、ル・アージュはルシアと別れた。騎士団への報告があるからだ。
 一応ル・アージュの所属は遊撃部隊で、冒険者としての一面が強いがそこは自由さが売りの部隊だ。もちろん騎士団への登録はされているので、有事の際は騎士団の管轄にはいる。そのため大規模作戦や密偵ということになれば断れない立場は否めない。
 まぁそんな大事は滅多にないが、ル・アージュは一応いつ呼ばれてもいいように鍛えてはいる。
 今回の調査というか検証に至っては、ルシアが騎士団に直接出向いてル・アージュを連れてくと断っての旅だった。
 そしてル・アージュが騎士団詰め所での報告を済ませて女所帯に帰る道のり、プロンテラ城の手前で今まさにグリフォンで飛びだとうとしてる銀髪のロイヤルガードの姿を見た。
(あれってもしかして・・・?)
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「あら、ルア、奇遇ね」
「やっぱヴァーシュか。今日は一人?」
「うん。りゅーさんなら今日は新人パラディンの指導でグラストヘイムよ」
「グランドクロス部隊かな?」
「たぶんね」
 二人はそのまま並走して女所帯に帰ろうとする。すると、女所帯の前でワープポータルの残光が立ち上っていることに気付く。
「あらお二人さん、今帰ってもお昼ご飯ないよ?」
「どうゆうこと? クリシュナ伯母さん」
「フレアが風邪ひいちゃってね、お昼は街で食べてきたのさね」
「ネリスも?」
「うん」
 ワープポータルから出てきたのはクリシュナだけでなくネリスも一緒だった。どうやら二人で食事してきたらしい。
「ルシア叔母さんは?」
「今頃どっかでご飯食べてんじゃない?」
 クリシュナはそう言うと、ネリスとともに女所帯に入っていく。
「あんたたち二人もどっかで食事しときなさい。晩御飯はルシアが作るみたいだから、その辺考えてお昼食べてきなさい」
「ハーイ」
 ル・アージュとヴァーシュは、厩舎にドラゴンとグリフォンをつなぎ、二人でプロンテラ市街へと歩き出した。
「フフフ、ルアと外食なんていつ以来だろうね?」
「そうだね。ご飯はいつもフレアさんが作ってたからねぇ・・・」
 二人は何気ない会話をしながらプロンテラ市街につく。
「何食べる?」
「うーん、なにか軽いものがいいかな? ルシア叔母さんなら肉料理だろうから、軽いものが食べたい」
「じゃあ、そこのバーにでも入ろっか?」
 とりとめのない会話の後、二人は酒場に入った。
 すると二人の背後にいきなり現れる女性が声をかけてきた。
「あらお二人さん。奇遇ね、これからお昼?」
「ネイ姉さん! いつの間に・・・?」
「これでもギロチンクロスだからね、癖で気配消しちゃうのよねぇ・・・」
 照れ笑いをするネイ。
「私も今からご飯なんだ。一緒にどう?」
「いいですよ。ネイ姉さんとのご飯なんて滅多にないから」
               
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「よし! 何食べる? お姉さんがおごって差し上げよう」
「え? いいんですか?」
「お給料はいったはいいけど、使い道ないのよねぇ」
「ではありがたくいただきます」
 こうして3人での昼食となったのだが、会話はもっぱら狩りの話や仕事の話だった。

 3人がご飯を食べ終えても話はまだ続いていた。
 年始以外滅多に会わないネイだから、妹の話や最近の女所帯の話は新鮮だった。
「え? ヴァーシュ、彼氏できたの?!」
「彼氏だなんて・・・、そんな・・・」
 照れたヴァーシュは、槍の代わりにフォークを片手でクルクルと回している。
「へー・・・羨ましいわね、私なんて出会いそのものがないわ」
「ネイ姉さんもですか? 姉さんもスタイルいいし、引く手あまたかと思った」
「だって、出会いって言ったってみんなアサシン系よ? 影で何してるかわかんないわよ」
 笑いながらお酒を飲むネイ。その言葉に力なく「ハハハ・・・」と答えるヴァーシュとル・アージュ。
 そんなやり取りを小一時間と時は流れ、3人は女所帯にきた。
「お姉ちゃんお酒くさーい」
「ネリスー、お酒は大人のたしなみよー」
 ネリスに絡むネイの姿は、中年の男が娘に絡むような感じに見えた。
「ネリス、ネイを家まで送ってやんな」
 クリシュナが言うと、居間にいたルシアが「私が連れてく」と言って立ち上がった。
 そしてネイの首根っこをつかむと、ずるずると引きづって女所帯を出ていった。

 その夜の事・・・

「なんで! なんでなの! ポリンの数が減らない!」
 ル・アージュは草原いっぱいのポリンに囲まれていた。
 斬っては分裂するポリン。ル・アージュは囲まれないようにイグニッションブレイクを仕掛けても、倒すどころかどんどん分裂していく。
「ポリンが! ポリンがぁ・・・!」
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 大量のポリンが一斉に襲ってきてタコ殴りに合うル・アージュ。
 次の瞬間、大量のポリンに押しつぶされるところでガバッと・・・と目覚めた。

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・、夢?」
 真夜中に目覚めたル・アージュ。
(私・・・、ポリンに何かしたっけ?)
 夢で起きた出来事に、記憶を辿るル・アージュだったが、身に覚えのない出来事だから理解に苦しんだ。
 ベッドから立ち上がってカーテンを開けるル・アージュ。外はうっすらと明るくなってきている。どうやら早朝のようだ。
(変な夢・・・)

(ネイ姉さん綺麗だったなぁ・・・。私も髪伸ばそうかしら・・・)

 二度寝しようとしたル・アージュだったが、先ほどの悪夢が気になるのか、寝ることのできないル・アージュだった。

  by lywdee | 2017-10-10 12:34 | Eternal Mirage | Comments(0)

Eternal Mirage(207)

 季節は夏から秋へと変わり、過ごしやすい気温になってきたプロンテラ。
 その城下町を飛ぶ二匹のグリフォン。ロイヤルガードのリューディーとヴァーシュである。
「よし、噴水の前で小休止だ」
 リューディーの一言に頷くヴァーシュ。二人はグリフォンを操り、プロンテラ中央の噴水までおりてきた。
 二人がグリフォンから降りると、二匹のグリフォンは噴水の水を飲み始める。その光景を見ていたヴァーシュは流れるような銀髪をなびかせ、黙ってグリフォンを見ているリューディーの横顔を見つめていた。
 二人は何を話すわけでもなくベンチに腰を下ろすとそこへ、小さな男の子を連れた女性が、男の子に引っ張られるまま噴水の前に来た。
「わー、ぐりふぉんだー」
「これ! 聖騎士様の邪魔になるでしょ!」
「いいですよ別に、うちのグリフォンはおとなしいですから。ロット、いつまでも水飲んでないで撫でさせてやれ」
 リューディーがそう言うと、彼のグリフォンは振り向き、男の子の前で伏せるのだった。
「わー、ふっさふさー」
「すいません、この子のために・・・」
(りゅーさん優しいなぁ・・・)
 男の子はグリフォンに抱き着いたり頭をなでたりして満足したのか、母親と一緒に手を振り噴水から離れていく。
 リューディーは手を振り応えるとやおら立ち上がりグリフォンにまたがる。
「そろそろ衣替えの時期だろ? お前のとこの衣替えが近づいたら言ってくれ。暇にしてやる」
「そんな・・・、無理に合わせなくてもいいですよ」
「そうか? 私は別にかまわんが・・・。それより、12月かららしいぞ。女性だけの部隊作るって話題が本気になるのは」
「え?」
「なんだ、聞いてないのか? 前々から話題にはなってるだろ? お偉いさんたちは男女混合の遊撃部隊から何人かの女性騎士をまとめて再編成するらしい。セクハラを訴える女性騎士も多いらしいからな」
「そうですか・・・」
 ヴァーシュは何故か胸の前でこぶしを握る。何故かはわからないが、胸のあたりが苦しく感じられた。
「お前さんもいつまでも私にくっつけられるのもなんだろ? お互い冒険者として扱いを受けてるとはいえ、女性としての悩みもあるだろ」
「私は・・・別に・・・ゴニョゴニョ・・・」
 視線を外して口ごもるヴァーシュ。リューディーはそれを見てため息をついた。
「私も遊撃部隊の部隊長やらされてるが、城のお偉いさんは冒険者のまま階級をくれるような口ぶりだ。前より自由に動ける機会は減るだろうな」
「私もですか?」
「たぶんな。だからいつでも言ってくれ」
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「私が師団長に推薦してやる」
「そんな・・・、私なんかが師団長なんて・・・」
「その気がないならしばらくは私にくっつけられるぞ? 遊撃部隊にはそれなりの権限というか、自由があるからな」
「りゅーさんは、私と一緒じゃ嫌なんですか?」
 ヴァーシュは張り裂けそうな胸の内をかかえてリューディーに尋ねた。
「そうは言ってないが、男と組んでるとそれなりの不便さはあるだろ? 現に私だって・・・、いや、なんでもない。それより報告だ。城に急ぐぞ」
「はい・・・」
 こうして二人はプロンテラ城へとグリフォンを飛ばした。
 道中ヴァーシュは、うつむいたままリューディーの後を追う。
(なんだろこの気持ち・・・、わからない)
 自身に目覚め始めた気持ちがヴァーシュを苦しめる。
 理由もわからぬ胸騒ぎが、このあと理解するまでそう時間はかからなかった。

「ごちそう様・・・」
「はいって・・・、どうしたのヴァーシュ? そんなにご飯残して・・・」
「食欲がわかないんです・・・」
 夕食時、ヴァーシュは夕ご飯を残して自室へと帰る。

 パタン

(なんだろこの気持ち・・・? 私・・・、どうかしちゃったのかな?)
 答えの出ない気持ちを抱き、ヴァーシュは鎧を脱いで部屋着になり、バサっとベッドに寝転んだ。
 それまでなんとも思わなかったリューディーとの行動。だが、改めて考えると2年もずっとリューディーの部隊の一員として扱われていたのが、急に師団長へと推薦すると言われ、何かが狂い始めた。
 師団長への推薦の件は過去に何度か言われている。そのときは冗談だと聞き流してきたが、今回は少し本気な気がした。
 ヴァーシュは、自信に芽生えた不思議で不安な思いを理解できぬまま、そのまま眠りにつくのであった。

-翌日-

「今日は警護任務だ。いつもどおり二人での行動になる」
「はい・・・」
 朝から悶々とした気持ちのままヴァーシュはリューディーの後を追った。
 今日の任務はロイヤルガード西方方面部隊長の護衛である。最近になってグラストヘイムで冒険者が倒され続けるという問題が発生して、騎士団か聖騎士団のどちらかを調査に送るということになり、その部隊長を警護するという特別な任務を与えられたのだ。
「どうしたヴァーシュ、顔色が悪いぞ」
「大丈夫です! なんでもありません」
「そうか・・・? ならいいんだが・・・」
 ゲフェンからグリフォンを飛ばしてグラストヘイムへ向かう道中、リューディーはヴァーシュの様子が変だと感じたが、任務中であるため先を急いだ。
 グラストヘイムにたどり着くと部隊長は城と呼ばれる建物の前で勢ぞろいしている考古学者たちと話を始めていた。
 そのあいだリューディーとヴァーシュは、部隊長に言われるがまま周囲の状況を確認するため別行動になった。
(どうしたんだろ? 私・・・)
 心なくグラストヘイム内を歩くヴァーシュ。そんな心境でさまよっていたためか、ヴァーシュは背後から迫る気配を感じられずにいた。
 そしてそのまま迫りくるものの気配が放つ殺気に気付くのが遅れた。
(え?! 深淵の騎士?)
 近づきすぎて反撃の態勢も後退することもできないまま、ヴァーシュは深淵の騎士が放つブランディッシュスピアを間近で受けてしまった。
(殺される!)
 グリフォンから離され、武器も落としてしまったヴァーシュに迫る深淵の騎士。
 だが次の瞬間ヴァーシュの目の前に空から飛びこむ一つの影が光を放った。
「グランドクロス!」
 その影はリューディーだった。
 リューディーの放つグランドクロスで深淵の騎士は倒されたが、同時にリューディーも、深淵の騎士の刃を受けただけではなく、高所から飛び降りたことによる足が骨折してしまった。
「迂闊だぞ、ヴァーシュ・・・」
「りゅーさん! りゅーさん!!」
「このバカたれが・・・」

 結局のところ、調査に出ていた部隊長も収穫のないまま、リューディー達はプロンテラに帰るのであった。
 そのまま休暇を与えられた二人、リューディーは自己ヒールで回復したからいいものの、ヴァーシュは自宅でベッドに顔をうずめて泣いていた。
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(嫌われた・・・、絶対嫌われた・・・!)
 ヴァーシュは初めて抱いた気持ちが何だったのかを、今はっきりと理解した。
(バカだ・・・、私はバカだ・・・。師団長のことだって、部隊編成のことだって・・・、離れたくなかっただけだったんだ)
 シーツにどんどん染みていく涙。ヴァーシュは深く顔をうずめ、嗚咽が響かないよう、音をたてぬように泣いた。
(りゅーさんのことが・・・、好きだったんだ・・・!)
 ヴァーシュは今、はっきりとリューディーに恋心を抱いてたことに気付いた。
 同時にそれを理解すると、涙があふれて止まらなかった。
(もう合わす顔がないよぉ・・・。どんな顔して合えばいいのさ?)
 ヴァーシュはもう何が何だか分からなくなってきた。自分のせいで傷ついたリューディーに謝ることもできず帰ってきてしまった。それがよけいにヴァーシュの心を傷つけていく。


 その頃男所帯では・・・。

「セラフィー・・・、自分のせいで女の子泣かせたことはあるか?」
「なんだ改まって?」
 リューディーは、工房で鋼鉄を作っているセラフィーに問いかけた。
「俺に惚れてる女の子なんていないさ」
「そうか・・・。私は、泣かせてしまった・・・」
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「深く考えすぎじゃね?」
「そうだろうか? 私にはわからない・・・」
「とりあえず謹慎中なんだろ? だったら行動すればいいんじゃね。お互い話し合わないと分かり合えるもんもわからんだろ?」
「今は・・・、そんな気にはなれない」
 振り向き自分の部屋に戻るリューディー。
「ふーん、俺にはお似合いのカップルだと思うんだけどなぁ」
 誰もいない工房で独り言ちるセラフィーだった。

 その夜

 コンコン・・・

「リューディー、少しいいか?」
「旦那か? 開いてるよ」

 ギィ・・・

「ヴァーシュを泣かせたそうだな?」
「セラフィーが言ったのか? すまない、旦那に迷惑かけそうだわ」
「事実ならしかたない。ヴァーシュももう年頃の女の子だ。今更おやじ面して何言えばいいのかもわからない」
「面目次第もないよ」
 白鳥は椅子に座ると、リューディーの顔をじっと見て何か考え事を始めた。
 リューディーにしてみれば気まずさ満点なのだが、自分がしたことが間違ってるとか、どうすればよかったのかさえ分からなかった。
「お前なら、娘を任せてもいいと思ったんだがな・・・」
「私がか? 冗談はよしてくれ。こんな不器用、誰が好きになる?」
「そう言うな。これでも既婚者だ。そんな経験何度もしてるよ」
「旦那ぁ?」
「そんな経験できるのはまだ若いってことだ。それで率直に聞く」
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「お前は、私の娘をどうしたいんだ?」
「・・・」
 黙り込むリューディーの言葉を待つように、白鳥は黙ってリューディーの目を見た。
 リューディーはため息一つこぼして「はぁ・・・」と息を吐いた。
「旦那だから正直に言う。私はヴァーシュを女として見ている。悪く取らんでくれ、ただ、優しいし綺麗だし、そのままだと任務に支障をきたしかねん。でも、それが彼女のためになるかがわからない」
「ふむ・・・。だから距離を置こうとして師団長に推薦してやるって言いたいのか?」
「旦那、どこでそれを?」
「たまたま仕事でプロンテラ内の警護をしていてな。悪いと思ったが立ち聞きしてしまった」
「はぁ・・・、まぁ、その・・・、なんだ・・・。これ以上コンビで任務を与えられたら本当に惚れそうになる。そうなったら遅い気がして、ヴァーシュを遠ざけようとしたのは事実だ」
「なるほどな。ヴァーシュが惚れるのがよくわかる。これでも父親だからな、娘の顔色みれば想像がつく」
「すいません」
「謝るな。私も、お前さんだったら娘を嫁に出してもいいと思ってる。それだけ付き合いが長いってこともあるがな」
 白鳥は微笑むと立ち上がりドアの前に立った。
「娘を幸せにしてやってくれ。ここから先はお前さん次第だ」
 そういって白鳥は出ていくのであった。
(私なんかにヴァーシュを幸せにしてやれるのか?)
 リューディーは窓を開けて暮れ行く空を見つめるのだった。

 翌朝リューディーはプロンテラ南の平原に呼び出された。
「ヴァーシュ、改まってなんだ?」
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「私、りゅーさんが好きなんです!」
 突然の告白。ヴァーシュは今にも泣きそうな顔をしている。
「嫌われたかもしれない。それでも私の気持ちを伝えずにはいられなかった」
 ヴァーシュの言葉にリューディーは少し戸惑った。まさまヴァーシュも同じ気持ちだったなんて想像もつかなかったからだ。
「本気・・・なんだな?」
「はい、これで振られたら私も決心つきます」
 ヴァーシュが本気で自分の事を好きだと言ったのが鈍感なリューディーでもわかる。
 それだけ自分がヴァーシュを追い込んでいたことが悔やまれる。
「私でいいんだな?」
「はい!」
 涙目になって答えるヴァーシュに、リューディーも男として腹をくくった。
「まぁ、その・・・、なんだ・・・。私からもお願いするよ。不器用なところもあるが、よろしく頼む」
 リューディーの不器用な返答。それでもヴァーシュにはこの上ない言葉だった。
 グリフォンから飛び降り抱き着くヴァーシュ。
 そして二人は、人目もはばからず口づけをかわすのであった。

「よかったねヴァーシュ・・・」
「そうだねぇ」
 誰もいないはずのプロンテラ南の木陰で、一部始終を眺める二人の女性。クリシュナとルシアだった。
 二人はヴァーシュの様子が変だったのに気づいて話を聞き、こうなる算段を立ててヴァーシュに進言したのだ。
「帰るよ。二人の邪魔はできない」
 そう言ってクリシュナはワープポータルを出し女所帯へと帰っていくのであった。

  by lywdee | 2017-10-03 13:02 | Eternal Mirage | Comments(0)

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